
【7月7日放送】今月のシネマログ
上地 上地由真のワンダーユーマン!今週もよろしくお願いします。
今日は月に一度の映画をフューチャーする回、題して「今月のシネマログ」。
映画ソムリエの「さゆみん」こと東紗友美さん、そして映画評論家の荒木久文さんとお届けしていきます。
よろしくお願いします。
荒木・東 よろしくお願いします。
上地 7月公開の映画の中から、私、上地由真とさゆみん、そして荒木さんの三人が「これは観てほしい!」と思った注目作をピックアップしました。まずはさゆみんのおすすめ作品をお願いいたします。
東 私がご紹介するのは、7月18日からアップリンク吉祥寺で2週間劇場公開される『私たちのオカルティックサマー』という映画です。
ちょっと不思議で、ちょっと怖い青春オカルトミステリー、夏にぴったりの映画です。
主人公は高校2年生の夏希ちゃんという女の子です。彼女は突然、姿を消したお姉さんの行方を追っています。手がかりも少ない中、夏木は学校のオカルト研究会に協力を求めます。その部長が令和のオカルト伝承者とも呼ばれる前田真嗣というキャラクター。
そして部員にもうひとり、ツインテールがトレードマークの現役の巫女・千尋。そんな個性豊かな3人がチームを組み、学校のプールに幽霊が出るという噂が、もしかしてお姉ちゃんの失踪事件に繋がっているんじゃないかと真相を調べ始める物語です。
その調査の先にあったのはただの噂ではなく、想像を超える夏の脅威だった・・・
というお話になっているんですけども、まあ、青春ミステリー、ホラー、この要素が1時間にたっぷり入っていながらも本当にちゃんと見事にまとめ上げているなという印象で、これ大阪芸術大学の2023年卒業制作作品であるというので、もうこんなレベルの高い卒業制作作品を作っているんだと驚きましたし、去年の11月に初開催された十三下町映画祭で、200作品以上の中からグランプリと観客賞の2冠を獲得して話題になっていた作品なんですけど、めっちゃくちゃこの3人のキャラクターが個性的なんですけど、キャラ立ちしていてね(笑)3人の会話が、ゆるい話聞かされているなって思ったんですけど、よくよく聞いていると核心に迫っていくというか、このバランス、ふざけているように見えて、気付いたらどんどん話が展開していくという会話の運びも、とても見事でしたし、全体的にはゆるいんですけど、その中に、ぴしゃん、という夏にぴったりの怖さもありましたし、これがサマーホラーだなあっていう雰囲気があって。本当に怖くなるかな?と思いながら観ていたら。めちゃくちゃ怖いじゃん!を味わわせてくれて。
いや素晴らしいなと私は思いましたが、お二人はいかがですか?
上地 夏に本当にぴったりな作品で、3人のキャラクターも立っていて、観ていて本当に面白かったですし、画角がすごく特徴的っていうか・・・
東 ああ~!わかる!もしや幽霊の目線?誰の目線なのか?って想像させるところにもね。
上地 そうそう。誰が見ているんだろう?!という、ちょっとそのゾクゾク感というか、何が起こるんだろう?みたいなそういう感じもあって。最後までドキドキしながら観ました。
東 ありがとうございます。荒木さん、いかがですか?
荒木 はい。本当にね、個性的でユニークな作品でしたよね。学生映画ってことで、あんまり学生映画って取り上げたことないんだけども。
上地 たしかに初めてですね。
荒木 初めてですよね。ひとつはね、東さんがね、よくこんなところにまでチェックしている、っていうのと・・・
東 ありがとうございます。
荒木 学生映画が一般興業にかかるっていうのは作品的に、クオリティ的に高くないと見込めないので、そのへんをよくクリアしていると思いましたね。
東 うんうん、ありがとうございます。怖かったですか?荒木さんは。
荒木 あんまり怖くなかったね。
東 あっはははは!
荒木 というか、いろんなところでユニークな怖いというよりもミステリーだとかそういう奥にあるものを楽しめるんだよね。キャラクターはちょっとマンガっぽいしアニメでやったらどうかなと思ったりしたり。それから、もうちょっとここを上手く充実させたらもっと面白くなるのにな・・・っていうことも正直たくさんあったんですけれども。限られた予算の中で、学生さんがね、卒業制作ですから、お金そんなにかけられない。
東さん、無駄にお金持っているんだから、少しお金出してあげたらいいのに。
東 私、持っていないですが(笑)でもセットとかもね、細かくて、お札とかいろいろ出てくるじゃないですか。
上地 たくさん出てきましたね。
荒木 巫女さんなんかが出てきて、現代的なプールとかいうところと上手く組み合わせていましたよね。一番面白くて笑ったのは、プールに出てくるお姉ちゃんの幽霊がスクール水着着ていたことね。
上地 あっはっはっは!可愛らしかったね~。
荒木 あんな若い女性のスクール水着、やたらそそりますよね。
上地 何それ?荒木さんだけだよ、そんな目線!やめてくださーい。
東 そうだよー。
荒木 あのー、東さんからはね、みんなZ世代なんだから、そういうことを言うと怒られますよ、と言われたんだけど・・・
上地・東 そうですよ。
東 スクール水着が良かったなんて感想、やめてくださいよ。荒木さんなんですから!
荒木 いいじゃん、Z世代に対抗するわたしはシラけ世代ですからね、1950年生まれですから。
東 あっはっはっは!
荒木 でもこういう才能がどんどん出てくるっていうのはね、非常に頼もしいですよね。
東 そう!20代前半でここまでまとめ上げているんだから、これから監督に期待したいなと思いましたね。
荒木 監督の樋口くん、注目したいですね。
東 はい、ありがとうございました。私、東紗友美のおすすめ作品は7月18日から公開の『私たちのオカルティックサマー』でした。
上地 続いて紹介するのは私のいちおし作品、7月11日から公開の映画『顔を捨てた男』という作品です。
あらすじはですね、セバスチャン・スタン演じる主人公・エドワードは俳優志望。
ただ生まれつき顔に大きな腫瘍があって、それがコンプレックスで人前に立つことを避けてきました。彼の隣に住んでいるのが劇作家を目指す女性イングリッド。
エドワードは彼女に惹かれるんですけども気持ちを上手く伝えることができません。
この距離感がリアルで見ているこっちまでもどかしくなりました。
そんなある日、エドワードは思いきって外見を劇的に変える治療を受けることを決意します。その結果、彼は全く新しい顔を手に入れて別人として再出発だったはずなんですけど、ここからが物語の核心です。再スタートした彼の前に現れたのがかつての自分の顔にそっくりな男・オズワルド。オズワルドは人を惹きつけるカリスマ性を持っていて、周囲の人はしだいに彼に心を奪われていきます。
さらにはイングリッドが書いた戯曲が特異な顔を持つ男の半生を描いたもので、なんと、その主役オーディションまで開催されていたのです。捨てたはずの顔が舞台で生き返っていくというなんとも皮肉な展開になっていきますね。さゆみん、どうでしたか?
東 これも非常に印象的な作品でしたね。社会の美しさの価値観にもすごく切り込んでいて、美しいことが正しいこと、良いことみたいな、なんとなくそういうふうだよね、みたいに思われている考え方とかをちゃんと風刺しているし。しかもその価値観、実はすごく危ういもんなんだよ、ということをちゃんと見せてくれるし。それをやる上でホラー、ダークコメディ、SF、恋愛的なニュアンスといったいろんなジャンルの要素をミックスしながら結構深い問いかけをしてくれるし、すごく揺さぶられました。
ビジュアルもとても印象的だからね。実際いらっしゃる方だからね。初めて見た時には驚いて、でも彼を通して本当に問いかけられましたね。何が本当に生きる時に美しい考え方なのかとか。
上地 それぞれ生き方次第なんだなっていうか。
東 そう!すべては自分がどうあるか。
上地 そうそう。顔とか、見た目とかじゃなくて、結局はというところを思いましたし。なんかラストまですっきりしなかったよね、観ていて。
東 いや~、そう。あれがね~。
上地 でもモヤモヤが残るんですけど、それがやっぱりこの映画の面白さっていうか。
東 だから主人公と一緒に、今後も考えなきゃいけない問いを残された感じがしましたね。あの演出、うまかったですよね。
上地 荒木さん、どうでしたか?
荒木 そうですね。おふたりがおっしゃっていることでだいたい尽きると思うのですが、いわゆる外見至上主義ね、ルッキズム。あなた方の好きなルッキズムですけども。
東 そうなの?何、ルッキズムが好きって?(笑)
荒木 まあ自己主張への暴走とかいう感じで。非常になんとも嫌な気分になる映画ですよね・・・そういう意味で言うと。
まあブラックコメディと言ってもいいでしょうけどね。外見とは一体何か?という考える機会を与えているですけども、たぶん監督本人も、監督はアーロン・シンバーグ監督とおっしゃるんですけども、この人はかなり真剣に攻めていますよね。自分も当事者であることから、やっぱり自分の考え方なんかもきちんと投影させていることですよね。非常にカリスマ的な、強い投げ方をする人ですよね。だからみなさんね、感じ方は違うと思うけど、簡単にやっぱり人は見かけだけじゃないんだなっていうこと感じる人もいれば、いやもっと顔って大切だよって思う人もいるし、美しさって一体何だろうなというふうに考えている人もいるし、そういう意味では多くの問いかけをしている映画ですよね。
東 めちゃくちゃ議論したくなる映画じゃないですか。
上地 観終わった後にね。
荒木 うん。セバスチャン・スタンはね、本当にビジュアル・・・
東 いや、本当にびっくりしました!
荒木 あれは、ほらこの前観た映画はなんだっけ?えっと・・・ 『君はワンダー』?なんかもね、ちょっと似た系統ですよね。
上地 ああ、そうですね。
東 『ワンダー 君は太陽』
荒木 そうそう、前にはほら、例のトランプ大統領の映画があったじゃないですか『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』あれを演じた人、セバスチャン・スタン。
上地 そうなんですか?!
荒木 観たことあるでしょ?トランプ役。
上地 はい。
東 イケメンって言われるような・・・
荒木 顔だよね。
上地 うんうん。
荒木 本当にね、セバスチャン・スタンのビジュアルはね、目に入ってきますよね。という話も含めた、そういう意味では複雑な映画で。
東 なんか今、やるべき作品だったと思って今月紹介した。やっぱりちょっと今、ルッキズムはSNSの影響もあり、今、10代で整形するのが当たり前。どんどん加速している中で、一旦深呼吸とか考えるポイントは常々作っていかなくちゃいけないと思っていて、こういう映画がそういう役割を果たしてくれているかな、と。整形が悪いのではなくって、結局 心が変わらないと人生は変えていけないじゃないですか。それはやっぱり思うんですよ。
荒木 そうなの?ふーん(笑)
上地 あっはっはっは!
荒木 そういうふうに考えない人もいるよね、そういうのは、君たちみたいにある程度のビジュアルを持っている人たちが言えることなんじゃないですか?
東 うーん・・・なんか議論になってきちゃったね。由真さん、返して、返して!(笑)
上地 あっははは!でも本当にこういう議論ができる。観終わった後に。
荒木 そういう作品でしたよね。考えさせられます。
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上地 はい。私、上地由真が紹介したのは7月11日公開の映画『顔を捨てた男』でした。映画評論家の荒木久文さん、そして映画ソムリエの東紗友美さん、ありがとうございました。
荒木・東 ありがとうございました。
この記事の番組情報

上地由真のワンダーユーマン
月 21:30~22:00
上地由真がメインパーソナリティを務め、アシスタントとして、山田みきとしアナウンサーが進行役を務めます。 番組では毎週テーマを設け、“由真的”テイストで進行。音…