浜美枝のいつかあなたと

毎週日曜日
 9時30分~10時00分
Mr Naomasa Terashima Today Picture Diary

寺島尚正 今日の絵日記

2026年3月23日  お花見ですか?

俳句の春の季語に「山笑う」がある。
正岡子規の名句「故郷やどこを見ても山笑ふ」は、芽吹きの緑に覆われ華やかに輝く山を詠んだものだ。
広辞苑によれば、「春の芽吹きはじめた華やかな山の形容」とあり、ヤマザクラの薄桃色や新緑が織りなす風景は、まさに大地の微笑みである。

先日、東京ではソメイヨシノの開花が発表され、春本番である。
山に目をやれば、心癒される季節が訪れた。
だが、この美しい山が最も危険な時期にさしかかっている。

3月21日午前11時半過ぎ、群馬県上野村で山林火災が発生した。
「山林で二手に延焼している」との119番通報を受け、県は防災ヘリや消防を投入したが、火勢は一向に収まらない。
22日現在も鎮火の見通しは立っておらず、怪我人や建物被害は確認されていないものの、一時避難者が発生するなど緊迫した状況が続く。
県は自衛隊への災害派遣を要請せざるを得なかった。
林野庁のデータが示すように、山火事のピークは3~4月にあたる。
乾燥した空気に加え、行楽客の増加が重なり、今年の少雨傾向がリスクをさらに押し上げている。
人為的な失火、特に焚き火やタバコが9割を占め、自然発火はほとんど見られない。
想定可能な事故である以上、責任は極めて重く、春の山を愛する私たちが真剣に考え直すべき時だ。

日本では年間約1,500件もの山林火災が発生し、その最多期が3~4月である。
気象庁の観測によれば、冬の晴天続きで湿度が上がりにくく、落ち葉や枯草が火種を容易に抱え込む。
暖かさが訪れるとキャンプやハイキングの客が増え、火の扱いに不慣れな人々が引き起こす失火が急増するのだ。
2025年の林野庁統計では、原因の73%が「たき火の管理不十分」、18%が「たばこの不始末」に上る。
群馬の事例のように、風向きが変われば瞬く間に拡大し、復旧には数ヶ月を要する。
人間の不注意が、新緑の芽が灰燼に帰す光景とは、俳句の「山笑う」を根こそぎ台無しにしてしまう。

過去の教訓は生々しく胸に突き刺さる。
2019年の千葉県山火事は295ヘクタール、東京ドーム63個分を焼き尽くし、消火に1ヶ月を費やした。
2022年の山梨火災ではヘリコプターが200回出動し、総額は数十億円に達した。
人的被害は少ないとはいえ、土壌流出による河川汚染や生態系の破壊が長期にわたり続く。
ヤマザクラやブナの再生には、場合によっては10年以上かかるという。
気候変動で乾燥日が増える中、今年は全国20県で警戒レベルが引き上げられた。
山が笑う前に、炎に泣かされる運命を繰り返してはならない。

春山を存分に楽しむためには、具体的な予防策を徹底しなければならない。
火災の99%は防げるのだ。
まず事前準備と火気計画を怠ってはならない。
キャンプ場は「火気使用可」の場所を選び、禁火区域を標識で確認する。
焚き火台は必須で、直径1m以上の防炎マットを敷き詰める。
風速5m/sを超えれば即中止だ。
ハイキングではストーブのみを使い、裸火は厳禁である。
次に、たき火の正しい起こし方を守る。
枯れ枝や落ち葉を集めず、持参の薪に限定する。
点火は下から風上へ進め、火の粉の飛びを防ぐ。
深さ30cm以上の穴掘り焚き火なら、周囲2mを湿らせて土を盛り、延焼防止に水バケツを2つ常備する。
たばこやライターの管理も絶対条件だ。
喫煙はキャンプ場指定の喫煙所に限る。
ポイ捨ては決して許されず、吸い殻は水に浸して2重のビニール袋に入れる。
ライターのガス漏れに注意し、子供の手の届かない場所へしまう。
風や天候のリアルタイム監視を欠かさない。
気象庁アプリや消防予報で火災警報をチェックし、風向きが変われば即時撤収する。
夜間の火気は日没2時間前には消し終える。

装備と周囲への配慮も欠かせない。
消火器(ABC粉末型)、シャベル、バケツを揃え、テント内での火気は禁止、寝袋近くにマッチを置かない。
隣のキャンパーへ「火の用心」と声をかける習慣を身につける。
緊急時には即座に行動する。
火種を見つけたら大声やホイッスルで周囲を警戒し、119番へ位置と風向きを伝える。
二次災害を防ぐため、自ら下山せず消防を待つのだ。

これらを忠実に守れば、火災リスクは1/100にまで抑えられるという。
山火事とは、山の笑顔を消し去る残酷な行為だが、私たちの意識次第で守り抜けるのである。
子規の句を胸に、山笑う春を心ゆくまで満喫したい。
ヤマザクラの下で一杯やりながらも、火の管理を決して怠らない心がけが求められる。

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山ワオウ!
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サクラサク
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