2014年11月21日
毒消しゃいらんかね (1953年)
宮城まり子のデビュー曲は、50年に三木鶏郎が大泉映画『なやまし五人男』に書いた主題歌「なやましブギ」(テイチクレコード)で、鶏郎とのデュエットで吹き込まれた。
その3年後、ビクターレコードから彼女のための新曲を頼まれた鶏郎は、自身のラジオ番組で放送することを条件に引き受けた。
浪曲もジャズも流行歌も何でも歌いこなす宮城の個性を生かす異色作を望まれて考え出したのが、薬売りの娘の歌、「毒消しゃいらんかね」だった。
しかしレコードは発売迄に時間がかかったため放送が先行し、同年2月1日NHK『ユーモア劇場』中の「冗談音楽」ヒットメロディーのコーナーで先に楠トシエが歌うことになった。
「♪毒消しゃいらんかね〜」の印象的な売り声に始まり、続く歯切れよい歌詞とメロディーの覚えやすさで、放送後間もなく全国に知れ渡って大ヒット。3月1日放送『ユーモア劇場』本篇では、「バラバラ・コメディー<毒消しゃいらんかね>」のタイトルで特集。歌詞の一部を世相風刺に替え、曲間にコントを織り交ぜた楽しいプログラムになった。
4月、宮城まり子が歌うレコードが発売されてこちらも大ヒット。
両者ともに愛嬌のある歌い回しで娘の心情を表現したが、都会的で上品な楠トシエと土着の娘の雰囲気が漂う宮城まり子の歌唱は好対照である。
「毒消しゃいらんかね」は、「僕は特急の機関士で」「田舎のバス」と共に"三木鶏郎5大ヒット曲"中の1曲で、いずれも冗談ヒットメロディーであった。そしてまたこれら3曲は、"宣伝の歌"とも言える。すなわち富山の薬、電車、バスのコマーシャルソングである。
(文中敬称略)
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