浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2021年6月7日 先ずはお辞儀

浜松町にある人口の池の周りに、今年も「半夏生(はんげしょう)」が姿を見せた。
正確に言うと、植物自体は前から存在するのだが、一部の葉が白くなったのだ。
半夏生はドクダミ科の植物で、本州より南の広い地域に分布する多年草。
水辺や湿った土地を好む性質があり、庭や植物園、お寺などで栽培されているほか、
池や川のほとりに自生し群落をつくっていることもある。
もともと「半夏生」という言葉は日本の古い暦の中にある雑節の一つを意味し、
節分や彼岸などと同じく季節の節目を表す。
夏至(6月21日)から11日後の7月2日を指し、
昔は田植えを完了させなければいけない時期の目安にしていたそうだ。
その頃に、植物の半夏生も花が咲くことに由来する。
半夏生の特徴は、何といっても白い葉。
まるで絵の具で塗られたような、そこだけ漂白されてしまったかのような葉の状態だ。
初めて見た時には驚いた。
葉の一番の特徴は、花の時期に合わせて花穂(かすい)に近い上部の葉だけが白くなること。
葉の長さは10cm前後で、楕円形または長めの卵型をしており、葉脈がくっきりしている。
6月から8月頃に、半夏生は15cm前後になる花穂を出し、無数の細かい花をつける。
花穂は、始めはお辞儀をするような形だが、
下から除々に白っぽい花を咲かせながら伸び、直立する。
個々の花は直径2mm程度と小さく、花びらがないのが特徴だ。
細かい粒々の様なものは、中心の雌しべと、それをとり囲む6本の雄しべなのだ。
半夏生は多年草で、湿った土壌に丈夫な地下茎を広げて増えていく。
冬には、葉や茎といった地上に出ている部分は枯れるが、
地下茎とそこから生えている根はしっかり生きていて、春になると芽を出す。
白い葉があることが半夏生の特徴だが、なぜなのか。
お化粧のように上から何かを塗ったようにも見えるのだが、
実際には葉緑素が作られなくなり、緑色の色素が抜けてしまうのだ。
そして花の時期のあとに緑色に戻るのは、また、葉緑体が葉緑素を作りはじめるから。
では、何のために葉緑素が抜け落ちる現象が起きるのだろう。
その目的は、花の近くの葉を目立たせて受粉を担う虫を呼ぶためだといわれる。
花が小さい上に花びらが無いので、
葉を白い大きな花びらのように見せかける効果がある。
つまりお化粧をして虫をひきつける戦略。
植物も様々工夫しているのだ。
その他、植物の苞(ほう)になりきれていない、遺伝子の問題で、
葉緑体が花が咲く時期にはまだ発達していないとも言われている。
半夏生の花言葉は「内気」と「内に秘めた情熱」。
目立たない花だからこそ、葉を白くして虫達の注意を引く。
それは自らの繁栄のため。何とも深みを感じる。

先ずはお辞儀

先ずはお辞儀

内に秘めた情熱

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