「俺が5区をやるよ」早稲田大学・山口智規主将が”名探偵”にかけた言葉の真意【102回箱根駅伝】

「俺が5区をやるよ」早稲田大学・山口智規主将が”名探偵”にかけた言葉の真意【102回箱根駅伝】

Share

★文化放送の箱根駅伝特設サイトはこちらから★

(先頭=山口智規主将/右から4番目=工藤慎作選手)

早稲田大学・花田勝彦監督が『往路を臙脂で染める』と声高らかに宣言するのは山口智規(4年)・工藤慎作(3年)という磐石な二枚看板の存在があってこそ。

箱根駅伝に向けて気合いが漲る花田勝彦監督
山口智規主将(4年)は「3年生までは自分の競技のことだけで精一杯」でした。特に昨季3年目は「チームの結果に対してここまで責任感を持たなきゃいけないのか……と強く感じることが多かった。自分が走らなければ早稲田は勝てないと思い込んでしまい苦しかった」ので昨年の駅伝シーズンは体調も優れませんでした。何せ「拒食症のような症状が出て食べても戻していた」そうで特に箱根の前はこの状態がずっと続きました。でも「自分ではそんなに重いものとは思わなかったのでチームには伝えなかった」とはいえ心身とも万全の状態で戸塚中継所のスタートラインに立てたはずもありません。「2区の走りに影響したか分からないけど」と前置きして「自分自身にプレッシャーとストレスを与えていた」と振り返っていました。
では、なぜ山口智規主将が今季の実戦で目を見張るような好結果を残せているのでしょうか?
ひとえに「肩から荷を下ろすことができた」からです。「(3月末まで約2ヶ月間の単身)オーストラリア合宿で陸上を楽しんでいる選手の姿を見たり(3年/工藤)慎作のような頼れる選手が増えてきた」ことや「花田さんにはずっと”1500mをやりたい”と伝えてきたけどなかなかやる機会がなかった。でも(関東&日本)インカレでいざ千五をやってみると自分の得意なものや理想のレース展開を思い出せた」ことがその理由です。「ガムシャラに陸上を楽しんでいた初心に帰るきっかけ」をオーストラリア遠征で掴み、主力選手としての重圧を分かち合う後輩の成長も、本来の自分を取り戻すことにつながりました。
「”今年”は人生一度きり。1/4、主将に就任して次の1/4に後悔なくいられるようにする」には15年ぶりの箱根駅伝総合優勝という結果が必要です。
“山の名探偵”というキャッチフレーズが定着してきた工藤慎作選手は過去2回の好走もあり、次の5区区間賞最有力候補と目されるシーズンをここまで過ごしてきました。その点、今までとは勝手が違うようで「今年の慎作は周りの期待が重荷となっている。一度、5区への自信がなくなっていたようなので”だったら俺が上るよ”と応じた」と山口智規主将は明かしていました。「彼には気持ちよく走れる環境をちゃんと作ろうと思っている。留学生のような感じで大事にしてきた(笑)。好きなようにやってもらえればいい」とキャプテンの寛大な心に包まれながら工藤選手は本番を迎えようとしています。
「69分11秒の区間記録を意識する前に自分の走りをすることが大前提。その上で記録を塗り替えられたら理想。当日の体の動き次第では68分台も狙う。不可能ではない。でも当日の状態が微妙だな……と思ったら決して焦らず前回と同じくらいのタイムで抑えるよう臨機応変に対応していく。小田原中継所で大差をつけた首位でタスキリレーしようが……アクシデントがあってシード争いに陥っていようが……5区は”自分のリズム”を崩さずに走ることが最も大切。山での走りは自分であまりコントロールできないから前の選手の背中が見えてもペースを上げることはしない」と工藤選手はキッパリ言いきりました。前回も自分のリズムを保つことだけを意識した結果、3人を抜いていったのです。
3年連続3回目の5区挑戦前に周囲から寄せられる期待に苦しんだ状況……山を走るには自分のリズムを崩さない強い志……という点は二代目山の神・柏原竜二さんと全く同じなのですが当時と大きく違う点は精巧なGoogle Mapの存在です。「おかげでコースの熟知度は高い」という”名探偵”のコメントを聞いた”二代目”は『それはうらやましい!』とのけ反って叫んでいました。いずれにせよ”四代目山の神”が生まれようものなら花田監督の『智規を胴上げしたい』という願いが叶うでしょう。
文化放送アナウンサー・往路総合実況/斉藤一美
Share

関連記事

この記事の番組情報


文化放送新春スポーツスペシャル 第102回東京箱根間往復大学駅伝競走実況中継

文化放送新春スポーツスペシャル 第102回東京箱根間往復大学駅伝競走実況中継

2026年1月2日(金)・3日(土) 7時30分~14時30分

3連覇を狙う青山学院大学、全日本の勢いそのままに“二冠”へ挑む駒澤大学、歴代最強クラスで初優勝に挑む國學院大學、30年ぶりの王座奪還を期す中央大学、そして在感…

NOW ON AIR
ページTOPへ