戦後70年特別企画 アーサー・ビナード『探しています』

毎週土曜日 早朝5:00〜5:10
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長崎原爆を探しました

文化放送のホームページでお知らせしていた「ウェンズデープレミアム アーサー・ビナード 長崎原爆を探して」。今日(9日)放送させて頂きましたのでご報告いたします。今回は特別編という事でアーサーさんの眼差しで70年前の長崎原爆を追いかけました。

ウラン型の広島原爆と違いプルトニウム型の長崎原爆は、すでに7月20日から練習投下用のパンプキン爆弾という名の模擬爆弾が全国に投下され多くの死者を出していました。終戦翌年のマーシャル諸島の原爆、さらにその後に至るまで地球を汚染していったのは自然界にあるウランではなく人工的に作られたプルトニウム型原爆です。そんなプルトニウム爆弾に焦点をあてた今回の番組は、アーサーさんにとっても新たな発見がありました。


日本では誰も知らなかったその謎を解き明かしたのは、愛知県春日井市に住む元中学教師、金子力さんたちのグループです。敗戦前日(戦争終結はすでに決定していた)の8月14日に、なぜ春日井に爆弾を落とされなければならなかったのか?その素朴な疑問から始まった調査は、山口県の高専教授、工藤洋三さんらの力強い協力を得てアメリカの公文書館や国会図書館の資料探訪を続けることとなりました。その結果わかった事実が、空襲を行う部隊とは全く別の「原爆を投下する部隊」が存在し、彼らが8月6日と9日に原爆を投下するため、そして投下した後も模擬爆弾という5トン爆弾を落とし続けていたという事でした。地元の空襲を調べた結果がまさか広島や長崎に行き着くとは思ってもいなかったと金子さんは語っていました。

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金子さんとアーサーさん。アーサーさんが手に持つ金子さんと工藤さん編著の「原爆投下部隊」は凄い資料本です。

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地元の慰霊碑に手を合わせたアーサーさん。

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金子さんたちが収集した貴重な資料の数々。

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そしてこれが、パンプキン爆弾の破片です。空襲では通常1トン爆弾でした。しかしパンプキンは5トン爆弾です。それはつまり原爆と同じなのです。違いは中に入っているものがプルトニウムか通常爆薬かです。


そして12日(土)からいよいよ公開となる山田洋次監督の新作映画「母と暮せば」に主演している俳優の吉永小百合さんに出演して頂きました。吉永さんは長崎原爆で息子を亡くした母親をとても切なく演じています。そして吉永さんは常に原爆被爆者に思いを寄せてきた方でもあります。広島、長崎、沖縄、そして福島と続ける吉永さんの朗読の旅「第二楽章」。その英訳を担当しているのが何とアーサーさん。吉永さんとは3月以来の再会でした。
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アーサーさん自身が悩んでいるテーマである「戦後生まれの自分が広島や長崎の人たちの思いを語り継ぐためにはどうすれば良いのか?」 そのヒントとして吉永さんは「毎回初めてのつもりで淡々と読む事でしょうか」とアーサーさんに優しく語ってくれました。「いくら大きい声で話しても足りないくらい大きな悲しみだから」と。静かで優しい口調に強く熱い思いを秘めた吉永さんでした。


なお、今回の「探しています」特別編「長崎原爆を探して」。1月10日に長崎放送でも放送して頂く事になりました。長崎の方はもう少しお待ちください。そして長崎以外の方は誠に恐れ入りますがラジコプレミアムで1月10日にもう一度お楽しみ頂ければと思います。

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