今年もキノコ狩りのシーズンを迎えました。
山に入り、美味しいキノコを沢山採ろうと楽しみにしている方も多いことでしょう。
現代社会では、都市化が進み、自然と触れ合う機会が減っています。
キノコ狩りは、森に入り、土の匂いを嗅ぎ、季節の移ろいを感じる貴重な体験です。
この「自然とのつながり」を求める心理が、人々を山に駆り立てます。
特に高齢者にとっては、健康維持のためのウォーキング要素もあり、「趣味と運動と食料調達」を一挙に満たせる活動として人気です。
一方で、毎年クマ被害だけでなく、毒キノコによる食中毒で体調を崩す人が後を絶たないのも事実です。
キノコのシーズンは一般的に8月から11月頃まで。
特に9月から10月が最盛期で、多くの種類が収穫のピークを迎えます。
ただし地域や標高、その年の気候によって前後しますから、地元の情報もこまめにチェックしてください。
まずクマ対策ですが、鈴やラジオで音を立てながら歩く、熊撃退スプレーを携行する、複数人で行動する、早朝や夕暮れ時を避ける、これらが基本と言われています。
また、糞や爪痕、木の剥がれ痕などクマの痕跡を見つけたら、その場所には近づかない勇気も必要です。
2023年9月、北海道の森でキノコ狩りをしていた70代の男性がクマに襲われ、重傷を負う事故がありました。
男性は単独で早朝から山に入り、音を出す対策をしていませんでした。
同じ年、秋田県でも60代の女性がクマに遭遇し、熊撃退スプレーで難を逃れた事例があります。
彼女は鈴を付け、家族に「何時頃戻る」と伝えてから出発していました。
この差が生死を分けました。
そして重要なのが、毒キノコへの警戒です。
毎年、日本全国で数十件から百件以上のキノコによる食中毒が発生し、死亡事故も後を絶ちません。
厚生労働省のまとめによると、2023年だけで全国で87件の食中毒事例があり、140人以上が体調を崩し、3人が死亡しています。
具体的な実例をご紹介します。
2023年10月、秋田県の60代男性が「食用だと思った」と採取したキノコを食べ、数時間後に嘔吐や下痢の症状を訴え、病院に搬送されました。
鑑定した結果、猛毒のタマゴタケ属の一種、ドクタマゴタケでした。
男性は「白いキノコだから大丈夫」と思い込んでいましたが、ドクタマゴタケは若い時、白い卵状で、食用のシロタマゴタケと非常によく似ています。
2022年9月には、長野県の50代夫婦が「毎年採っているから大丈夫」と油断し、ドクツルタケを食用キノコと誤認して摂取。
肝機能障害を起こし、入院治療を余儀なくされました。
ドクツルタケは「白いヒダ、つば、つぼ」という3つの特徴を持ち、食用のシロタモギタケやハラタケと非常によく似ています。
夫婦は「見た目も味も普段と変わらなかった」と話していましたが、数時間後に激しい腹痛と嘔吐に襲われ、救急搬送されました。
2021年には、岐阜県の40代男性がSNSで見つけた写真と「同じだから」と判断してキノコを採取、調理して食べました。
しかしそれは猛毒のベニテングタケで、意識障害を起こし集中治療室に運ばれました。
男性は「アプリでも食用と表示された」と話していましたが、専門家は「アプリの判定は参考程度。
確実な同定には専門知識が必要」と警告しています。
さらに深刻な事例として、2020年10月、新潟県の60代男性が「酒と一緒に食べれば毒が抜ける」という迷信を信じて毒キノコを摂取。
しかしそんな効果はなく、肝不全で死亡しました。
このように、昔から伝わる「言い伝え」や「民間療法」を信じて命を落とすケースが後を絶たないのです。
では、どうすれば安全にキノコ狩りを楽しめるのでしょうか。
専門家や行政が毎年口を酸っぱくして言うのは、「絶対に自分で判断しないこと」。
インターネットやSNSの写真、スマホアプリの判定、あるいは「昔から食べている」という経験則だけで判断するのは極めて危険です。
キノコの同定には専門知識と顕微鏡による胞子の観察が必要な場合も多く、見た目だけでの見分け方は限界があります。
具体的な対策を6つお伝えします。
1つ目、「知らないキノコは絶対に採らない、食べない」。
これが鉄則です。
「もしかしたら食用かも」という曖昧な判断が事故を招きます。
2つ目、「自治体のキノコ教室や同定会に参加する」。
多くの自治体ではシーズン中に専門家による講座を開催しています。
実際に山に入りながら、安全なキノコの見分け方を学べます。
3つ目、「採取したキノコは必ず鑑定を受ける」。
多くの保健所やきのこ研究施設では無料または少額の費用で鑑定サービスを実施しています。
食べる前に必ず確認してください。
4つ目、「1種類ずつ袋に分けて採取する」。
複数のキノコを同じ袋に入れると、万が一毒キノコが混ざっていた場合、すべてが汚染されてしまいます。
5つ目、「少量から試す」。
たとえ鑑定済みでも、体質によって合わない場合があります。
初めて食べるキノコは少量から始め、様子を見てください。
6つ目、「子供や高齢者、体調の悪い人には食べさせない」。
消化機能が弱い方は特に注意が必要です。
万が一キノコを食べて異変を感じたら、すぐに医療機関を受診してください。
症状が出るまでの時間、食べたキノコの種類や量、残っている場合はその現物を病院に持参すると、診断と治療の助けになります。
自己判断で吐かせようとしたり、市販薬で済ませたりするのは禁物です。
注意すべき症状は、摂取後30分から3時間以内に現れる「嘔吐、下痢、腹痛」、6時間から24時間後に現れる「肝機能障害、意識障害」、そして24時間以上経ってから現れる「腎不全」です。
遅れて症状が出るタイプほど危険で、手遅れになるケースが多いのです。
楽しいはずのキノコ狩りが悲劇に終わらないよう、十分な準備と慎重な判断で、安全な秋の山歩きを楽しんでください。
今日の早口言葉(ゆっくり3回、ラ・レ・ルをしっかり言いましょう)
「このキノコ 食べられるキノコ? 食べられないキノコ?知らぬキノコに心許すな」





