「カトーじゃダメなんだ」スタートレック出演俳優が日本語版の役名にこだわるワケとは?
お笑い芸人の大竹まことが同世代や全世代の男女に向けてお送りしているラジオ番組『大竹まことゴールデンラジオ』(文化放送・毎週月〜金曜11:30~15:00)。12月8日の放送は、サウザンブックス社から発売中の絵本『ぼくらの自由がうばわれる時 第二次世界大戦の日系アメリカ人の物語』の翻訳を担当したジャーナリストの北丸雄二氏を招いて話を伺った。
大竹「奇しくも今日、12月8日は真珠湾を攻撃した日らしいですね」
北丸「そうですね。もうずいぶん昔になりましたけれども。同じような状況が、きな臭い話がいろいろ出てきてるもんですから、ちょっとその話もしたいなと思ってます」
大竹「ご本をお出しになったと。『ぼくらの自由がうばわれる時』というこのご本を…」
北丸「訳した」
大竹「このご本をお書きになられたのはどなたなんですか?」
北丸「ジョージ・タケイさんという、あの『宇宙大作戦』、スタートレックのテレビドラマシリーズで、いわゆるアジア人っぽい人の役をやっていた方です。日本語版では『ミスター・カトー』という名前だったんですけど、実はタケイさんと何回かお話したことがあって、ミスター・カトーは本来はヒカル・スールーと言う名前なんです。70年代か80年代か、ジョージ・タケイさんが日本に来た時、あちこちのデパートを歩いていたら、いろんなファンらしい人たちから「カトーさん、カトーさん」って言われて、「誰だ、カトーさんって?」と思ったんですって。カトーさんという人が私の後ろを付いてきてるのかと思ったり。それで聞いたら、実は日本語訳の吹き替えでは「ミスター・カトー」になってるんだ、と」
大竹「なるほど」
北丸「そしたらね、カトーじゃダメなんだと。これは23世紀のお話で、その時には人類は平和で、人種差別も何もないんだと。(テレビ版放送時の)60年代って、ほら、ベトナム戦争だとか公民権運動だとか、ああいう時代だったもんですから、それとは違う理想の世界、みんなが一つの宇宙船に乗って旅をしているんだというような世界を描くために、私はスールーという名前にしてもらったって。フィリピンのあたりにスールー海っていう海域があるんですよ。そこはアジアの全ての国と繋がってる海なんだと。つまり私はアジアというかその時代の代表としてスールーという名前をつけてもらった。だから、カトーじゃダメなんだって。日本人じゃダメ。ヒカルっていうのがなんとなく日本人っぽいけれども、スールーという名前には意味があるから、そのへんのことを分かってほしいなあっていうふうにおっしゃってましたね」
大竹「でも、吹き替え版ではミスター・カトー」
北丸「そうそう、カトーになっちゃったと。日本人はあの当時、珍しかったですからね」
大竹「そうだよね」
北丸「そのジョージ・タケイさんが、実は去年の4月に『My Lost Freedom』、私の失われた自由という絵本を書いたんですよ。これ何かっていうと、今、人種差別とかいろんな問題が出てきている。きな臭い話も出ている。戦争の話も出ている。また同じ時代が来るんじゃないか、その時に今の若い世代の人たちは、昔のあの時代、つまりジョージ・タケイさんが80何年前に経験した、日系アメリカ人として、アメリカ人なんだけどもアメリカで収容所に入れられちゃった。収容所というとナチスと一緒でね、強制キャンプなんですよ。そこで行われていた、いわゆる人種差別っていうのは何だったのか。そういう話を今の若い人たちに、歴史を知ってほしいということで、絵本をお書きになって。それをニュースで知ったもんですから、よし、日本でもやろうと。あんまり強制収容所の話ってわかんなくて、だいたい今、アメリカと日本が戦争したってことも知らない人たちがたくさんいるような状態なので。それで、やっぱり絵本の形で出そうということで、クラウドファンディングをやって、先月かな、出来上がって発売になったという本なんですよ」
大竹「収容所を渡り歩く3~4年間の体験は、タケイさんが何歳のとき?」
北丸「5歳の時からですね。真珠湾が4歳の時で、5歳になって即収容所行っちゃって、4年ぐらいですね」
大竹「その間の収容所生活を、どうしてそこに連れて行かれたのか? またそこの収容所からもう一つの収容所に行くのにも理由があったというふうに書いてあります。ただ、ご本は…日本の感じじゃないなあって」
「大竹まことゴールデンラジオ」は平日午後11時30分~15時、文化放送(FM91.6MHz、AM1134kHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
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