
寺島尚正 今日の絵日記
2025年12月22日 冬に至る
首都直下地震の被害想定が12年ぶりに更新された。
これにより「何が変わったのか」「私たちは何をすればいいのか」が、よりはっきりしてきた。
まず、大きなポイントは、「直接の被害はやや減ったが、生活へのダメージはむしろ重く見積もられた」という点である。
死者の最大想定は、前回の約2万3000人から約1万8000人へと減少した。
これは、建物の耐震化や不燃化、火事が広がりにくい街づくりが少しずつ進んできた功績である。
一方で、首都圏全体での停電は最大約1600万軒、下水やトイレがまともに使えない人も膨大な数に上ると見積もられている。
避難生活の長期化や医療の中断などで亡くなる「災害関連死」も、新たに大きな課題としてクローズアップされた。
つまり、首都直下地震対策は、「揺れと火事だけを怖がる」段階から、「その後の暮らしをどう守るか」に重心が移ってきているということである。
では、生活者として何に気をつければいいか。
ポイントをいくつかに絞ってみた。
1つ目は、「家の中を安全な空間にすること」だ。
倒れてきたら危ない家具は必ず固定する。
特に寝室は、「落ちてこない・倒れてこない・割れない」を合言葉にレイアウトを見直していく。
本棚やタンス、冷蔵庫、テレビは金具やベルトで固定する。
できれば感震ブレーカーを付けて、揺れたときに自動で電気が落ちるようにすると、火災による犠牲を大きく減らせるとされている。
2つ目は、「在宅避難を前提に、数日~1週間の自力生活を準備しておくこと」である。
首都圏で一斉に避難所に向かうと、かえって危険が増す可能性がある。
家が無事なら家にとどまる、というのが新しい考え方だ。
そのために、
・水は1人1日3リットル×3日~1週間分
・火や水が少なくても食べられるレトルト・缶詰・栄養補助食品などの備蓄
・トイレが流せない前提の簡易トイレ(凝固剤付きの袋)を家族人数分を数日分用意しておく。
・冬の夕方の地震を想定して、毛布やカイロ、重ね着できる衣類を備える
・情報を得るためのラジオ、スマホ用のモバイルバッテリー
こういったものを、「とりあえず3日分」から、少しずつ揃えていくことが大事である。
3つ目は、「動けない前提で、人と段取りの準備をしておくこと」である。
大地震が起きたら、電車も道路もマヒして、簡単には帰れない。
家族とは、
・「その日は無理に帰らず、職場や学校にとどまる」ことを基本ルールにしておく
・集合場所や、連絡がつかないときの約束事を決めておく
・災害用伝言ダイヤルやネットの伝言板の使い方を一度試しておく
といったことを、10分でも話し合っておくと、いざというときの混乱がかなり減る。
結びに「揺れた瞬間どう動くか」も簡単に触れておこう。
家の中では、とにかく頭を守ることが最優先。
テーブルの下にもぐる、クッションやカバンで頭を覆う。
揺れている最中に玄関やベランダに飛び出さないことが大切である。
揺れが収まってから火の元を確認し、可能ならブレーカーを落とす。
玄関のドアを一度開けて、ゆがみで閉じ込められないようにしておくのも重要な一手である。
首都直下地震の新しい想定は、「怖がらせるため」というより、「ここを変えれば、助かる命はもっと増やせる」という具体的なヒント集でもある。
全部を一度にやる必要はない。
そうした小さな一歩の積み重ねが、もしものときの自分と家族の命を守る、大きな差になっていくと考える。

冬に至る

冬晴れ

風花夕暮れ
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