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2021.01.25

知的財産を考える #2『浜松町Innovation Culture Cafe』


スマートフォンやタブレット端末の普及で、インターネットは私たちの生活により身近なものとなり、もはや無くてはならないものとなっています。様々なものがデジタル化され、私たちの生活は大きく変化しています。


多くの人がモバイル端末を持つ今の時代、いつでもどこでも撮りたいと思った時にスマートフォンで写真を撮ることができます。撮った写真をその場ですぐ見られるだけではなく、納得いくまで思いの通りに加工し、誰とでもすぐに共有可能です。SNSを通じて世界に発信することさえとても簡単にできます。今ではこれが当たり前となっていますが、かつてはインスタントカメラが主流であり、写真は特別な日に撮るものでした。せっかく撮ったのに想像していた出来と違ったり、変な顔をしてしまっていたり、今ほど写りの良い写真は少なかったかもしれません。ですがその時その瞬間をありのままに写した、現像した時に初めて自分だけが手にする1枚の写真の価値は、今より大きかったようにも思います。


このようにデジタル化によりできることは大きく増え利便性が格段に増す一方で、良くも悪くもそのモノ自体の価値も変化していくものです。つまり、目的を正確に理解し正しく扱わなければ、本来の価値まで損ないかねません。これでは今までつなげられなかったモノを繋げていくことで新たな価値を生み出していくというデジタル化の意味は無くなってしまいます。


デジタル化において問題になるのは肖像権とパブリシティ権が挙げられます。聞いたことがあるという人も多いと思いますが、単語だけ聞くと難しく感じてしまい正確に意味を理解していない人も多いと思います。ですが知らずに安易にSNSを利用した場合、街中で何気無く撮った写真をSNSにアップロードして無用なトラブルに巻き込まれたということが起こり得てしまうのです。


制度や権利とは何かを縛り付けるものではなく、何かをして良い、もしくはしなくて良いと堂々と主張できるものであり、己を守ってくれるものです。先入観で難しく考えず、まずはなぜこの制度や権利がつくられたのか想像してみると良いのではないでしょうか。そうすると自ずと本来の意味や目的が簡単に理解できるのかもしれません。そして正しい知識を得た自分自身の可能性も広がっていくのだと思います。


今回ゲストでご出演されている共同通信の内田朋子さんらが著した『すごいぞ働く知財 14歳からの知的財産入門』ですが、難しそうな言葉とされがちな知的財産にまつわるあれこれについてわかりやすく解説しています。無知は罪なり、知は空虚なり、英知持つもの英雄なりという言葉がありますが、今後を担う子どもたちも正しい知識をたくさん学び、素晴らしい成果を期待したいですね。


番組内では、映画『shall we ダンス?』主演の女優・草刈民代さんと、内田朋子さんにご参加いただき「知財のルールの考え方」から「知的財産の未来」について熱いトークが繰り広げられました。


知財のルールの考え方

草刈 脚本家であり監督である作家の権利は〝尊重〟されるべきですよね。それを仕事として生きているので、ここを守らなければいけません。そのためにも制度の根本的な理解が必要です。なんで?と常に考えることが大切なんです。


内田 ルールは厳しく締め付けるものと自分たちで勝手に決めつけるのではなく、なんでこれが存在し、なんで必要なのかを考え、根本を理解することが大切だと思います。


知的財産の未来

草刈 フランスのように一貫した考え方があると文化も守られアイデンティティが生まれていきます。今後知的財産に理解の浅い新興市場の国々と関わり、お互いを理解しようとしていくことで、日本人の知的財産に対する理解も深まるかもしれません。ただのルールとして捉えるのではなく、理解を深めることが重要です。日本人は面倒なことには触らないという部分がありますが、そうすると文化は衰退してしまうので、「なんで」を追求して踏み込んでいくことが大切だと思います。


内田 世界で一番権利意識の強いフランスでは、クリエイターとしての自分を尊重して欲しいという気持ちが強いです。知的財産を人権ベースで考えるヨーロッパ側か、ビジネスベースで考えるアメリカ側か、日本がどちらに進むかでも大きく違ってくるのではないでしょうか。またデジタル化で問題になるのは肖像権とパブリシティ権ですが、空気に押されずにここをどう扱っていくかをしっかり考えていく必要があります。


浜松町Innovation Culture Cafe

放送日:月曜 19:00~19:30

出演者:入山章栄

メール:innovation@joqr.net

過去回:Podcast


毎週月曜日、午後7時から放送している『浜松町Innovation Culture Cafe』。パーソナリティは早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さんが担当します。

当番組はさまざまなジャンルのクリエーターや専門家・起業家たちが社会問題や未来予想図などをテーマに話す番組です。自身の経験や考え、意見をぶつけて、問題解決や未来へのヒントを探ります。

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