10月も終わりに近づくと、関東の空気には、はっきりとした秋の気配が宿ります。
朝のひんやりとした空気、短くなった日差し、そして街のあちこちに見え始める赤や黄色。
秋は、1年のうちで最も「移ろい」を実感できる季節です。
栃木県日光市の中禅寺湖畔では、いま紅葉が見ごろを迎えています。
千手ヶ浜では10月半ばごろから、カエデの仲間やミズナラが赤や黄色に染まり、湖面に映る色鮮やかな木々が、訪れる人々の目を楽しませています。
湖畔の遊歩道をゆっくり歩きながら、紅葉を眺め、写真を撮る。何気ないひとこまですが、そこには秋ならではの贅沢があります。
千手ヶ浜の紅葉は10月いっぱい楽しめるということですから、まだ間に合う方も多いはずです。
同じ栃木県那須塩原市のハンターマウンテン塩原でも、秋の景色が広がっています。
10月半ばごろから山頂付近で紅葉が始まり、ゲレンデの中腹のカラマツの林も、少しずつ黄色く色づいてきました。
標高1600メートルを超える山頂近くまでゴンドラで登れば、窓の外を流れるように色づいた山並みを、間近に眺めることができます。
冬には白いゲレンデになる場所が、いまは黄金色と深い緑のコントラストを見せています。
スキー場の紅葉は、11月上旬まで楽しめる見込みだということです。
北へ目を向ければ、北海道根室市の明治公園では、街路樹のナナカマドが赤い実をつけています。
直径5ミリほどの小さな実が、昭和初期に建てられた赤レンガ造りのサイロを背景に、鮮やかに映えます。
およそ240本のナナカマドが植えられた公園は、9月下旬から色づき始め、11月下旬までその姿を楽しめるということです。
実の赤は、紅葉とは違う、静かで力強い秋の色です。
しかし、この美しい季節には、忘れてはならない現実もあります。
クマの出没が、各地で相次いでいます。
神奈川県秦野市では、今月20日に丹沢山地の奥地へ放されたツキノワグマが、再び市内で確認されました。
23日の夜、観光客が多く訪れる弘法山公園に近い善波峠に設置されたセンサーカメラが、クマ1頭を捉えました。
追跡機器の反応から、先に放獣された個体と同じであることが確認されたといいます。
市は来園者の安全を確保するため、24日から公園に通じるルートを再び閉鎖し、広報車などで注意を呼びかけています。
クマは保護対象であるため、捕獲後は山へ放たれます。
それは、当然の対応でしょう。しかし、1度山へ帰っても、再び人里へ現れる。
この事実は、人とクマの生活圏が、これまで以上に近づいていることを示しています。
秋はクマにとって、冬眠に向けた食糧を求める大切な季節でもあります。ドングリや果実の実りが少なければ、山を下りてきます。
私たちが「紅葉を見に行く」山は、クマにとっては「暮らしの場」でもあります。
だからこそ、秋の山歩きには、これまで以上の心構えが必要です。
ラジオや笛など、音の出るものを持ち、複数人で行動し、食べ物のにおいを残さないこと。
早朝や夕暮れ、見通しの悪い場所は、特に注意したいものです。万が一クマに出会ったときは、背を向けて走らず、落ち着いて距離を取ってください。
備えは、特別なことではなく、いまの季節を楽しむための基本的なマナーになりつつあります。
紅葉は、木々が冬を迎えるための準備の姿でもあります。
葉の色が変わるのは、命の終わりではなく、次の季節へつなぐための営みです。
私たちもまた、美しい秋を楽しみながら、山の生き物たちの暮らしへの思いやりを忘れずにいたいものです。
色づく山並みを眺め、赤い実に目を留め、夜の庭園に足を止める。
秋の彩りは、私たちに季節の美しさを教えてくれます。
その一方で、山からの便りとして届くクマの情報は、自然とともに生きるということの重さを、思い出させてくれます。
美しさと注意。楽しみと備え。
この秋は、その両方を心に携えて、紅葉の季節を歩んでいきたいものです。
今日の早口言葉 (ゆっくり3回)
赤い紅葉、黒い熊、黄色い看板、眺め気をつけ山歩き




