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2019.12.12

外食産業の成長のポイントは「共感」にあり『浜松町Innovation Culture Cafe』

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外食産業

誰もが一度は利用したことがある飲食店。日本での売上のピークは1997年の29.1兆円でした。それ以降は2011年まで減少。しかし、近年徐々に回復し現在は約24兆円の売上となっています。


そもそも外食産業とは?

一般社団法人日本フードサービス協会によると、「1960年以降、日本の高度経済成長とともに伸長した」とされています。69年には外食レストランのチェーンが誕生し、本格的な産業として発展していきました。


外食産業元年と言われている70年には、大阪万博のパビリオンに「ケンタッキーフライドチキン」が出店し、同年にはファミリーレストランの「すかいらーく」が登場。その後、「マクドナルド」や「ミスタードーナッツ」などのファストフードが誕生し、日本の外食産業は大きく動き出しました。


外食産業が抱える問題とは?

外食産業全体の抱える問題として、従業員やアルバイトスタッフなどの不足があります。求人をかけても応募がなかったり、採用しても長続きしないなど、課題が多く山積しています。

2018年4月の帝国データバンクの調査によると、正社員不足は63.6%、非正社員不足は77.3%だとされています。


人手不足になると、従業員一人に対する仕事量が増え、勤務が長時間化するなど負担が増加。その結果、従業員が辞めてしまい、さらに人手不足が深刻化します。また、サービスの質も低下し、顧客満足度の低下や従業員のやる気の低下によって最終的には売上へ影響が出ます。人手不足になると、こういった負のスパイラルにおちいってしまうこともあるのです。


こういった側面もあり、外食産業の売上が低迷した2011年以前。現在は回復傾向にあるものの、ピーク時の数値までは回復していません。また、最近では人気レストランの料理を配達してもらうUber Eatsなどが運用されており、ニーズや形態の変化もみられます。


そこで、外食産業の売上を回復させるための方法として、


・新規事業を立ち上げる

・既存店に投資を行い、質の向上を図る


というふたつが、多くの人の頭に浮かぶのではないでしょうか。



浜松町Innovation Culture Cafe

11月26日に放送されたラジオ番組『浜松町Innovation Culture Cafe』では、売上の回復に成功したロイヤルホールディングス株式会社代表取締役会長・菊地唯夫さんと雑誌「プレジデント」編集長・鈴木勝彦さんをお招きし、外食産業についてお話ししてもらいました。


ロイヤルホストや天丼てんや、リッチモンドホテルなどを展開する菊地会長と、最新のマネジメント手法やホットな経済情報などを掲載しているプレジデントの鈴木編集長の二人が描く、外食産業成長へのヒントとは? 外食産業が抱える課題、人材不足の解決策とは?


継続的な成長は既存店にあり

午後8時台のゲストコーナーでは菊地会長と鈴木編集長をお迎えし、「今後の外食産業で成長するには?」をテーマにお話ししました。


まずは、菊地会長が社長に就任し、取り組んだことについて。


入山 なぜ新規事業をやるのではなく、既存店に投資をしようと思ったのですか?

菊地 2010年にロイヤルホストの社長に就任したんですが、それ以前から十数年間ずっと売上が前年割れしていました。「既存店にお金をかけるくらいなら、新しいことにチャレンジしよう」とやっても負のスパイラルから脱却できない状態が続いていたんです。ロイヤルホストはグループにとって、ひとつのブランド。「ここを立て直さないといけないのでは」と思い、新規事業はストップして今来てくれているお客様の満足度をあげようと考えたことが、既存店への再投資という流れになりました。

入山 自分は経営者じゃないですが、普通だと苦しいときこそ新しいことをやるという考えになりそうなのに、あえてそれを絶ったんですね。

菊地 はい。悩みましたが、ロイヤルホストがいい状態になることが従業員のやる気にもなり、お客様の評価にもつながると思いました。結果が出てきたので、より投資を増やしていきました。

入山 その結果、2012年からはロイヤルホスト850店舗のうち半分以上が前年を上回ってきましたね。

菊地 そうですね。たとえば、既存店の下がり方が98%だとしても、10年経つと20%落ちたことになる。ゆっくり下がっていくので、つい3人でやっていたことを2人でやったりなど小手先の対処になってしまうんです。

入山 ちょっとずつの低迷だと危機だと思わないから、大きいことができないのですね。少し傾いている時こそ、大胆な変化が必要なのかもしれないですね。


そこから話は菊地会長の経歴に移り、金融の世界から外食産業の世界に来た経緯について。


従業員全員対象の経営セミナー

入山 菊地さんは大学卒業後、金融の世界へ。現在のあおぞら銀行で勤務し、その後ドイツ証券で働いていたんですね。

菊地 金融業界に十数年いて、投資銀行部にいました。でも、ずっと実業の世界に行きたい思いがあり、あるときロイヤルホストなどを手掛けるロイヤルグループの創業者の方が一線から退くことになって、経営陣から「普通に集団で何かを決めて取り組む会社にしたい。その手伝いをしてほしい」と頼まれました。今までにないチャレンジで、魅力的だったのでやってみたいと思いました。

入山 悩まなかったんですね。ドイツ証券では花形の仕事で、外食産業にいくとこれまでの仕事とギャップを感じてしまうと思うんです。エリート中のエリートだったのに、迷わずに決断したのは本当にすごい。

菊地 現場の手ざわり感に飢えていた、その思いがずっとあったんだと思います。

鈴木 以前、従業員の方も参加する会長の勉強会に参加したことがあります。テーマは財務諸表の読み方だったんですが、難しい話なのに楽しくて本当わかりやすかった。

入山 アルバイトの方もふくめ、グループの全員が参加するってことですか?

菊地 そうですね。現場と経営陣の距離感がどうしても離れていたんです。そこで、距離を縮められないかと決算説明会を従業員向けに行いました。全国を回って、これまでの実績と今後どうするかも話していき、月3回くらい勉強会を開催。資料も全部作ったりしています。

入山 今まで多くの経営者に会ってきましたが、財務諸表の読み方を教える人は初めて出会いました。しかもバイトの人にまでってすごい。

砂山 距離の縮め方って違う発想になりそうだけど、ど真ん中をわかりやすく説明しようとするなんて。

菊地 開催して、一番多かった声が「決算説明会の説明がわかるようになった」でした。現場の人に理解してもらえて、お客様への良いサービス、良いビジネスにつながれば良いですね。

入山 経営者ってビジョンを語るけど、抽象的で響かないことが多いみたいなんです。菊池さんは数字で伝え、わかりやすく説明してるんですね。


続いて、話題は外食産業のなかでも苦しい所と上向いている所の違いについてへ。


菊地 個室がいいとか、席の間隔は狭くない方がいいなどニーズは多様化してきています。70年代ごろは画一化されていた。最近は参入障壁が低く、類似業態が多い。新しいものを作る力はあっても、流行りなどで持続的な成長がない 。

入山 既存店を続けられるようにしたから成長してるんだと思います。既存の成長に必要なものとは何ですか。

菊地 人・モノ・金が大事。経営資源をどこに投資するか明確にすることが求められます。多くは、人員削減やエースを新規事業にまわしたりなどの策を講じることをしがち。でも、大切なことは既存をどのように位置付けるか決め、エースの人を既存事業にきちんと置くことだと思いますよ。

入山 部下の反応ってどうだったんですか?

菊地 納得してない人もいたと思います。だからこそ、説明会をやるんです。経営者としての説明責任を果たさねばいけない。それが決算説明会や経営塾などになっています。

鈴木 既存はニーズから離れてしまい、次は低価格帯での競争になってしまう気がします。抜け出すための方法は何ですか?

菊地 既存を昔のまま維持するだけでは企業の成長にはなりません。既存事業がダメだから新しいことをやるというのは長続きしない。既存事業をしっかりさせたうえで、新しいことをやることが継続的な成長になる。順番の違いですね。

入山 なるほど。ということは、既存事業であるロイヤルホストやてんやなどのなかで新しいことをやっているということですね?

菊地 そうですね。時代に合わせて、4人がけだった椅子を6人がけにしたり、照明を明るくしたり、2人がけで可動式にしたり、マイナーチェンジはしています。でも、高齢化が進むからと言って和食をやろうとなると、ロイヤルホストには合っていない。それは新しい取り組みとして始めることになると思います。


話題は、内食や中食へ。


入山 そういえば、時代の変化とともに、最近では中食や内食が増えてきていますよね?

菊地 中食も内食も質があがってきています。外食にどういった価値を出すのかがひとつの論点です。ただ、Uber Eatsなどデリバリーもある。これは質の高いものを提供できる新たな方法のひとつ。ピンチでもありますが、チャンスでもあると思います。

鈴木 中食や内食もそうですが、現代はお一人様志向が強い。雑誌でも孤独の特集に人気がある。孤独のマーケットがキーワードになってくるのかもしれません。


後半では、リスナーから菊地会長への質問がありました。


リスナー 新しいニーズに合わせるのはわかりますが、現場の人の意見はどうやって見極めているんですか?

菊地 一人で予告なく店舗をまわり、現場の真実を自分の目で見ていました。現場の声をすぐ採用するのは違う場合もある。だから、その店舗だけなのか、どこでも起こることなのか検証することを大切にしてます。


最後は、AIやロボットなどテクノロジーについての話題へ。


現場環境のストレスフリー

入山 今は人手不足が問題になっていますが、AIなどのテクノロジーに対してはどう考えていますか?

菊地 外食産業は人が関わることで価値、つまり"共感"が生まれます。人手不足は大切な共感の価値が揺らいでしまう。ただ、人手不足だからといって共感を削ると産業の本質が無くなってしまう。なので、それ以外の部分をテクノロジーが代替できるかどうかがポイントになってくると思います。お皿洗いや掃除はお客様が共感する部分ではないですよね? テクノロジーの議論をするとよく人の仕事が無くなると言われますが、外食産業はテクノロジーのサポートによってお客様へのおもてなしに時間を使える。テクノロジーをうまく使うことができれば、外食産業の将来は明るいと思います。

入山 なるほど! 実は以前に聞いた話があるんです。労働にはみっつあって、肉体労働・頭脳労働があって、これからは感情労働が必要になってくるというものです。

菊地 感情労働は自分の感情をうまくコントロールして、お客様に対応しなければいけないんです。接客やドクター、教師などもその側面が強い。これから肉体労働がロボットに代わり、頭脳労働がAIに代わっていくと、感情労働が本質になってくると思うんです。ただ、ひとつ弱点があって、感情労働はストレスがでてきてしまう。だから、報告事項や棚おろし、皿洗い、掃除などをテクノロジーに代替してもらって、従業員はお客様との感情労働へ集中できるようになれば。

入山 現場の人が笑顔になって、お客様もハッピーになり、その結果また現場もハッピーになって。これが外食産業のポイントなのかもしれないですね。

菊地 そうですね。働き手がもっと余裕を持ってお客様と接するために、いかにテクノロジーを活用するかが問われていると思います。


入山さんは「外食産業の成長において『共感』がポイントになり、よりストレスフリーな環境を生み出すことが質の向上につながるのではないか」と感じたようでした。



番組概要

■タイトル

『みらいブンカvillage 浜松町Innovation Culture Cafe』

■放送日時

毎週火曜 午後7時00分~9時00分

■出演者

入山章栄

砂山圭大郎アナウンサー

田ケ原恵美

■メールアドレス

innovation@joqr.net

■番組サイト

http://www.joqr.co.jp/mbv/

■Podcast

http://www.joqr.co.jp/hamacafe_pod/


毎週火曜日、午後7時から生放送でお送りしている『みらいブンカ village 浜松町Innovation Culture Cafe』。パーソナリティは早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さん、砂山圭大郎アナウンサー。アシスタントはVoicy広報の田ケ原恵美さんが担当します。

『みらいブンカvillage浜松町Innovation Culture Cafe』はさまざまなジャンルのクリエーターや専門家・起業家たちが社会問題や未来予想図などをテーマに話す番組です。自身の経験や考え、意見をぶつけて、問題解決や未来へのヒントを探ります。

毎週火曜、午後7時から絶賛生放送中!!

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