コマーシャル制作現場(2)
船橋ヘルスセンター <長生きチョンパ> (1962年)

船橋ヘルスセンターは、55年11月、千葉県船橋市の海岸を埋め立てた10余万坪の敷地にオープンした巨大総合レジャーランド。当時のパンフレットによれば、「日本一大きい、日本一面白い、日本一安い(入園料120円)、温泉と海と娯楽の大デパート」とある。
埋立て地から湧き出した温泉が目玉で、大浴場は「大ローマ風呂」をメインに大小20個の浴槽が楽しめる趣向を凝らした作りであった。また温泉の他に、演芸場、結婚式場、遊園地、遊覧飛行用の飛行場、人工スキー場、ボウリング場といった娯楽施設が、次から次へと増えていった。

オープンから7年後の62年、三木鶏郎は、CMソング制作の依頼を受けた。発注の橋渡しをしたのが山川浩二だった。山川は、電通のラジオ制作要員として、『トリローサンドイッチ』『仁丹一粒エチケット』の制作プロデューサー兼ディレクターを務めたが、おのずと冗談工房への出入りも頻繁となり、やがて電通の全国支社支局から殺到する三木鶏郎へのCMソングを受注する窓口となる。いわば、トリロー番であった。

船橋ヘルスセンター初のCMソング制作にあたり、三木鶏郎と山川浩二は現地視察へ。まずは空から見てみようとセスナ機に乗って船橋上空を飛んだ。それから大浴場を見た。温泉につかった後、客達は、400畳敷大広間でショーを観ていた。二階からその光景を眺めると一階にずらりと並んだおじいちゃんとおばあちゃんが目に映る。「これがCMのお客さんだ」と三木鶏郎はつぶやいた。そして帰りの車の中で「♪長生きしたけりゃ チョッとおいで チョチョンノパ チョチョンノパ」が口をついて出た。
すぐに歌とアレンジが完成し、レコーディングに臨んだ。歌うは、この年迄に200曲余を歌っていたコマソンの女王、楠トシエ。
1番:お風呂(大浴場)、2番:宴会場、3番:遊園地、4番:ゴルフ、プールにボウリング、5番:モーターボート、6番:飛行機、7番:劇場ステージ、と園内をめぐる。その間、サウンドは、スイングからラテン、マーチとリズムを変え、楠トシエが茶目っ気たっぷり、パンチの効いた歌声を聴かせてくれる。
歌に合わせて横山隆一の漫画キャラクターで制作されたCF映像がテレビで流れるようになると、一度聞いたら忘れられないフレーズ、「♪船橋ヘルスセンター〜」は大流行。入場者数も増えて、コマソン効果は絶大だった。
(文中敬称略)

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