過去の放送分
過去の放送分 過去の放送分 2007 12月15日 放送分
「ウナギの話」(1)
コーチャー/井田徹治(てつじ) さん(共同通信社科学部)
大村正樹&井田徹治
大村正樹
今日はちょっと冬じゃなくて夏に食べるもの――すいかとかあるんだけれど、“土用の丑の日”って知ってるでしょ? そう、ウナギ。今や夏だけじゃなく一年中日本の食卓に並んでいるものです。ウナギというと浜松町じゃなくて浜名湖。知ってる? ということで、ウナギに関する話をお伝えしたいと思います。今日のサイコーは、共同通信社科学部の井田徹治(いだてつじ)さんです。こんばんは。
こんばんは。
大村正樹
キッズのみんなはよく分からないかも知れないけれど、共同通信社というのは、こういったラジオやテレビや新聞、それから外国の新聞やテレビに日本の出来事を配信するのが主な仕事の会社だけど、そこに科学部があってウナギの専門家がいるってことなんだよね。
ハハハハ(笑)。まぁ、専門家と言えるかどうか分かりませんけども、ウナギの取材を長くしています。
大村正樹
ウナギの取材で給料もらえちゃう。
  さすがにそれだけだと給料もらえないですが(笑)。
大村正樹
そうですか。でも新聞を見ると生活面やスポーツ面、経済面とか、そういう専門知識を持った記者の方ということなんですね?
  そうですね。ウナギも環境問題のひとつと捉えているんです。温暖化とか最近いろいろ言われていますが、環境問題の取材を長くしている中で出会ったのがウナギだったという。
大村正樹
今日はラボに井田さんの『ウナギ−地球環境を語る魚』という著書があるんです。ウナギは今の地球環境を語っているんですか?
  そうです。ウナギは口を聞くわけではないですが、ウナギのことを調べると地球環境のことをこれほどよく語ってくれる魚はないんじゃないでしょうか。
大村正樹
そうですか。今お知らせの最中に井田さんに話を聞いてたんだけど、驚いたのは、僕は湖にいるのがウナギと思っていたの。そしたら、湖にいるわけじゃないんですって。生まれた所は海だって!
そうですね。海といってもそこら辺の海ではなくて、日本から何千キロも離れたグアム島の、しかもすごく深い何千メートルの海の底でウナギは生まれ、そこから日本までずーっと長い間旅してくるんですね。
大村正樹
じゃあウナギは南の海の深海魚ということですか?
  生まれる所に関しては深海魚と言ってもいいかも知れないけれど、それからだんだん上のほうに上がってきて、長い時間は川や湖で過ごすんです。それが最終的に浜名湖にやってくる。
うなぎ
 
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大村正樹
何で浜名湖なんですか?
  浜名湖だけじゃないです。浜名湖はたまたま養殖が盛んだったもので、ウナギと言うと浜名湖なんです。
大村正樹
じゃあ、ウナギがたまたま日本にやってくる。でも、それは昔からですよね? 昔から日本人は“土用の丑の日”と言われるぐらいにウナギを食してきたわけだから、南の海で生まれたウナギが日本を目指してやってきてくれてたというわけですね。
そういうことです。
大村正樹
何でですか?
  いやぁ、それは誰にも分からないですけれど。昔はあの辺で生まれて、あの辺で育ってたんじゃないかと思っているんです。ちょっと難しくなっちゃいますが、実は大陸移動説というのがありまして、地面は動いているんです。何億年も前のことですが。何億年も前は近くにいたんだけれど、陸地が離れてしまったもので、ここまでやって来なきゃならなくなったんじゃないかという説もあるぐらいです。
大村正樹
ウナギの本能で、日本の沿岸は離れちゃったけれどずっと昔から終着地点としてあったということなんですね?
  それもウナギに聞いてみた人がいないので分からないですけれど、そういう説を唱えている人がいるんです。
大村正樹
グアムの海で生まれたウナギが日本にやってくる。ウナギは卵から産まれるんですよね? ウナギは卵から産まれて、どの段階で日本にやってくるんですか?
最初は1ミリぐらいの小さい卵ですけれどだんだん大きくなって、日本の沿岸にやってくる時はもう3センチから5センチぐらいの透明なウナギの格好をした魚になってやってくる。
大村正樹
3センチから5センチの段階で日本まで来るんですか? だってウナギは結局30センチから50センチあるわけですよね? じゃあ、大人になった時の10分の1の大きさなのに、もう日本に来てるんですか?
そうなんです。2000キロとか3000キロを泳いでいるわけじゃなく海の流れに乗ってやってくる。
大村正樹
いわゆる海流というヤツ。
  自分で泳げるわけではないですけれど、海の流れに流されるようにしてやってくる。日本のそばまで来るともうちょっと大きくなっているんで、その頃には自分の力で少し泳げるようになっていて、川のほうまでやってくる。
大村正樹
『ファインディング・ニモ』と同じですね。
  そうですね。大方はそういう暮らしをしている。
大村正樹
昔からの海流が、大陸がくっついていた頃から同じ海流で日本の沿岸が終着地点で、それが変わっても海流に乗って日本の沿岸に来るんですね。その海流があるから日本にウナギが来てくれる。
海流がないと、海の流れが変わったら、もしかしたら明日からウナギは日本に来なくなるかも知れない。
うなぎ
 
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大村正樹
はぁ。でも元々、生まれる所は海の魚なんですよね。何で湖を選ぶんですか?
  湖だと海よりも天敵が少なくて、隠れる場所やエサも多いので、大きくなるにはそのほうが都合がいいんじゃないかという。海で生まれてやってきて大きくなった所で川で長く過ごすのが、もしかしたらウナギにとって自然の中で生きていく戦略として有利だったのではないかと言われているんです。ウナギの本能というか、いつのまにかそういうのを身につけて生き残った魚だと言われています。
大村正樹
最終的に、最後まで海にいる魚たちはバカだということですか?
  いやぁ、海にいる魚は海にいる魚なりに、――ニモはさっきおっしゃったけれどイソギンチャクの中にうまく隠れて生活してますよね。そういうそれぞれの生き残りの戦略を長い歴史の中で生き物は身につけたんです。ウナギはどうもそうやって海に流れてきて、大きくなって川底に隠れて過ごして、戦略を身につけて何億年も生き残ってきた生き物なんです。
大村正樹
やっぱり何億年も前なんですか?
  そうですね。ウナギの化石とか出ないから分からないですけれど、日本の大陸が昔に熱帯の所まであった頃にいたんじゃないかと言われてます。長い歴史の中でそういう不思議な生態を身につけて生き残ってきた魚なんです。
大村正樹
その不思議な生態というのは、主に南の海の底で生まれたウナギが日本にやってくるという?解明されてない具体的な細かい話もあるんですか?
そうですね。一番分かってないのは、まだその自然界でウナギがどこで卵を産んでいるのか誰も分からない。
大村正樹
何でですか?
  誰も見たことがない。すごく深い海だし、どうもウナギの産卵場所はほんとにごく限られた場所でしか産んでいない。
大村正樹
えぇ〜! ウナギの卵は見たことがない!?
  実験室の中では産ませられるので見ることはできるんですが、ウナギが自然界の中で産んだ卵を見た人もいない。卵をお腹に抱えていざ産もうとしているお母さんを見たこともないし、そのそばにいるはずのお父さんを見た人も、まだこの世の中で一人もいない。
大村正樹
ちょっと待ってください。産卵場所がグアム島の周辺の海というのは、もう分かっているんですね? 世界でそこだけなんですか?
  日本にいるウナギは日本ウナギと言って――日本だけじゃなく台湾や中国にもいるんですが、どうも日本ウナギは、ほんとにその1点でしか産んでない。
大村正樹
素晴らしい! もうすぐ冬休みが始まるけれど、グアム島に行く人は、くれぐれもウナギの居場所を探してもぐり過ぎないようにね(笑)。分かりました。すごくいい話でしたね。井田さん、実はこの番組は結構短いんです。ぜひ来週もお越しいただいて、ウナギの話をさらに聞いていいですか?
分かりました。もしかしたら、今の子供がおじいさんになる頃にはウナギを食べられなくなってるかも知れないという話を来週したいと思います。
うなぎ
 
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