建築思考×数学思考 予測不能なビジネスへの思考とは
様々な社会課題や未来予想に対してイノベーションをキーワードに経営学者・入山章栄さんが色々なジャンルのトップランナーたちとディスカッションする番組・文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」。
2026年2月23日,3月2日の浜松町Innovation Culture Cafeは、「建築思考×数学思考 予測不能なビジネスへの思考とは」をテーマに、お客様にビジネスデザイナーで、株式会社kenma代表の今井裕平さんと、ビジネス数学教育家で、BMコンサルティング株式会社代表取締役の深沢真太郎さんをお迎えしました。
入山:今井さんは、建築思考。深沢さんは数学思考という考えを掲げられているということで、その思考法を伺っていきますが、まず今井さんから伺います。建築思考、これはどういうことですか?
今井:そもそも、僕は建築学科で大学院を出て設計事務所で2年働いているのですが、建築家になれなくて挫折したんです。その後、経営コンサルをして、デザインをしたいからということで両方やっているのがビジネスデザイナーなんです。だから僕、毎日建築のことを考えて、その中で建築思考を考えたということではないんです。建築思考と対比的に使っているのが、ビジネスパーソンだと馴染みのあるデザイン思考。なんかちょっと新しいことをしないといけないというときに、研修で聞いたり、ポストイットがたくさん貼ってあったりっていう。
入山:新しいアイディアをバンバン出して、とにかく作ってみて…みたいなやつがデザイン思考ですよね。
今井:それでデザイナーとしては一言言いたいことがあって、厳密には、あれはまず、デザイナーではない方がデザイン的な考えをするメソッドとしては素晴らしいと思う。ただ、デザイン思考って人間中心のデザインで、僕はそれだけがどうしても納得できない。
入山:いかに人間が消費者として、その人の考え方や行動様式を中心にして、いろんなものとか、サービスをどんどん考えようっていうのがデザイン思考じゃないですか?それが違うぞと?
今井:使っている人がということではなく、その考え方自体がレベル低いんじゃないかと、なんなら今だとかっこよくないんじゃないかと。なぜかと言うと建築に戻ると、建築の問題って課題があるんです。「この土地に図書館を、この条件で作りなさい」これ僕がデザイン思考で先生に持ってったら、「お前らアホか」と言われます。「コンテクストのことを考えてんのか?」となります。なので、僕からするとむちゃくちゃ違和感を覚えます。建築だと人間が1要素なんです。しかし、人間も要素だし、歴史も場所もあらゆる要素があって。でも最後は建築っていう複雑で、単純化したものを作らなきゃいけないので、そのものの中で最後にアウトプットを出す。それがデザインだと思ったので人間中心って。
入山:例えば何か「こういったものが建築思考です」という具体例はありますか?
今井:書籍の中では、日本茶のカフェの仕事があって、コロナで売上が1/3に減ったお店がありました。これをどう立て直すか。テイクアウトしかできないんで、ガラス製のお茶が入るボトルを通勤の人たちに300円でレンタルするやつやったんですが、これで売上が、コロナ前の2倍まで戻しました。建築思考の話に戻ると要件としては、「売上戻さなきゃいけない」「テイクアウトでやらなきゃいけない」そこのクライアントって、お茶の生産者の方なんです。天皇杯とか出ているので本物を出しているけど、テイクアウトだと、どうしてもライトになる。でも本物を出したい。でも「新しい体験も作りたい」とか、そういった要素がいっぱい出てくるんです。そんな中、これをどう取り扱うかっていう時に、僕はこの日本茶の「朝ボトル」をユーザーのことを考えて作ったというよりは、テイクアウトにしなきゃいけない。でも本物を出したいとなると紙コップでは出せないので、いかに、ガラスボトルをレンタルさせるかとなります。これって、一見面倒くさく見えるんですけど、1回慣れたら、みんな何度でもやってくれるので新しいところにお店出したら、関係構築ができるのです。コロナ禍ってお店に入ってもらえないので、僕は毎朝挨拶するのがいいと思ったんです。「おはようございます」と言い続けたら、カフェだから来てくれる。そんなこともやって、店の前にいっぱいボトルを刺してるんです。そこで1本300円払ってもらうと。
入山:深沢さん、ここまでの今井さんのお話どうですか?
深沢:面白いですね。デザインって自分にはちょっと苦手だったなという。「色はどんなもので、形は何色で…」、というイメージを持ってたんですけど、結構数学と近いところもあるなと。
入山:数学に近いなって思いますよね。制約条件があって最大化問題を解いているみたいな。
今井:ちなみに僕、絵めちゃくちゃ下手くそなんです。デザイナーなのに絵が描けたら僕は挫折してないと思います。思いっきり抽象思考でモデルだけ考えて。それをこう、ごちゃごちゃしながらアートぶったした方がいいんじゃなかってやってるんで、多分数学っぽいところあると思います。
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今井裕平さん
大学院を修了後、安井建築設計事務所、日本IBM、電通コンサルティングを経て、2016年に株式会社kenmaを創業。企業の見過ごされた強みを発掘して、その会社の看板商品・サービスを創り出す「フラッグシップデザイン」を提唱。100万本のヒットを記録したメモ代わりに使えるリストバンド「wemo」など多数のユニークな商品・サービスを手掛ける。功績も評価され、グッドデザイン賞をはじめ、社会課題解決を対象としたデザイン賞を多数受賞。
深沢真太郎さん
予備校講師、ファッション・アパレル業界を経て、2011年に人材育成の専門家として独立。数字や論理思考に強いビジネスパーソンを育成する「ビジネス数学」を提唱し、企業の研修や執筆活動を行う。わかりやすくシンプルな独自の指導法に定評があり、ソフトバンク・京セラ・三菱UFJなどの大手企業やプロ野球球団、トップアスリートなど、のべ2万人以上に研修を提供。昨年12月には三笠書房から「人生をシンプルにする 数学的思考: 「速さ」よりも、やることを「少なく」」を発売。
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