東京では、長く続いた曇り空のあと、ようやく青空に恵まれました。
10月中旬に入り、日中は汗ばむ陽気が残る一方、朝晩はひんやり。
薄手の上着を一枚、手に取りたくなる時期です。
朝の駅へ向かう道。
半袖の人もいれば、長袖のシャツにジャケットを重ねた人が増えてきました。
腕まくりをして歩く人の隣には、首元まで襟を閉じた人。
同じ朝の街に、夏と秋が一緒に歩いているようです。
昼間の光に残っていた暖かさは、夕暮れとともに薄れ、朝の空気には冷たさが混じる。
その繰り返しの中で、秋は深まっていきます。
10月の初旬には、まだ夏の記憶が街に残っています。
日差しは強く、歩けば汗ばむこともある。
けれど朝の空気には、かすかな冷たさ。
半袖で出かけるか、長袖にするか、玄関先で迷う朝が増えてきました。
街のショーウインドーには、いつの間にか茶色やオレンジ色。
ハロウィーンを意識した飾り付けが始まり、黒いコウモリや小さなカボチャ、おばけの姿が、店先や商業施設の入口に並びます。
外の空気にはまだ夏の名残。
それなのに、街のディスプレイは、ひと足先に秋の装いです。
コンビニの棚にも、季節の変化。
冷たい飲み物の隣に、温かいコーヒーやスープ。
焼きいも、栗、かぼちゃを使った菓子も目につくようになりました。
おにぎりや弁当の棚には、きのこや鮭など、秋を思わせる具材が並びます。
ドアが開くたび、店内から流れてくる暖かな空気。
朝の冷えた体には、ちょっとしたご褒美です。
ところで、一般的に、何度くらいから人は寒さを感じるのでしょうか。
年齢や体質、服装、体調による個人差はありますが、目安は15度前後。
ここから「肌寒い」と感じる人が多くなります。
長袖に薄手の上着を重ねたくなる温度。
歩いていればちょうどよくても、立ち止まると、少し冷たい。
さらに10度前後になると、「寒い」という感覚がはっきりしてきます。
コートを意識する気温。
朝晩や風のある場所では、数字以上の冷え込みです。
15度は秋の涼しさ。10度を下回れば、冬の入口。
大まかな目安として、そう考えることができます。
ただ、人の体が受け取るのは、気温の数字だけではありません。
湿度、風、日差し、周囲の建物や地面からの照り返し、そして衣服。
さまざまな条件が、暖かさや寒さを左右します。
日なたを歩けば少し汗ばむのに、ビルの谷間へ入った途端、冷たい風に肩をすぼめる。
秋には、そんな場面がよくあります。
10月中旬。
日中は薄着でも過ごせる一方、朝晩には一枚、羽織るものが欲しくなる頃です。
太陽が高い時間には秋の暖かさ。
太陽が傾けば、空気はすぐに冷たさを取り戻す。
一日の中で、季節が行き来しているような感覚です。
気温がそれほど低くなくても、風があれば寒く感じます。
一般には、風速が1メートル毎秒強まると、体感温度はおよそ1度下がると言われています。
これは、分かりやすくした目安にすぎません。
実際の体感は、日差しや湿度、歩いているか、立ち止まっているかによっても変わります。
それでも秋の朝晩には、「気温から風速の数字を引いてみる」と、寒さを想像しやすくなります。
温度計の数字は同じでも、北寄りの風が吹けば、秋の空気は冬へ近づく。
頬に当たる風が、その変化を伝えてくれます。
10月下旬になると、昼間の最高気温が20度を下回る日も増えてきます。
昼間はまだ穏やかでも、朝の冷え込みは確実に強まる。
薄手のカーディガンやジャケットだけでは心もとない日もありますが、冬のコートを着るほどではありません。
秋の服装に求められるのは、厚さよりも、脱ぎ着のしやすさ。
暑くなれば脱ぎ、冷えれば羽織る。その身軽さです。
街路樹の葉も、少しずつ色を変えていきます。
まだ緑の葉が多い中に、黄色くなった葉が一枚、二枚。
風が吹けば、歩道に落ち、靴先でかすかな音を立てます。
東京の秋は、山のように一斉に色づくのではありません。
街のあちこちに小さな変化を置きながら、ゆっくり深まっていきます。
10月31日を過ぎると、街は驚くほど早く表情を変えます。
ハロウィーンの飾りが片付けられ、今度はクリスマスのイルミネーション。
赤と緑の装飾も登場します。気温がゆっくり下がる一方で、店先の季節は、次から次へと先へ進む。街の秋は、思いのほか短いものです。
10月から11月の東京は、夏と冬のあいだにある、短くも豊かな季節。
半袖の人の隣に、薄手のコートを着た人。
店先ではカボチャのおばけが笑い、コンビニには栗やさつまいもの甘い菓子が並ぶ。
街路樹の緑は、やがて黄色や赤へ変わり、夕暮れの風は少しずつ冷たくなっていきます。
青空の下で汗ばむ日もあれば、朝の道で手をポケットに入れたくなる日もある。
その揺らぎこそが、秋という季節の表情です。
季節は、カレンダーのページをめくるように変わるのではありません。
街を歩く人の服装に現れ、店先の飾りに現れ、コンビニの棚に現れ、木々の葉の色に現れる。
そして最後には、夕暮れの風となって、私たちの頬に触れるのです。
秋は、そうして少しずつ深まっていきます。
夏の名残を抱えたまま、15度の肌寒さを通り抜け、10度前後の冷たさへ向かう。
その先に、冬の入口が静かに待っています。
今日の早口言葉です。ゆっくり3回、言ってみてください。
「10月の朝、半袖の人の隣で、長袖の人が、長い坂道を歩く」




