コマーシャル制作現場(1)
「小田急ピポーの電車」 (1962年)

三木鶏郎が手がけた鉄道のコマーシャルソングは全部で4曲ある。
「京阪特急」(58年)、「南海電車」(59年)、「近鉄特急」(61年)、そして「小田急ピポーの電車」(61年)。
鉄道のコマソンやご当地ソングを書くにあたって必ず現地に足を運び取材することにしていた鶏郎だが、旅好き、電車好きの鶏郎にとってこれは趣味を兼ねた楽しみな仕事であったに違いない。

「小田急ピポーの電車」は61年に発表され、ザ・ピーナッツが歌った。「♪小田急 小田急 ピポピポー」のリフレーンが軽快なメロディーとザ・ピーナッツの絶妙なハーモニーが耳に残る。
翌62年、本曲に併せたCF制作を任された鶏郎は、1月〜3月にかけてあらためてロケハンを組んで箱根に足を運んだ。
新宿から特急で箱根に着くと、歌詞の通り、バスやケーブルカーを利用し、遊覧船やロープウェイに乗った。そして周遊中の風景を同行カメラマンと共に撮影し、35ミリフィルム6本に残した。
この時鶏郎は、数年前に観たチェコの映画「悪魔の発明」(カレル・ゼルマン監督)を思い出した。バックに並べられる景色が全てイラストで描かれた不思議な世界で、これを真似してCFに取り込むことにした。そこで撮影写真をもとにアニメーションを作り、ロープウェイに乗る親子のみを実写にした。
結果、アニメーションと実写を織り交ぜたイメージ通りのCFに仕上がった。

本サイト上に掲載されている画像、文章等の無断使用、転載、二次利用はご遠慮ください。スタジオ1114.jpg

三木鶏郎ギャラリー