文化放送で早朝番組「おはよう寺ちゃん」を担当しています。
月曜から金曜、4 時 45 分から 8 時までの放送です。
本来ならば、お伝えする情報は私も一度目を通してからの方が、理解も出来ますし、どこで区切れば良いのかなど、よりリスナーに届く放送をしたいと考えています。
しかし早朝で時間が無く、下準備は殆ど出来ません。
故にお伝えする情報は、スタッフが纏めたものを、原則そのまま直ぐにお伝えしています。
イメージとしては、サッカーに例えると、スタッフからのパスを、私はドリブルせず、直ぐにリスナーにパスしているのです。
下読みをせず伝える事を、私達アナウンサーは「初見で伝える」と言います。
目に入った文字を、そのまま音読していく。
これが難儀なのです。一向に慣れぬのです。
何が辛いのか、よく「トチル」のです。
只でさえ「カミ」やすい私。毎回放送後「今日もやってしまった‥」とうなだれます。
今回は、何故下読み無しに音読するとトチリやすいのか考えてみます。
それは「読む」「意味を取る」「発音する」「息継ぎする」の 4 つを、初めて同時に処理しなければならないから、という結論に至りました。
普段私たちが黙読で文章を読むときは、目と脳だけで意味を素早く把握しています。
しかし音読は一歩加わって「声に出す」作業が入るため、処理の量が大きく増えます。
その上、下読みがないと、文章の「どこで区切るか」「どの言葉に力を置くか」「どこで息継ぎするか」の設計図が頭の中にできていません。
読み進めながらその設計をする必要があり、トチリやすくなります。
視覚と発音のタイミングがずれやすいのです。
音声で読むとき、目はあくまで「2~3 文字先」を見ていると言われています。
脳は「今出している音」の次に「すぐ出る音」を準備しつつ、同時に「次の一文の意味」も予測しようとしています。
下読みがないと、この先読みが「ゼロから始まる」ため、口が視覚より少し遅れたり、逆に目が口より先に進んだりして、ずれが生じます。
加えて一文の長さや息継ぎの場所がわからない。
一文が長い場合、息継ぎをしないと一気に読みきれません。
その「息継ぎの場所」を事前に把握していないと、読みながら「あ、ここで息が必要だった」と急ぎ、トチリます。
下読みで一文の切れ目を確認しておけば、「句読点で区切る」「修飾語のあとで少し休む」などの作戦を立てられます。
下読みなしだとその作戦を即席で決める必要があり、慌てるのです。
また、発音しにくい部分を事前に発見できません。下読みでそのような「トチリやすい場所」を把握していれば、そこを特別にゆっくり読む、あるいは少し間を取るなどの対策ができます。
下読みなしだと、その場で対応する必要があり、トチリます。
さらに言葉遣いの違和感を事前にチェックできません。
下読みをすると、「言葉遣いに違和感がある」場所も発見できます。
例えば、「とても非常に暑い」のような重複表現の際に「とても…非常に…」と間ができてトチリやすくなります。
下読みでこれをチェックしておけば、「とても暑い」に直す、あるいは「とても、非常に暑い」と区切るなど、読みやすさの設計ができます。
意味の理解と発音の連携が崩れるのです。
下読みの本来の目的は「意味を把握すること」ですが、それだけではありません。
同じ文章でも、相手が初めて聞くフレーズなのか、5 回目なのかによって読み方は変わります。
下読みで「どこを強調する」「どこを優しく読む」などの「読み作戦」を立てておかないと、場の空気を無視した読みになり、聞き手が心と耳を閉ざすリスクがあります。
意味の理解と発音の連携が崩れるため、トチリやすくなります。
このように「下読みなしで音読するとトチリやすいのは、目と脳と口が初めて一緒に働くからです。下読みで一文の切れ目や息継ぎの場所、発音しにくい部分を事前に把握しておけば、読みながら慌てず、スッと話せます。」
下読みは、音読の「設計図」なのです。
設計図がないと、読みながら「ここで息継ぎする」「ここをゆっくり読む」を即決する必要があり、トチリやすくなります。
新人の頃、先輩アナウンサーから言われたことがあります。
「初見でとちらずに読むには、まず落ち着いてひとつ先の言葉を見ること。文頭を高く始めて、自然に声を下げていく。そして、単語ごとに止めず、意味のまとまりで読む。
単語ごとに区切るのではなく、意味がつながっている言葉のグループでまとめて読む。
例えば『今朝の東京は『小雨が『降っています』を『今朝の東京は』『小雨が』『降っています』のように、3 つのかたまりで読む。
慌てず、一歩先を読む。これが、トチりを減らす黄金の 3 つのルールだ」。
しかし、言うは易く行うは難しです。
可能な限り下読みなど準備して、それでも「初見」しか選択肢がない場合は、「兎に角、旬な情報を相手(リスナー)に伝える」事に専念するしか有りません。
「今朝こそトチリをなくす」思いでマイクの前に座っています。
今日の早口言葉
「初見でトチリトチリトチリを減らしトチリトチリトチリなくしましょう」
区切りを確認してゆっくり3回出来ればバッチリです!




