
なぜ?生まれた直後の子猫がゴンドラに乗って目が見えなくなった!? AI 時代の人間力とは?
様々な社会課題や未来予想に対してイノベーションをキーワードに経営学者・入山章栄さんが色々なジャンルのトップランナーたちとディスカッションする番組・文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」。
2025年6月23日,30日の浜松町Innovation Culture Cafeは、「AI 時代の信頼はどう築くか? AI 時代の人間力とは?」をテーマに、常連さんに株式会社オンギガンツ代表取締役社長の松田雄馬さん、お客様に株式会社ソラコム セールスディレクターの二神敬輔さんをお迎えしました。
入山:今回は 「AI 時代の信頼はどう築くか? AI 時代の人間力とは?」というテーマで話しますが、特にここでは「AI 時代の人間力とは何かに」ついてお話しします。そもそも人間力というのは定義があって「社会を構成し、運営するとともに自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力」ということのようなんですが、松田さんに伺います。人間力って何だと思いますか?
松田:これふわっとした言葉のように言われますが、私自身 AI と対比して「人間の能力というのは何なの?」っていうのを研究しているので、それ研究しないと新しいAI作れないので、人間とは何なのかをすごい大事だなと思ってます。これを語る上で、「ゴンドラ猫ちゃん」のお話をします。これは、1960年代のアメリカの心理学者の猫を使った心理実験で、ケージの中に2匹の子猫を離して片方の猫ちゃんは普通に歩かせ、もう片方はゴンドラに乗せます。その二匹の猫を装置で結んで自分の足で歩く猫ちゃんにゴンドラを引きずらせるんです。そうするとゴンドラ猫ちゃんは、楽チンなんですけど、自分の意思では動けない。自動的に動かされるまま世界を見る。もう一方の猫ちゃんは好きなところに行けるけど、もうゴンドラを引きずらないといけない。生まれたばかりの猫ちゃんを2週間、ここで放し飼いにしました。その後何が起こったか、田ケ原さんわかりますか?
田ケ原:何でしょう?体力がないとかですかね?
松田:実は全然違うんです。目が見えなくなったんです。つまりゴンドラ猫の方が目が見えなくなった。
入山:ええええ!?
松田:皆さんも経験があると思うんですけど、運転免許を取る時に初めて教習所に行き、車を運転した時、わけわかんないじゃないですか。そこで歩行者が歩いてきたとしても気づかない。あれと同じことがゴンドラ猫に起こりました。自分の足で歩いたことがないから、普通だったら自分の足で歩いた経験があれば壁を避けられる。しかし、避けた経験もなければ、歩いた経験もないので避けるとかできないんです。
入山:目って僕の理解では脳の処理じゃないですか?あくまで目って光を通した器官であって、人間って、その中の画像は脳内で再生してるだけ。例えば僕は二神さん、松田さん、たがえみちゃんをみても、僕の脳の中で勝手に考えているものなので、現実を正確に表してるものではない。そういう見るという意志を失った。猫は視覚情報が入っても脳が処理しなくなってるということでしょうか?
松田:そうです。入った光はそのまま抜けてしまうんです。僕らの脳ってよくできていて、大脳があってその下に脳幹という部分があって、その中で目で見たものを使って運動して運動したものをまた目にフィードバックするというフィードバックを何層にも分けてやっているんです。それで大脳が、ようやく意思決定をするということなんですけど、その下の部分、体を動かして脳を動かして、体を動かしてというフィードバックを常にやっておかないと脳って退化していくんです。
入山:松田さん、毎回体が大事って常に言いますけど、まさにそういうことなんですね。二神さん、いかがですか?
二神:私、試行錯誤っていうイメージ持ちました。つまり、やってみて失敗もあるけど、学びもあるから、次に繋がるっていう。僕たちの日常生活とか、もしくは子供の頃からの遊びとか、そういうことの繰り返しで、いろんなことを学んできてんじゃないかなという感覚があるので、今の話なんかそういう結果にもなるのかと思いましたね。
松田:子供が砂場で遊んだ時に砂を体で感じたり平行感覚とか全部そうですけど、体で何かを感じる五感ですよね。ゴンドラ猫ちゃんが物語っているのは結局目の話だけじゃなくて、五感全体が研ぎ澄まされなくなっている。失ってしまっているということなんですね。要するに感覚がなくなると、もはや生きていけないという。
入山:そうすると人間力というのは、結局五感で何かを感じることそのものが、人間力ということでしょうか>
松田:感じて失敗してそれを踏まえてまだ感じてという。それを繰り返していく。二神さんの言葉でいう試行錯誤、僕の言葉で言うと、身体経験で何かを築いてくるということですね。
入山:二神さんいかがですか?
二神:感覚の話というところで、私共鳴があって、私が今日履いてる靴がそういう靴だったんです。いわゆるエアフットフシューズという裸足に近い感覚の靴を履いていて、コンクリートの上を歩いたり、土の歩いたりとか芝生の上を歩いたりとか、今まで履いていた、比較的底が厚い靴だと地面が分からないんです。しかし、こういう底が薄い靴だとそういうのがわかるよねってことで、そこで五感的なものを研ぎ澄まされていくんだなと。
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本日のお客様
松田雄馬さん
大学院修了後、NEC中央研究所に入所。東北大学との脳型コンピュータプロジェクトの立ち上げ、博士号の取得を経て、2017年にオンギガンツの前身となる合同会社アイキュベータを共同設立し、新規技術開発・事業開発を支援。その後、株式会社オンギガンツに社名変更し、技術開発・人材育成・組織開発の三方から、DXに取り組む企業を支援。また、6月24日には「DX格差: AIに仕事を奪われないための5つのスキル」を三省堂から発売。
二神敬輔さん
大学卒業後、外資系コンピューターベンダーやデータ分析ソフトウェアベンダーにて営業職を経験。2013年からはPivotal社にて、ビッグデータ製品の提案やアジャイル開発支援を通じ、さまざまな業界のDX:デジタルトランスフォーメーションを先駆けて推進。 その後、ソラコムでは1000社を超えるパートナー制度の立ち上げを主導。現在はお客様担当営業部門のディレクターとして、製造業界やユーティリティ業界を中心に、IoTを活用したDXの支援に取り組まれている。
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