
石破茂首相は続投か否か。2000年の「加藤の乱」を例に解説
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日15時30分~17時、火~金曜日15時30分~17時35分)、8月14日の放送にノンフィクション作家の常井健一が出演。辞任か続投か話題の石破茂首相の今後について、過去の事例も踏まえて解説した。
常井健一「先週(8月8日)の両院総会があって。総裁選を今すぐ行う、と決まったわけではなく。あくまで総裁選実施の賛否を全国に確認したいから、その手法をお盆明けに検討します、といった段階なんですね。一方でマスコミの解釈が非常に割れている状態で。読売新聞は『首相に退陣圧力強まる』、朝日新聞は『問題長期化』と。もう末期だ、という新聞と延命だ、と書いてある新聞が真っ二つになっている。自民党の中も解釈がバラバラで」
長野「はい」
常井「反石破勢力には、まるでクーデターが成功して、してやったりと興奮気味に話す人もいるんですけど、それも実態と異なるなと。自民党の内部を探ってみると石破さんは当日の流れを知っていて、針のムシロ状態になると覚悟したうえで耐え忍んだ2時間だったんですね。寝耳に水、ということはなかったんだなと。私、反主流派は石破さんに充分な猶予期間を与えてしまった、と見ていまして。総裁選の実施の賛否を問うにしてもお盆明けのスタートですから、実施までは先のことです。このモラトリアム期間は石破続投に有利に働くんじゃないかな、と」
長野「ええ、ええ」
常井「なぜなら永田町の歴史でトップを引きずり落とすときって、ハチの一刺しで決めなければだいたい失敗するんですよ。今回みたいに倒閣派が決め手を欠く場合は対決ムードが日に日にしぼんで、現状維持に働くことが多いんですね。そもそも世論調査を見ても、続投支持が多いと反主流派は賊軍ですから、反乱軍は潰される、というのが永田町の宿命であって。そこできょう紹介したいのが、加藤紘一さんという昔の政治家が、森喜朗総裁を下ろそうとした『加藤の乱』なんです」
長野「懐かしいですね」
常井「長野さんも現場で取材されていたと思います。加藤さんは『森内閣を倒す』と宣言して1週間、テレビとネットを駆使して国民に語りかける手法をとりました。これから大きなドラマが始まりますと切り出して。事務所に毎日、800件以上のメールが来るようになって。ホームページのサーバーもダウンした。時には携帯電話を掲げて『5秒後に菅直人とつながります』と。他党の人気者ともつながっているよ、とアピールしたんですね」
鈴木敏夫(文化放送解説委員)「2000年の段階でそんなバズり戦法を考えていた」
常井「25年前にしてテレビ、ネット、携帯といったIT技術を駆使して無党派層を巻き込んでいく。いわば劇場型政治を、小泉純一郎さんの半年前に先取りしていたような話なんです」
長野「加藤紘一さんといえば首相の座にいちばん近い男という感じで、幹事長もしていて、存在感がすごかったですよね」
常井「待っていれば小渕さん、森さんと来て次なんじゃないか、といわれた人で。それでも失敗した理由は、先ほど話したモラトリアム期間なんです。長期戦では昭和の政治家のほうが1枚上手だった、というところで。あのとき加藤さんは野党の不信任案に賛成して民主党との連立政権をつくる計画をしていた。1週間で大旋風は演出できて、肝心の森さんにとどめを刺すXデーを週明けにセットしてしまった」
長野「ほう」
常井「当時、加藤さんは週末を使って仲間を固めようという発想でした。ただやはり当時の野中広務幹事長を中心とする百戦錬磨の執行部は金土日の間に加藤派の切り崩し工作を徹底的に行なった。結局、加藤さんは自分の派閥もまとめきれず森下ろしに失敗したどころか徹底的に干されて。総理になる芽も摘まれてしまった、ということです」
「長野智子アップデート」は毎週月曜~金曜の午後3時30分~5時、文化放送(FM91.6MHz、 AM1134kHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
※タイムフリーは1週間限定コンテンツです。
※他エリアの放送を聴くにはプレミアム会員になる必要があります。
関連記事
この記事の番組情報
