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2020.02.04

アフリカはビックマーケットに!? アフリカの治安・経済・今後について『浜松町Innovation Culture Cafe』


アフリカといえば、"貧しい"というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。ですが、実際は違うそうです。アフリカの現状はどうなってるのか掘り下げていきましょう。


12月10日に放送されたラジオ番組『浜松町Innovation Culture Cafe』では、アフリカで活躍するベンチャーキャピタリストの寺久保拓摩さんとヤフー株式会社メディアプロデューサーの宮内俊樹さんをお招きし、お話していただきました。


寺久保さんは学生時代からバングラディシュのグラミン銀行で働き、2015年にサムライインキュベートに入社。日本やイスラエルなど、多くの国で事業を立ち上げた。2018年にはルワンダ共和国に移住し、アフリカのスタートアップを支援する「ベンチャーキャピタル」を設立。ケニア、ウガンダ、ルワンダ、ナイジェリア、ガーナ、南アフリカで活動され、現地の起業家への投資や支援を行っています。現地で活動している寺久保さんが思うアフリカが期待する日本のイノベーションとは?


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アフリカの治安について

アフリカのイメージとして、"危険"というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。外務省が発表している海外安全情報によると、アフリカ北部のリビアや南スーダンなど一部の地域では避難勧告が発令されていたり、渡航中止勧告が出されている国もあります。ですが、ケニアやウガンダ、ルワンダなどは注意を払っての渡航は出来ますし、南アフリカなど勧告は発令されていない国もあります。


外務省が発表している「海外安全ホームページ」よりお調べすることができますので、気になるアフリカ諸国があればご自分で簡単にお調べすることも可能です。


WebサイトURL:https://www.anzen.mofa.go.jp/


しかし、日本では"アフリカは危険"というイメージが払拭されていないのが現状です。そのため、日本企業はアフリカにビジネスチャンスがあることを知らないのではないでしょうか。そこで、アフリカのスタートアップを支援しているキャピタリストの寺久保さんを中心にアフリカの今とイノベーションについて聞いてみましょう。


入山 グラミン銀行というのはノーベル賞を取ったムハマド・ユヌスさんが作られたソーシャルファイナンスって言いますけど、貧しい方々にお金を貸し付けて、貧しい国の生活を支えていくっていうものですよね。そこに学生時代から働いてたんですか?

寺久保 そうですね。インターンという形で行かせていただきました。元々、スタートアップをやろうと思っていて、どうやって世の中に新しい価値を生み出そうかなと思ったときにノーベル賞を取った銀行があることを知りました。実際に見てみたいと思い、グラミン銀行のお問い合わせフォームに「夏休みの間3か月間くらい行かせてほしい」と連絡をしました。5分くらいで連絡が返ってきて、実際に行ってみました。グラミン銀行って、子会社が15社くらいあって、政治がそれほど機能していない中でエネルギーの会社とか医療の会社を立ち上げていて、企業部を作っているグラミングループがあるんです。実際にみて、国が発展するための仕組みがおもしろいと思って、日本に帰ってきた。そして、ベンチャーキャピタルに入ったのがきっかけですね。

入山 なるほど。イスラエルなど、世界各国でスタートアップに投資しているというところに寺久保さんも携わっており、2018年にはルワンダに移住しているんですね?

寺久保 去年の5月から向こうに住んでいます。最初はルワンダに家があったんですが、今は国をまたいで活動しております。

アフリカは54ヶ国あって広いので、ケニアとウガンダ、ルワンダ、ガーナ、ナイジェリア、南アフリカと6ヶ国で活動していて、今は家もなく、転々としています。


続いて、寺久保さんがアフリカに注目した理由についての話題に。


なぜアフリカは今新しい経済圏として注目されているか

入山 それにしても、なんでアフリカに注目されたんですか?

寺久保 グラミン銀行での勉強は大きかったです。しかし世界で圧倒的に貧困課題を抱えている地域も多くありますが、アフリカが他の国と比べておもしろいと思うのは、情報革命から経済が発展していくことです。いわゆる、他の地域のように農業革命があり、産業革命があって、情報革命があって、デジタルや通信の時代になって、スマホがきてというステップを踏んでるのに対して、アフリカっていきなり通信がきて、スマホなどのモバイル端末が誰の手にもわたり、そこから国づくりや社会の仕組みができあがっていきます。

入山 なるほど。つまり、日本など今の先進国っていうのは長い歴史の中で米や小麦などを作る農業革命があって、19世紀に産業革命がおきて、製造業が発展し、自動車などに乗るようになった。そして、今の時代になって情報革命がおき、ヤフーみたいな会社が活躍しているわけですね。

寺久保 実際、ケニアなどではスマホの普及率は57%くらい。普通の携帯含めたモバイルに関しては95%くらい。通信環境も整っていて、下手したら日本より通信早いんじゃないかっていうくらいどこでもつながる状態になっています。お金の送金なんかもそうですけど、生活の軸がスマホになっているのが現状ですね。

入山 実は貧困はあるんだけど、ある面では日本より進んでいるところがアフリカの魅力になっているんですね。僕も知っているんですが、M-PESA(エムペサ)っていう通信の会社があるんです。アフリカって貧しい方は銀行の口座を持てないんですよね。でも、モバイルを持っているとお金のやりとりが銀行みたいにできるってことで、情報通信産業が銀行に参入してきているんですよね。

寺久保 そうですね。サファリコムっていう、日本でいうソフトバンクみたいな会社がM-PESAっていうモバイルマネーを普及させていて、小さい路面店でも使えて、国中に広がっています。

入山 具体的にアフリカでどういったスタートアップに投資をしているんですか?

寺久保 今ってインフラを作ることがスタートアップになっているんですね。たとえば、物流領域。アフリカって住所が無くて、ものを届けるということが存在しないんです。ケニアには郵便局が623か所あるんですけど、5000万弱の物流をカバーしていたんですが、それでは足りないし、非効率だし、郵便局にものを取りにいかないといけないし。いつ届くかもわからないので、1週間経つと破棄されていたりとかもあった。でも、住所を引き直すのも難しい。スマホはこれだけ多くの人が持っているならば、一人一人にデジタル住所みたいなものを与えてあげて、人の位置情報をベースにものを届けていく仕組みを作った。だから、カフェで仕事しても家にいても届く。家の近所のキヨスクに届けてもらって、あとで取りに行くこともできる。

入山 なるほど。そういうことに今、投資しているんですね。

宮内 めっちゃ便利ですよね。

入山 日本であってもいいものですよね。情報革命から始まっているから、住所がないからこそこういったことが始めやすいんですね。

寺久保 そうですね。僕も向こうにいって感じるのが、効率的でコストも安くて、日本でもこのシステムは当てはまるのではないかと思っています。日本も地方とかで過疎化が進んでいって、今の物流企業もアセットを持ち続けられないときがくると思うんです。そういったところにアフリカから日本に持ってくることもできるんじゃないかなと思っています。

入山 アフリカでスタートアップを支援される際に、会社を評価するポイントってありますか?

寺久保 今のアフリカの需要って、大企業とか財閥みたいな大きいプレーヤーがそこまで強く存在していないんですね。そういった中でスマホやモバイルが普及しているという中でスタートアップがデジタル中心に国のインフラ作りをしているところが日本とは全然違うところだと思います。

入山 つまり、日本だったらNTTとか昔の電電公社などがインフラを作ってたわけですけど、それがないからスタートアップでそれをやろうとしているってことですね。

寺久保 そうですね。さっき話した物流のスタートアップも現地の郵便局と組みながら一緒にどうやって国中にものを届ける仕組みを作っていくかを考えている。あとは救急車を呼ぶ仕組みがないんですよ。その仕組みをスタートアップが作ってたりもするんです。今までで119番しても自分で各病院に自分で電話しないと救急車が来てくれなかった。かつ、住所がないので自分が今どこにいるのか伝えられないんです。そこで、スタートアップが電話を受けて、ユーザーが今どこにいるのかを遠隔で救急車のドライバーに「ここの道を右に曲がって。」と指示をしたりします。着くまでの間、患者さんとコミュニケーションを取りながら、どこの病院に運べばいいのかを判断したりしています。

入山 そっか。ある意味固定電話より便利ですよね。GPSで位置もわかって、救急車がくるまでの間も何か自分たちで対応できる処置があるかもしれないしね。

宮内 日本が今まで持ってたインフラって強みでもあるんですけど、これだけテクノロジーが変わっていくと、ある種負債となって新しい技術が生み出せないということもあるので、アフリカが今どこまで進歩しているのかっていうのを学ぶと良いし、おもしろいですよね。

入山 日本のスタートアップにも踏襲されていると思うのですけど、日本とアフリカの会社の違いって一つはインフラだと思いますけど、他にこの辺が違うとかありますか?

寺久保 日本も最近はスタートアップが増えてきているとは思うんですけど、アフリカって起業家でいうと「頭脳が流出している」と言われています。たとえば、優秀な人たちがアメリカなど海外の大学に行き、そのままアメリカで就職して帰ってこないというのが今まではあったんです。でも、ここ数年で「今がチャンスだ」とハーバード大学に通って、グーグルに就職して何年か務めたのちに、帰ってきて起業するという形が増えてきています。世界のトップレベルで経験を積んだ人たちが、起業し始めているというのが今のアフリカの特徴だったりはしますね。

入山 あとよく言われるのが、実証実験がしやすいと言われることがありますよね。何でも法の規制みたいなものがないからドローンとか飛行機を飛ばしやすいとかもありますね。

寺久保 そうですね。実際にルワンダとかでも血液をドローンで輸送したりしています。今までって病院からオーダーがあると、陸路だと6時間かかって行っていたところが、15分とか30分とかでドローンを使って届けてしまうというスタートアップをやっているところもあったりします。そもそも考え方として、規制というよりも、もともとなかったことに対して全く新しいバリューをこれだけ簡単にできるなら取り入れた方が良いよね!というのがアフリカが政府から求められていることでもあります。それが実証実験とかがやりやすい環境になっているのかなと思います。

入山 アフリカって人口多いですよね。トータルで11億人くらいで、若いんですよね。

寺久保 そうですね。全体で25歳以下が60%を占めています。なので、デジタルネイティブが一気に増加しているんです。「アフリカこそが未来を定義する」ってうちの法人でも言っていて、デジタルを通じて新しい仕組みが作られていくんです。単純にアフリカっていう人口の多い市場というだけじゃなく日本では発想できない全く新しい考え方や概念が生まれるというところがポイントかなと思います。


アフリカのベンチャーキャピタリストに今後のアフリカについて聞いてみた

入山 もともとルワンダでお仕事をはじめられたということなんですけど、ルワンダ・ケニア・ウガンダ・ナイジェリア・ガーナ・南アフリカと色々な国をまわられている中で、特にこの国はおもしろいとかイケてるとかありますか?

寺久保 やっぱり国によって全然違います。たとえば、ナイジェリアでいうと人口が2億人いるんですけど、2050年で4億人くらいまで伸びていくと言われています。2100年には9億人になるという話も聞きました。世界で3番目に大きい国になると言われています。この国は注目しておかなければならない国だと思っています。あと、個人的に面白いと思っているのが南アフリカ。アフリカの中では発展している国で、ヨーロッパの文化とかもはいっていきていて、実際今は白人と黒人でハッキリわかれているんです。アパルトヘイトで政治的格差はなくなったんですけど、経済的格差は残ってしまっています。今も南アフリカのケープタウンは空港につくと、10キロくらいまっすぐな道が続くんですけど、両サイドは全部スラムなんですよ。海に近づくと、急に白人しかいない町になるんです。現地の起業家が今、チャレンジしているのは「貧富の格差をどう埋めるか」ということですね。

入山 やっぱり、社会問題があるんですね。私が良く聞くのは、ルワンダでポール・カガメ大統領と言う人がいて、ルワンダを改革して、今スタートアップで成長しているのがルワンダだそうですね。

寺久保 ルワンダって市場も小さくて、人口も800万人くらいなんですけど、政府主導で新しいテクノロジーを取り入れて、アフリカの中のシンガポールみたいなイスラエルみたいな技術先進国を目指しています。ドローンを飛ばすとかもどんどん受け入れて、ルワンダから新しいことをチャレンジするようにしている。

入山 知らないことばっかりですね。

砂山 ちなみに、南アフリカで白人と黒人の格差があって、それをテクノロジーでどうやって埋めようとしてるんですか?

寺久保 アフリカの産業をみていて、必要な要素が3つあって、1つはファイナンス。いかに個人と企業が職を作って、生産性をあげて、収入を増やしてあげるか。2つめはものと人の移動をどれだけ効率化して、コストをさげるか。3つめが需要と供給の最適化。たとえば、アフリカって日本だと食べものがないっていう印象を持たれたりしますが、実際、野菜でトマトとか作られたものの40%が破棄されていたりするんですよ。

入山 フードロス問題!日本で深刻だって話はでてきますが、アフリカでもそうなんですか!

寺久保 それは生産者がマーケットに届けられなかったりとか、管理の問題もありますし、中間業者が色々はいってしまったりなど、課題は色々ありますが、限られたリソースをどれだけ最適化して、経済の成長を最大化するかが重要だと思っています。この3つの要素が農業においても、医療に関しても重要だと思っていて、そういったところを支援しています。

入山 それをテクノロジーの力で解決するってことですね。結構日本とも似た課題なんですね。

寺久保 そうですね。たとえば、現地でやっている事業でもバイクタクシーのドライバーになりたい人ってたくさんいるんです。農村から自分の生活を1つステップアップするための大きいポイントだったりします。でも、なるためにまず頭金が5万円くらいかかって、バイク自体は13万くらいするんですけど、高くて買えないんです。それで今やっているのが、バイクとスマホを日本の2輪メーカーさんとやっているんですけど、バイクとスマホをセットで渡してあげて、1日400円、自分が稼いだ収入から返済してくれれば13か月後に自分のバイクにしていいよというものです。1日のドライバーの動きとかがスマホから取れるので、どこからどこまでお客さんを乗せて、いくら収入があったかがわかるんです。稼働を見てると、たとえば1時間に1回しかお客さんを乗せてない場合とか、その空いてる時間とかに他に郵便の物流だとか、ガスの配送とか他の仕事を与えてあげると稼働があがるので、その人の収入もあがって、お金も返ってくるし、早くバイクも自分のものになるし、早く生活のレベルがあがっていくんです。

入山 すごいな。テクノロジーの力ですね。

宮内 最適化が今、どこまでやるかというのが技術競争なので、実験というか課題がハッキリしているので、アフリカはそれをやりやすいし、日本みたいに規制も多くないので、チャレンジャーが増えていくのは間違いないですよね。

入山 確かに、言われてみると日本より課題ははっきりしていて、しかも情報革命から始まっているからモバイルに慣れてて、規制がないってのは伸びしろしかないですね。

田ケ原 遠い世界の話で、正直遅れてると思っていたのが今日の話で、むしろ日本よりインターネットが普及してるっていうのが驚きでした。

入山 そうだよね。今後、やっていきていことってありますか?

寺久保 1つはよりもっと日本とアフリカの接点を作りたいと思っております。

現地にいると欧米や中国の企業ってたくさん来ているんですが、日本からはまだ来ない。

現状スタートアップがインフラを作っているので、何十億、何百億という投資を欧米系の企業や中国の企業からはされております。

今後、インフラを取れる事業を日本が取れなくなってしまうのではないかと思っています。最後ってより資本力の勝負になると思うので、より資本力で戦わずに早い段階から現地で一緒になって取り組むことが日本企業のアプローチとして必要だと思っています。

入山 やっぱり、我々が知らないんですよね。アフリカって遅れてるイメージがあるし、もちろん遅れてはいるんだけど、伸びしろがすごいあるということを知らないとダメですね。

宮内 伸びるところに投資するというのはビジネスの基本だと思うので、伸びるのは間違いないと思いますね。

入山 私、来年絶対にアフリカに行こうと思います。


入山さんは今まで思っていたアフリカのイメージと実際は違い、貧しいという概念が覆され驚いていました。アフリカにはまだまだ多くのビジネスチャンスがあり、非常に興味を持っていた様子でした。


みらいブンカvillage 浜松町Innovation Culture Cafe

放送日:火曜 19:00~21:00

出演者:入山章栄、砂山圭大郎アナウンサー、田ケ原恵美

メール:innovation@joqr.net

過去回:Podcast


毎週火曜日、午後7時から生放送でお送りしている『みらいブンカvillage浜松町Innovation Culture Cafe』。パーソナリティは早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さん、砂山圭大郎アナウンサー。アシスタントはVoicy広報の田ケ原恵美さんが担当します。

「みらいブンカvillage浜松町Innovation Culture Cafe」はさまざまなジャンルのクリエーターや専門家・起業家たちが社会問題や未来予想図などをテーマに話す番組です。自身の経験や考え、意見をぶつけて、問題解決や未来へのヒントを探ります。

毎週火曜、午後7時から絶賛生放送中!!

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