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2020.08.11

生物に学ぶイノベーション『浜松町Innovation Culture Cafe』

浜松町Innovation Culture Cafe

本川達雄さんは、生物学者であり、東京工業大学の名誉教授です。また、歌う生物学者として知られており、テレビ番組の出演時に披露したこともあります。これまでに様々な著書を出版しており、「ゾウの時間 ネズミの時間」や「ウニはすごいバッタもすごい」等で知られています。


ナマコの研究で知られている本川達雄さんですが、なぜナマコの研究を始めたのかという問いに、シカクナマコに出会い「無防備でトロい動物が何故生きているのか、成功しているのか」というところから研究を始めたということでした。シカクナマコは食べることは出来ないし、可愛くもなく、見ていて何の芸もしない、研究をしてもなんの役にも立ちそうにない。だからこそ、研究して得られるメリットもあるという考えから研究を始めたようです。


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今生物が重要な理由

IT企業の活躍が目まぐるしい昨今、ビッグデータの分析や機械学習、そういったものの技術力は上がってきています。いずれも人間にとって便利なものを生み出す、より効率化を目指すものとなって世に出てきています。しかし、それだけではなく人が生きるにあたって必要なものは自然の中にあり、生物も同様です。人は人だけで生きていくことは難しく、農業や畜産といったものも必要です。環境をよりよくする為に近頃では、海の生物や虫といったものに対してフォーカスを当てた研究やイノベーションも多く見受けられます。人間中心の自分が好きなものだけを揃えるのが正しい世界なのではなく、嫌いなものとも共通の世界で共存していくことが重要視されているのです。


更なるイノベーションとは

生物の研究では未だ分かっていないことも多いですが、生物のことをより理解することで新しい技術を発見することができる可能性もあるのです。それはつまり、人間の暮らしを結果的に豊かにするイノベーションへと繋がるのです。実際にどのように広がり繋がっていくかは未知数ではありますが、生物の脳研究が進めば人間の脳に対して目を通さずに映像を見せることが出来たり、複眼などにより空間認識をしやすくなるかもしれません。生物の観点での発展と技術力の発展により、まだまだ新しい発見があるのです。




文化放送のラジオ番組『浜松町Innovation Culture Cafe』2020年7月25日の放送では、人工知能関連で様々な事業を手掛けるエクサウィザーズ社長の石山洸さんと、今回ご紹介させて頂いた「ゾウの時間 ネズミの時間」の筆者でもある生物学者、本川達雄さんにご参加頂き、「生物に学ぶこと」について伺いました。


生物に学べるものは

本川 生物というのは「生きていく」ことのが目的なわけです。生物は38億年ずっと続いているんですよ。これは、偶然そういうことが起きたわけではなく、生物は38億年、ずっと生きていくということに価値を見出したと言えると思うんです。人間もそれを見逃してはいけないのではないかと思う。僕は伊勢神宮方式と言っているのですが、擦り切れてきたら新しくする、ということを生物は繰り返してきたのです。伊勢神宮も二十年ごとに立て直して1300年続いているんです。


入山 実は日本は一番長寿企業が多いのです。社寺建築の金剛組というのがあって、飛鳥時代にできたけれども、今も残っているのです。現在は何十代目だと思いますが、金剛組というもの自体は、今も続いていると言えるので伊勢神宮と同じですね。


本川 ただ瞬間的にお金を儲けて、ということではなく、長く安心を提供するという企業が続いていくからこそ日本は素晴らしいと言えますね。


ただ生き残れば良いのか

石山 入山先生がよく、イントラパーソナルダイバーシティ(個人内多様性)が大切だと言いますよね。人は自分の中に実は多様な知見や経験があった方が良いというものですね。普通は文学に興味があれば文学を、素粒子に興味があれば素粒子を、となるところが、本川先生はその両方に興味があり、その間にあるのはナマコだ、とナマコも研究しようというのが大変珍しいかなと思うのですよ。


本川 割り切っちゃうと、どちらかに行ってしまうんですよ。白黒に割り切るのが西洋近代の価値観です。ものは必ず滅んでいく、諸行無常なのですが、そこで無常じゃないものをどうやって求めるのかという答えが、自分自身に子供というダイバーシティや老いというダイバーシティを認めて、次々とつないでいくことによって現実に不死なるものを実現させる、ということなんですね。自分が生きるということだけではなく、子供たちに次の世代にどのように広めてつないでいくかということですね。


入山 我々個人だけが生き延びればいいのだ、という考え方は西洋的な考え方ですよね。


本川 自分の子供も自分のように考え、その考えを広げて周りの人間も、さらに周りのものも、天地万物全ては自分と関わっているという考え方は生物というものに基礎をおいた考え方だと言えると思います。お家代々という考えは古いと切り捨ててしまうのは、生物という生き方を切り捨ててしまうこと。これをやってしまうのは根っこが無くなってしまうのではないかと心配します。生物的には、こう言った考えは間違いだと思います。


入山 少子高齢化というのもありますが、なかなか子供たちに割く資金などがないという状態ですが、こういった状況は生物学的に、間違っているということですね。


浜松町Innovation Culture Cafe

放送日:土曜 18:00~18:57

出演者:入山章栄

メール:innovation@joqr.net

過去回:Podcast


毎週土曜日、午後6時から放送している『浜松町Innovation Culture Cafe』。パーソナリティは早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄さんが担当します。

当番組はさまざまなジャンルのクリエーターや専門家・起業家たちが社会問題や未来予想図などをテーマに話す番組です。自身の経験や考え、意見をぶつけて、問題解決や未来へのヒントを探ります。

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