【10月6日放送 今月のシネマログ】

【10月6日放送 今月のシネマログ】

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上地    上地由真のワンダーユーマン!今週もよろしくお願いします。
今日は月に一度の映画をフューチャーする回、題して「今月のシネマログ」。
映画ソムリエの「さゆみん」こと東紗友美さん、そして映画評論家の荒木久文さんとお届けしていきます。
よろしくお願いします。

荒木・東  よろしくお願いします。

上地    10月ですけど、映画業界はどうですか?

荒木    映画業界、10月は大変な月なんですよ。映画賞がそろそろノミネートされてきますし、東京国際映画祭を始めとして映画祭が・・・。

東     もう毎週末のように何かしら映画祭のある月というか、まさしく芸術の秋の体感できる一か月になっていますよね。

荒木    そうですよね。だから それにちなんでですね、この番組、10月はちょっと映画の特集をやってみようと思います。映画賞とか映画祭をレポートしたり、東さんがちょっとした企画をもっていますので、それもやっていただきたいと思います。

上地    はい、楽しみにしていてください。10月公開の映画の中から、私、上地由真とさゆみん、荒木さんの三人が「これは観てほしい!」と思った注目作をピックアップしました。まず、映画ソムリエの東紗友美さんのおすすめ作品です。

東     はい。私がご紹介するのは、10月24日から公開される『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』という映画です。この映画なんですけど、ちょっと天然で生真面目な男子高校生・代々木ジョニー、代々木ジョナサンという名前なんですけど、主人公の青春群像劇になっています。
毎日、マイペースな放課後を過ごしていたジョニーくんですが、スカッシュ部に熱血新人部員が入部し、バイト先で出会った訳あり女子と惹かれ合うことで、まあ恋愛、友情、部活の日常が少しずつ彼の中で変化していきます。もうね、ごめんなさい、群像劇がたくさん出ていくので、細かいあらすじは今回省かせていただきますね。それで最終的には、自分のいるスカッシュ部の団体戦の日が近づいて、ジョニーの周りの女子たちですとか、男友達の友情だとか、いろんなものが大きく動き出していく・・・というお話になっています。
もう魅力あるのが、代々木ジョニーのキャラクター。ちょっと不思議くんで天然っぽい、
でもどこか真面目でマイペース。そんな彼が、もう彼もクセ強いんですけど、そのクセの強い仲間たちと集まって織りなす賑やかな、でもオフビートの話題がいっぱいある青春群像劇になっていて、私、青春映画は特に好きなジャンルなんですけど、ちょっと特別感のある会話劇が面白い映画だったなあと思っています。私もなんか、代々木ジョニーくんが放課後毎日ダラダラと過ごしているんですけども、この何かが足りない気がして、いろんな人に会いに行ってしまう、あの時間。あったな~、自分にも。全力でやれるものはないけど、何もしないで過ごすのは、なんか違うんだよなあ・・・みたいな日々を過ごしていたなあ、なんて感じながら、妙に何だか懐かしい気持ちになっちゃったんですけど。でも私のいちおしはやっぱり、木村聡志監督の作品なので会話劇なんですよね。今、この映画の宣伝のトレーラーでも冒頭で、主演のKANONくんという方が長セリフをバーッてしゃべっているんですけど、もう彼はいちいち本当にただ女の子を振るだけでも、すごい振り方をするんですけど、別れを女子に対して切り出すシーンで、じゃあなんで好きなのに、好きなら別れなくていいんじゃない?みたいなことをね、ジョニーくんは女の子に言われるんですけど、それはそうなんだけど、好きにもいろいろ種類があるっていうか、え、何?っていう感じで、バーッとしゃべって、君を好きなのは日本史を好きと同じ種類の好きなんだよ、とか言っちゃって(笑)

上地    あはははは!そんなこと言われたら、怒っちゃうよね~。

東     怒っちゃうよね。え?私が日本史と同じにされている理由って何?みたいなことを女の子に聞かれると、日本史と同じにされているっていうか、僕が好きな科目が普段何ですか?って聞かれたら日本史っていうふうに答えるんだけど、それはその大前提として僕が・・・

上地    うるさい~!!(笑)

東     そう、そこ、そこ!(笑)今のツッコミでこう言いたくなるような、そういう会話劇をずーっとするんですよ。これが意外とクセになる。なんでクセになるかというと、木村さんの作品ならではなんですけど、どうしようもないことを言っているようで、実は核心についた話をしているようにも聞こえてくるセリフ回しといいますか、この軽やかな迷走、これが逆に人物の輪郭を浮かび上がらせるし、変に哲学的にも聞こえてくるっていう魅力があって、それが今回も満載ですごく楽しかったんですけど、おふたりの感想を聞きたいです。

上地    私も木村監督の会話劇が好きなんですよ。前もこの話で盛り上がったよね。以前ゲストにも来てくれたし。心地が良くて、そしてクセ強キャラクターなんですけど、誰も悪い人っていうか、嫌な人が出てこなくてほのぼのとして観られるし、クセになります。
いやあ本当に。

東     まさしく、いろんな人間たちが魅力的で。

上地    愛せるよね、みんな。愛せるキャラクター。

東     愛せる。そうなの!で、私、やっぱ人間好きかも!とか思えちゃうようなポジティブな面もくれる作品ですよね、木村監督の作品って。

上地    あと主演のジョニーくんを演じたKANONくん、すごく引き込まれましたね。

東     ね~。私も初めてお芝居しているところを拝見したんですけど、あのSKY-HIさんが代表を務めるBMSGに所属する方らしくって・・・

上地    そうなんだ?!

東     もう代々木ジョニーでしかない(笑)

上地    なんか独特な世界観がね、伝わりましたよね、雰囲気とか。

東     うんうん、たしかに~!ぴったりでした。荒木さんは?

荒木    木村監督のお話が出ましたけど、今回、木村監督、この作品はミスマガジン2023の受賞者をメインキャストにして作るという企画だったんですね。

東     そうなんだ。

荒木    そのくらい出演者も多いし、木村さんのところの常連というかマキタスポーツや中島歩さんなんかも出ているんですけどね。あの~、大変だったと思いますよ。演技経験が少ない人たちだけに。

上地    でもそんな感じしなかったですけどね~。

荒木    そうですよね。でね、本人のパーソナリティに沿って役作りし、人物像を作っていたと言っていますよ。

上地    ああ、だからか。

荒木    さっきのKANONくん。淡々としていて自然でね。あんまり笑わないのに何かちょっと感情が伝わってくるような不思議な個性でしたよね。

東     すごく個性がありました。

荒木    会話のセンスがとっても良いですよね、おっしゃったように。僕はなんかリズムが面白かったですね、会話のリズムが。平坦で抑揚がなくって。今、こういう感じでみんなしゃべっているの?そんなことないんですか?若い人としゃべったことなんか、ここ2~3年ないんですけど。

東     でも私、代々木ジョニー見ていると、こういうふうにしゃべっているんじゃないかな、って(笑)こんな青春、どこかで本当に起きているんじゃやないかなって思ってしまったんですけどね。

荒木    うん、普通っぽいっていうかね。素人さんっぽいっていうか。彼の持ち味なんですけどね、惹きつけられますよね、そういう意味じゃ。

上地・東  うん、惹きつけられた。

荒木    で、この監督・・・

東     もうね、木村聡志監督の作品って、マーベル・シネマティック・ユニバース、DCではなく、キムラ・シネマティック・ユニバース、KCUと呼ばれる世界観があるんですよ。大袈裟っちゃ大袈裟なんですけど(笑)・・・ある種、もう木村監督の作品同士が響き合っているので、なんだろう・・・本でいうと伊坂幸太郎さんの本とかも、あれ?あのキャラ、この本にも出ている、みたいな発見があると思うんですけど。先ほどの中島歩さんですとか、あと平井亜門くんですとか、綱啓永さん、もう今をときめくイケメン男子たち、本当3秒くらい出ていたりする・・・(笑)

上地    ここで出てくるんだ?みたいな。

東     そう!(笑)それがKCUのそういうのを探していくのも、宝探しをしている感覚じゃないですけど。

荒木    木村監督の作品はね、そういう感じなんですけども。この番組でもね来てくれたことがあったと思うんですけども、今年、注目の監督のひとりですよね。あともう一人、あとで紹介しますけども(笑)

東     おっ・・・?!

荒木    独特のセンスとか世界観を持っているので将来、いい監督になると思うので。映画監督っぽくないところがいいですよね。期待の監督です、木村聡志。覚えておくといいと思います。

東     そうですね。紹介したのは、『代々木ジョニーの憂鬱な放課後』でした。

 



(C)2025「代々木ジョニーの憂鬱な放課後」製作委員会

 

 

上地    続いて荒木さんのおすすめ作品です。

荒木    はい。私、荒木が紹介するのはですね、10月31日公開の『火の華』といいます。「ひ」はファイヤーね、「はな」は中華の「華」一言でいうと、久々ヤバい映画です。ヤバいという意味はふたつありますよね、今はね。ひとつは伝統的なネガティブ、まずいとか普通のヤバいよ、という感じ。もうひとつは逆に現代的なポジティブな表現で、かっこいいとかね、やばくね~?とかいう若者言葉で。良いよ、という褒め言葉。
で、この映画、両方の言葉を合わせ持った映画なんじゃないかなと思いました。
じゃあ、どうしてヤバい映画なのかを説明していきましょう。
この映画は10年前に発覚した日本の自衛隊の日報問題が元になっているんですね。自衛隊を海外に派遣することになって、いろいろすったもんだの挙句ですね、自衛隊は海外の危ない地域、つまり戦闘地域には行かせず、非戦闘地域ですね、つまり戦争をしていないところにだけ派遣するということになるわけですね。この前提のもとで、日報問題というものが起こるわけなんですね。自衛隊の日報問題です。自衛隊がは見地から引き揚げてきた後、当時、海外派遣部隊がイラクや南スーダンに派遣されていた時に作られた日報つまり毎日の日誌、レポートですね。これ、廃棄してしまって、今 ないよ、と防衛省・自衛隊が言っていたのに、実は廃棄されずに残っていたということなんですね。
もっとヤバいのが、この事件で残っていた日報の中に、戦闘という記載があったと
いうこと。つまり非戦闘地域派遣限定なのに、南スーダンPKOではですね、銃撃戦の記録が残っているんじゃないかという話が、まことしやかに伝わったわけですね。つまり自衛隊が戦争状態で戦闘に巻き込まれてしまっていたんじゃないか、という。これあくまで疑問ね。。事実じゃなくて。本当のことはまだわかっていないんですね、この情報開示がなくて。ところが陸上自衛隊の幕僚長が更迭されたり、まあちょっといろいろ揉めた話があったんですよ。この事件がこの映画のモチーフになっているんですよ。
この事件から発想したというお話なんですね。
ストーリーをちょっと紹介します。
主人公は島田という名前の自衛隊員。この人は南スーダンに派遣されるんですけども、他の隊員たちと共に、非戦闘地域であるはずの場所で戦闘に巻き込まれちゃうんですね。
つまり戦争状態に入るわけですね。これ、お話ですよ。リビアと撃ち合いが始まって、島田の友人である隊員が撃たれてですね、島田はやむを得ず撃った相手のゲリラの少年を撃ち殺します。この戦闘で、ですね、自衛隊は1名が死亡、1名が行方不明になるんです。ようやく戦闘現場から基地に逃げ帰った島田はですね、上司の自衛官から今回の戦闘はすべてなかったことに、口外するなと強く言い渡されて帰国するんですね。つまり闇に葬られたわけですね、この話は。帰国した島田さんは花火工場で花火師として働くんですね。その結果PTSDを発症したり、仕事も手につかなくなってきて、そんな中で、ちょっと彼は関わっていた闇ビジネスで起きたトラブルに巻き込まれて、とんでもないことになっていく、というそういうお話なんですね、あくまで。映画のお話ですよ、架空の話ね。島田さんという人は山本一賢さんという、すごく存在感のある俳優さんがやっていますね。いかがでしたか、ご感想は?

東     いやあ、もうこれ、私は想像以上にスケールの大きい映画だなって思いました。国際的であって、社会的でもあって。えっ、こんなに日本映画って大きな物語作っちゃうんだ、って。あの、ごめんなさい、印象に思っていたのよりもだいぶ大きなスケールだったのにまず驚いたのと、あとやっぱりその、今回題材にしているのは、爆弾も火薬、花火も火薬。で、同じその火薬でも、向き合い方を変えれば人を苦しめるものにもなるし、人を癒すものにもなる、そういうふうなものだなと改めて思いましたし。主人公の心が少しずつ回復していく様子、再生の物語としても、ものすごく見応えがあって。もう驚きましたね。

荒木    はい。あの、はっきり言うとね、観る人を選ぶ映画です。嫌いな人と、訳わかんないわ、という人と、はっきりと2人に分かれると思いますね。まあでもね、ちょっとあえて取り上げさせていただいたんですけれども、なぜかというとね、日本ではこういった国の政治だとか、特に安全保障だとかね、自衛隊に関わる文は非常にナイーブな問題ですよね。ある意味タブーなんですね。で、今まであんまりこの映画作品にタブーに触れるっていうことはなくてですね、シリアスポリティカルムービーというのはいろんなプレッシャーがかかってきますから。

東     これを公開にこぎつけたことも、なかなかすごいことなんじゃないか、って。

荒木    まあ、そうですよね。特に映画の前半と後半がちょっとはっきり分かれているのですが、後半がもっとヤバいことになるというね。ちょっとここでは言えない部分なんですけど。ネタバレになるので。じゃあ、このヤバい映画、一体誰が作ったの?ということなんですけども、監督はですね、小島央大さんという人。この人の名前も覚えておいた方がいいかもしれないね。この人が監督・編集・音楽、それから共同企画・脚本、全部やっています。この人ね、1994年に生まれて、小さい時からニューヨーク暮らしですね。本作が長編の2本目です。2本目なのに、これだけクオリティーの高い映画を、骨太な映画を作るということで、こんなことからも日本人の映画監督や今までの映画監督とはちょっと違う香りがしますよね。

東     え、1作目はどういう?

荒木    『JOINT』という映画でデビューした人なんですよね。僕も一度お会いしたことがあるんですが、外見はなんとなくやっぱり今の流行りのIT企業にお勤めの青年みたいな、ああいう感じ。

上地    へ~!

荒木    ところがね、この骨太というか腹の座った作品をね、作っているということで、これから非常に楽しみになりますね。だから元自衛官のね、今、東さんも言いましたけども、壮絶な体験とね、日本の花火をモチーフにして、火薬をね、平和な花火と人殺しの銃に使われるという。

東     同じ火薬でも人の意図しだいで、祈りでも残虐性のあるものになるというか、人間の社会そのものみたいなものをね。

荒木    みたいなものですよね。この番組でもね、これまで戦後80年ということで、戦争に関する映画をたくさん観ていただいたし、しゃべってもきたけど、こちらの映画、特に平和とか戦争とかを考えさせられる映画ですよね。もし戦闘に自衛隊員が巻き込まれていたらという発想で作られた映画ですけども、その結果、まあちょっと結果的には軍事クーデターにも通じるような状況が描かれているんですよね。リアリティが感じられるということでヤバい映画ですね。ネタバレありなのであんまり言えませんが、試写室でこれ、拍手が起こったんですよ、珍しく。

上地    へえ~!

東     私も結構これ、今年ベストテン、確実に入ります。すごかった。

荒木    そうですよね。本当にね、硬派な作品の中でも出色の出来ばえだと思います、はい。ヤバい映画ということで『火の華』ご紹介しました。

 


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上地    続いて紹介するのは私のいちおし作品、10月31日公開の映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』という作品です。この映画はですね、1975年に女性として初めてエベレスト登頂に成功した登山家・田部井淳子さんの人生を基に描いた作品です。主演は吉永小百合さん、そして監督は阪本順治さんで、2人のタッグはなんと13年ぶりだそうです。吉永さんは役作りのために、人生で初めてピアスを開けたそうですよ。その覚悟の入り方も、この作品の熱量を物語っています。
物語はですね、エベレスト登頂で終わりではありません。余命を宣告されながらも、山に登り続けた晩年までがしっかりと描かれていて、壮大なスケールでひとりの女性の挑戦を追いかけていきます。大きな見どころの一つが女子登攀クラブ。こちらは田部井さんをモデルにした多部純子が「女性だけで海外遠征を」という合言葉で立ち上げたクラブで、女性たちが困難に挑む姿を通して夢をあきらめない強さが浮き彫りになっていきます。映画全体を通して描かれるテーマは「山頂の先に何を見るか」華やかな偉業の裏にある苦悩や葛藤そして家族との絆、仲間との信頼、そして挑戦をやめない人間の強さ。観終わった後、力強いメッセージが胸に深く残る作品になっています。
本当に、私もマラソンをしているし、挑戦を今も続けているので、この主人公のポジティブな言葉だったりとか、ずっと余命宣告を受けたにも関わらず、挑戦し続ける姿にとても感銘を受けました。私も生きている間はずっと挑戦し続けていたいなっていうふうに改めて感じましたね。さゆみん、どうでしたか?

東     生き様、かっこよかったな~って思ったのと、想像以上に女子のエンパワーメント系の映画にもなっていたから、今見てもこれ、1975年界隈の話から、お歳を重ねていくお話ではあるんですけど、今の物語、今、公開してくれることで、よりこっちも、うお~!ってなる部分があるな、なんて思ったのと、あとキャストが豪華だった~!もうお芝居対決のように素晴らしいキャストのみなさんで。青年期の多部純子を演じたのんさん。のんさんもすごく魅力的でしたし、とにかく優しい多部さんの旦那。みんな、あの旦那欲しい!っていう旦那役で。旦那良いよ、あの旦那。

上地    旦那さんが最高でしたね。挑戦し続ける奥さんを陰で支えるというね。

東     そう。それを佐藤浩市さん。凄まじい優しさと色気で包んで。

上地    最高でした。色気は違う?(笑)

東     色気、違う?色気は余計でしたね(笑)多部さんの長女に木村文乃さん、息子さんに若葉竜也さん。あとはエベレスト登頂後も良き親友となった新聞記者役で天海祐希さんが出ていたり。

上地    この2人のバディもすごく良かったですよねー!

東     良いんですよね!

荒木    女性同士のね、結び付きや友情を描いたシスターフッド映画でもありますよね。

上地    ああ、たしかに。

東     うんうん。

荒木    いろんな要素が詰まっていましたよね。まあ家族と、親子の物語でもあり、一番強いのは夫婦。時代は昭和なので、山登りはもちろんのこと、まあ女性の山登りなんてね、ちょっとあんまり考えられなかった。

上地    男のスポーツみたいな?

荒木    そう、男の世界ですよ、マンズマンズワールドですよね。山の神っていうけど、やっぱりそっち側だよね。だからよく聞く『山男の歌』って知ってます?「娘さん~、よく聞~けよ♪」知らないのかな、みんな?

東     知らないです。『山男の歌』?へえ~。

荒木    ああ、知らないか・・・時代がね。

上地・東  (笑)

荒木    「山男には惚れるなよ」っていう歌なんですよ。

東     あれ?劇中で歌って・・・

荒木    歌っていたんですけど、歌っていたのは、その有名な『山男の歌』男のメッセージの歌なんですよ。それを女のメッセージに変えて歌っていたの。

上地    ああ!あの歌、すっごく印象的でしたね。

荒木    「男ども、よく聞けよ。山女には惚れるなよ。山と聞いたら、旦那は二の次よ♪」って歌っているんです。

上地    うん、そうそうそう。

荒木    だからそういう気持ちだったんでしょうね、やっぱり女性としては。特に山への挑戦でもあり、男社会への挑戦でもあった、っていうふうに思えるんですよね。先駆者、まあいろんな女性がいろんな悩み、困難がね、描かれているし。さっき言ったようにね、夫の正明さん、本当によく彼女を支えて、子供の面倒もよく見て、家事もやって、イクメンの代表みたいなね。で、何?田部井さんに由真さんは会ったこともあるんですか?

上地    私はお会いしたことないです。けども、マラソン仲間の人が飛行機で。

東     え~っ!田部井さんに?

上地    飛行機で田部井さんに会ったことがあって。サインをいただいて、エベレストの山を書いてもらったって。今でも大事にしているって言っていました。

荒木    私はね、実はね、30年ほど前ですけど、ヒマラヤで本物の田部井さんに会ったんですよ。

東     ヒマラヤで?!すごーい!

荒木    1994年の11月にヒマラヤの「ホテルエベレストビュー」ってあるんですけども、ホテルに泊まった時。そのホテルっていうのは、まあなぜ行ったかというと長くなるので言わないですけど、4000メートルぐらいのところにある、エベレストが目の前にあるんですよ。

東     エベレスト、見られる山みたいな?

荒木    見られる山、4000メートルにある。

東     見られるホテル?

荒木    正面に。サガルマータ国立公園というところがあって、その中のシャンポチェの丘というところに建っているんですけども、日本人の人が造ったの、そこに。少し前までは世界で一番高いところにあるホテル。そこに行った時にお会いして、お話をしました。田部井さん、その時はね、55歳ぐらい。ごく普通のおばさんでいろんな山の解説を優しくしてくれました。もう登ってからしばらく経っているので、もういろんなことを。ゴミ問題がね、ちょっと頭にあるというふうに言っていましたね。元々ね、僕、山国育ちで、あんまり山ばっかりで、なんで山なんか・・・って思ったんですけど、それからね、ちょっと山がすごいなと思うようになりましたね。年に一度ぐらい、2000メートルぐらいのところに登るんですけども、そういう意味でね、目を開かせてくれた人。登山って楽しいなと思わせてくれた人ですけどね。そういう意味で思い入れのあった人なので、今回の映画はね、とても良かったです。山の映画ではあるんですけど、要素もありながら、人間のね、田部井淳子の人生をモデルに描く、それを取り巻く夫婦、それから挑戦の物語なんだなというふうに思いましたね。

上地    はい。私、上地由真がご紹介したのは、10月31日公開の映画『てっぺんの向こうにあなたがいる』でした。


©2025「てっぺんの向こうにあなたがいる」製作委員会
 

 

映画評論家の荒木久文さん、映画ソムリエの東紗友美さん、本日はありがとうございました。

荒木・東  ありがとうございました。

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上地由真がメインパーソナリティを務め、アシスタントとして、山田みきとしアナウンサーが進行役を務めます。 番組では毎週テーマを設け、“由真的”テイストで進行。音…

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