
宮本亞門が能登での映画撮影に込めた思い。「現実を美化してはいけないが、美しい映画に」
大竹まことがパーソナリティを務める「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送・月曜日~金曜日13時~15時30分)、7月10日の放送に演出家の宮本亞門が出演。自身が企画・脚本・監督を務めたショートフィルム『生きがい IKIGAI』、ドキュメンタリー『能登の声 The Voice of NOTO』(ともに7月11日から公開)について語った。
大竹まこと「今回は『生きがい IKIGAI』というショートフィルムを宮本亞門さんがお撮りになって。能登を題材にしたお話です。もう1つドキュメンタリーがあるんですね」
宮本亞門「はい。『能登の声 The Voice of NOTO』といいます。それを映画館で同時上映すると。じつはショートフィルムを撮った、というのが先で。やはり劇場でドキュメンタリーも入れたほうが、能登の現状がわかるんじゃないか、ということで。夏ごろ、ボランティアで行ったんですよ。そうしたら急に怒られて。『亞門さんはそんなに荷物を運ばなくていい』『あなたはこの状況を伝えてくれ』と。すみません、僕、舞台の演出家なのでできないんですけど……と言って。そうしたら数週間後に土砂災害が起きて」
大竹「ああっ!」
宮本「あの人たちどうなったんだろう、と電話して『大丈夫ですか』と。『もう映画なんて撮らないほうがいい、僕は映画の人間ではないのでお大事に』と言ったら『私たちは前に進みますけど、亞門さんは進まないんですか?』と。諦めちゃいけない、自分は映画監督ではないけどできることをしよう、と思って。約1ヶ月半、いっぺんにキャスト、スタッフを集め、家が解体される前、この景色の状況を、絶対にセットを使わずに上映しよう、と。12月の頭に鹿賀丈史さん、常盤貴子さん、津田寛治さん、みんなプロデューサーが『どうですか』と言ったら『やります』と。そういう企画があるなら、とボランティア精神で参加していただけた映画、という感じです」
大竹「少し混乱した現場ですよね。近くで家の解体も、という」
宮本「壊れた家の中で撮影しているので、スタッフも僕もヘルメットをかぶったまま。マネージャーの方も役者さんのヘルメットを持って、余震が起きたら……、という状況の中です」
大竹「現地の人たちは快く(迎えてくれた)」
宮本「東京でそういう話があって、1回目は実際、あるプロデューサーに声をかけて、まず現地に行ってみよう、と。『絶対に映画を撮るべきではない』と言われたんですね。地元の人を混乱させる、と。それでなくなったんですけど、違うプロデューサーが現れて、そういう内容なら、ラブストーリーを撮るわけではないし、本当に地元の方の気持ちと心を伝えたいなら、やるべきだ、と。行ったら地元の人の歓迎が尋常じゃないんです。想像と正反対だった。映画の中で体育館のシーンがあって。実際に避難所で40人ぐらいの方が住んでいらっしゃるんですけど」
大竹「はい」
宮本「静かに、静かに、と音を立てずにやっているけど、興味があって『参加させてください』『私たちにできることがあったら』と。差し入れを持ってきてくれるわ、皆さんも家がなくなるなどしているけど、いま自分ができることをやらせてほしい、能登を忘れないでほしい、と。忘れ去られるのがいちばんイヤだと。私たちも日々、生きていたいし、というところを書いた熱い思いをいただいて、映画をつくれた、という感じです」
はるな愛「私も先週、能登にお邪魔しています。皆さん、来てほしい、忘れてほしくない、という気持ちがすごくあって。あの景色は(復興が)まだまだだった。どう撮ろうと思うんですか? ここを見てほしい、というところ」
宮本「現実を美化してはいけない、と思っていて。だけど美しい映画にはしたいんですよ。日本の原風景が残っている景色はすごく美しいじゃないですか。だけど家々が壊れているものは現実として見ていただいて。その中で何を考えていたか、という。この映画の中のセリフはほとんど地元の人だったり、ニュースで言っているコメントだったりを集めて話をつくりました。東京にいてわかったフリして言葉をつくったら失礼だと思ったので」
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