今大会の見どころ

高速化が進む戦国駅伝!注目ポイント

今シーズンは新型コロナウイルス感染拡大のため、スポーツ界は大きな影響を受けることになりました。学生陸上界も例外ではなく、感染防止のためグラウンドを使った全体練習が出来ない、慣れ親しんだ寮を離れ、地元に戻っても練習する場所がない・・・。そもそも、試合が軒並み中止となったことで、選手たちは日頃の鍛錬の成果を発揮する場所を失い、何を目指して進めばいいのか、暗闇の中を手探りで歩くような時期が続きました。特に、学生としてのシーズンは今年が最後になる4年生の動揺は想像を超えるものだったはずです。そんな中、全日本大学駅伝開催のニュースはまさに希望の光だったことでしょう。

中止となった出雲駅伝の代わりに学生駅伝開幕戦となった全日本大学駅伝は駅伝ファンが心躍るレースとなりました。話題のルーキーの大快走、各チームのエースによる真っ向勝負、そして、先頭が目まぐるしく入れ替わるレース展開・・・。初戦ならではの区間配置の難しさを含めて、「全日本」は駅伝の醍醐味を全て詰めこんだレースでしたが、クライマックスの「箱根」はその興奮を超える『高速戦国駅伝』になるという期待が高まります。

『高速戦国駅伝』の主役となりそうなのは今季の「4強」です。全日本大学駅伝では、青山学院大学、駒澤大学、東海大学が「3強」と目されていましたが、明治大学がその一角・青山学院を食って3位をもぎ取り、今大会の優勝候補に名乗りを上げました。以下、それぞれのチームのストロングポイントをご紹介しましょう。まずは前回王者・青山学院大学。全日本では、アンカー勝負に敗れましたが、箱根の戦い方を知っている巧者です。この記事を執筆している11月の後半時点で、主軸に結果が伴わない状況が多少みられますが、主将の神林勇太、スーパールーキーの佐藤一世ら好調をキープしている選手も多数。原晋監督は「コロナ禍で練習を制限されたことは間違いないが、例年同様の質は維持できている」と話していて、ここぞの箱根で得意とする調整力を発揮してくるのは間違いなさそうです。
駒沢大学は「平成の常勝軍団」から「令和の常勝軍団」となる力を備えています。目を見張るスパートで全日本のアンカー勝負を制し、チームに三大駅伝最多優勝の栄光をもたらした2年生・田澤廉が何区にエントリーされるのか?ライバル校の監督はこの問題の対応を強いられるため、この時点で駒沢は一歩リードしているとも言えます。さらに、2年生の酒井亮太やルーキーの鈴木芽吹ら下級生に勢いがあり、それに刺激される形で元々実力のある上級生も奮起。相乗効果でチーム力は向上の一途を辿っています。
黄金世代が卒業した東海大学は今季、心配される向きもありましたが、したたかに世代交代を成功させています。塩澤稀夕、名取燎太、西田壮志の強力な「3本柱」に加え、地道な努力を実らせている選手が多数存在。前年度のどちらかというと派手な印象だったチームカラーを脱ぎ捨てた東海大学はそのイメージチェンジで優勝が遠ざかるどころか近くなっているかもしれません。
そして、最も勢いのあるチームの1つ、明治大学。山本佑樹監督は今季のチームを「エース不在」と評しますが、前年度の大エース・阿部弘輝の穴を小袖英人、手嶋杏丞、鈴木聖人、加藤大誠の4人が補って余りある成長を見せています。前回大会総合6位のメンバーが8人残っている上に、選手層も豊富。第1回大会から出場している古豪が72年ぶりの栄冠をつかむ可能性は十分にあると言えるでしょう。

もちろん、上記の「4強」だけが優勝に近い訳ではありません。エースの中谷雄飛、太田直希が快走し、目まぐるしく順位が変動した全日本大学駅伝で最も長い区間、先頭をキープした早稲田大学。エースの西山和弥と前回5区区間新の宮下隼人を擁し、「新しい東洋」を旗印にする東洋大学。さらには「世界一あきらめの悪いチーム」帝京大学も高速化に乗り遅れることなく、ポテンシャルの高さを維持しています。

今大会は優勝争いだけでなく、爆発力のあるスーパールーキーにも注目です。箱根駅伝予選会で、あの大迫傑が持っていたU20ハーフマラソン記録を塗り替え、全日本1区で区間新の区間賞という離れ業を立て続けにやってのけた順天堂大学・三浦龍司、5000mのU20日本記録を樹立した中央大学・吉居大和、ロードでは圧倒的な強さを誇る青山学院大学・佐藤一世、全日本4区で区間新の東海大学・石原翔太郎らがどんな走りを見せてくれるのか。一方で、毎年過酷さを増しているシード権争いはどのチームが該当するのか、まったく予想がつきません。優勝候補でさえ、一つの失敗で足元をすくわれる可能性があり、予選会から出場を決めたチームがそのままシード権争いをするといった展開にはなりそうにありません。

最後に、今大会はもう一つ、大きな見どころがあります。
文化放送では、箱根駅伝出場チーム全てに取材をさせていただいていますが、皆さん口をそろえて、こう語ります。
「開催してもらうことに本当に感謝しています」
今回の箱根駅伝を走るランナーはその思いを全身で表現してくれるはずです。残念ながら沿道で声援を送ることはできませんが、今大会ほど応援し甲斐のあるレースは他にないかもしれません。