トンネルなどのインフラ点検、「異常」をみつける新技術とは…京都大学大学院・西野朋季先生に聞く
毎週日曜朝5時5分からお送りしている「防災アワー」
防災をもっと身近にもっとわかりやすく生活目線でお届けしている番組です。
今週と来週2週にわたって、防災や減災に大きく役立つことが期待される最新の技術についてご紹介します。
私たちの生活を支えるトンネルや下水道といったインフラですが、建設から年月が経ち、老朽化による事故も発生し大きな課題となっています。
今日はそんなインフラの「異常」をいち早く、かつ正確に見つけ出すことが期待される最先端技術についてお伝えしました。
JVCケンウッドと共同で新たな計測システムの開発を進める京都大学大学院 工学研究科・特定研究員の西野朋季(にしの・ともき)先生に伺いました。

(実験の様子:写真はすべて西野先生ご提供)
伊藤: 西野先生が現在取り組まれているプロジェクトとは?
西野:トンネルなどのGNSS(衛星測位システム)が使えない環境でも、高精度に位置を測定できる新しいシステムの開発プロジェクトです。この研究は国土交通省が進めている「道路政策の質の向上に資する技術研究開発」というプログラムの中の、道路インフラ管理の高度化に向けた技術という枠組みで進めているものになります。
伊藤: トンネルや下水道管など、色々なところで事故が起きる恐れがありますよね。インフラ点検をコストも安く、人件費もあまりかけずにできるようになるというイメージでしょうか?
西野: その通りです。現状ではインフラ点検の多くが人の目による目視点検に依存しており、人手不足や点検コストの増大が大きな問題になっています。そこで、昨今のAI技術や、今回ご紹介する「センサーフュージョン技術」をJVCケンウッドさんと一緒に活用し、解決を目指しています。

伊藤: 改めて、その技術の特徴などを教えていただけますか?
西野: 1つ目は、非常に微小な変化でも目視ではなく画像検出で検知できる画像解析技術です。2つ目はセンサーフュージョン技術で、画像と距離を同じ位置できっちりと見える技術になっています。従来の画像(写真や動画)だけでは、どこに何があるか、亀裂がどこに発生しているかという場所の特定が難しかったのですが、距離情報も得られるため、異常を高精度に検出できます。 3つ目は、GPUマイコンを活用したAI処理です。画像と距離のデータを統合することで、自動的により信頼性の高いインフラ診断を実現することが期待できます。
伊藤: もう人の手を使わずに、カメラやAI技術を使って点検ができるようになるということですね?
西野: おっしゃる通りです。そうなればいいなというところで、実証実験を含めて進めている次第です。

伊藤: いつ頃、事業化できそうでしょうか?
西野: 現在は研究開発と実証実験の段階にあります。AIの基礎技術は確立されており、実際のトンネル環境での検証やデータ蓄積を進めています。現在の進捗を踏まえると、数年以内に実証から実運用に近い形での導入を目指しています。インフラの老朽化は急務ですので、国のプロジェクトや自治体との連携により、それよりも早い段階で社会実装が進む可能性も期待しています。
伊藤: 今後はトンネル以外の場所でも、新たな展開を考えていらっしゃいますか?
西野: この技術は、GNSSが使えない環境で位置を特定し、自動的に異常を検知するものですので、地下空間や人が立ち入りにくい閉鎖環境(地下インフラ)への応用が考えられます。特に上下水道は地上から状態を把握するのが非常に難しい場所ですので、老朽化を目視に代わるもので点検できればと考えています。現在は京都市の上下水道局などとも、現場で困っていることに役立つシステムかどうか、意見交換を行っている状態です。
伊藤: 下水道の場合、ドローンなどを飛ばしてデータを得るイメージでしょうか?
西野: そうですね。今回のセンサーフュージョンカメラは、全部組み合わせても500g程度と非常に軽いため、ドローンにも搭載できるレベルの重さになっています。
伊藤: 軽いですね! まさに防災・減災につながる研究ですよね。
西野: おっしゃる通りです。トンネル点検の研究で得られた技術を基盤として地下インフラ全体の監視技術へと発展させ、最終的に、異常を早期に発見して事故や災害を未然に防ぐ「防災技術」になればと期待しています。
実現すればコストの削減や時間の短縮だけでなく、点検に当たる作業員の安全も確保できますよね。
聞き逃した方はradikoでぜひお聞きください。
来週は「センサーヒュージョンカメラ」を開発したJVCケンウッドへのインタビューを送りします。
気象予報士・防災士 都庁・気象庁担当記者 伊藤佳子
