暗黙知を形式知に~匠の技をデータで落とし込む~

暗黙知を形式知に~匠の技をデータで落とし込む~

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様々な社会課題や未来予想に対してイノベーションをキーワードに経営学者・入山章栄さんが色々なジャンルのトップランナーたちとディスカッションする番組・文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」。

2025年9月15日,22日の浜松町Innovation Culture Cafeは、『暗黙知を形式知に~匠の技をデータで落とし込む~』をテーマに常連さんに株式会社GRAの岩佐大輝さんと、株式会社ソラコムの高見悠介さんをお迎えしました。

入山:ここからは「暗黙地を形式知に~匠の技でデータに落とし込む~」というテーマでお話します。まずは、生産(作るところ)の暗黙知と形式地についてお話しますが、岩佐さんに改めて農業で現場作業における、いろんな言語化されていないもの課題について教えてください。

岩佐:例えば、苗の状況を把握する時に農家の方っていうのは草勢(苗の姿)が、「こうだと調子良いぞ」ってなるんです。我々にしてみれば意味が分からないんです。それって肥料の濃さや光合成の調整も、判断がつかいんですよ。実際に、なんでそういう状況になっているのかって言うと、 CO2がどれくらいあって光合成がどれくらい行われていて、それで日射量はどのぐらいあるかっていうのは、結局はそのバックグラウンドにあるわけなんですけど、それを紐解かないと匠が「いい形だべ」って言って終わりなんです

入山:つまり全体感なんですね。匠は分かるけどっていう。

岩佐:そう、全体感です。事業として規模を拡大する時に、すべての時間に匠がいるとは限らないです。となると、ある程度の再現性が無いといけない。農業の難しい点は、品質のバラつきなんです。

入山:岩佐さんのところも色々なデータを取られているんですか。

岩佐:かなりのデータを取っているので、それこそ秒単位で地中や土の中の環境を定量的にとっているから、今イチゴがどういう環境かリアルタイムに把握しています。今までは、匠が午前3時ころに来て、咥えタバコに缶コーヒー飲みながら、ハウスの窓を開け閉めするんです。朝は4時・5時になると急に太陽がが出て急に光合成が始まります。ハウスの窓が閉まっているとあっという間にCO2が不足します。そうすると、朝の一番いい時間に光合成ができない…というのが今まで分からなかったんです。昔は、何故か「早起きする農家は良いイチゴが取れるれる」って言われてたんですよ。でもそれって、よくよく聞いて調べていくと、早起きして窓を開ける⇒換気する。そうすると光合成が最大化してるっていうのが分かるわけです。そういったものも結構細かく、細かくデータを取っていくと、イチゴがどれだけの量が取れるかとか、糖度がどれくらいかってのを合わせていくと、少しずつわかっていくと。だけど、難しいのはリードタイムが長いんです。イチゴって苗を植えて収穫まで大体20ヶ月ぐらいかかるんです。

田ケ原:ええ!

入山:そんなかかるんですか!

岩佐: PDCAサイクルを回して、改善するとなると20ヶ月ぐらいかかる。だからちゃんとデータを取らないと、20ヶ月の作業が次の年に生かされないみたいなことになっていくわけですよ。それが大課題ですね。

入山:なるほど。高見さんどうですか、今のお話。

高見:なんか興味深いなと思ったのは、私もカメラ(ソラカメ)をやっているんですが、百聞は一見如かずというか、匠は様子から判断するっていうお話で、それをデータで形式知化していくには、それは何点ぐらい項目化していく必要があるんでしょうか?

岩佐:これは数百レベルです。葉っぱの数、色、茎の太さに至るまで、ものすごい量のデータを取るんです。自動で取れるものは楽なんです、センシングできるものは。でも、どうしてもできないものがあるんですよね。なんかそういう茎の太さ測ったりとか、割と難しくて、そういうのが未だに大変なんです。

入山:茎の太さの計測、ソラカメでは、どうですか?

高見:ぜひぜひ!実はとある県のいちごの農協試験場でもソラカメを使っているんですけども。ただそれは生育までは、行ってないんですけれども、どのぐらい成長しているかの?モニタリングまではカメラの映像でジャッジしています。

岩佐:ソラカメすごいですね。

高見:今農業のお話だったんですけれども、似たようなお話が、スーパーでもあって。スーパーでどれぐらい在庫があるかみたいなところってカメラでできますよというお話があるんですけど、できないこともあって。何かって言うと、新しい暗黙値を発見するのは、やはりまだまだ IT だと難しいかなと。

入山:それはどういうことですか?

高見:例えば、本部が「こういう風に陳列してください」という指示に対して、それが正解があって、それと差分がどうかっていうのは ITでは取れるんです。ただ、難しいのは、「何にお客さんが興味を持っているか?」っていうのを調べるために、2時間ぐらいお客さんの動きをモニターで見てる人がいるんです。

入山:スーパーの現場では、個人情報などに気をつけながら、どういう購買行動か2時間見続けてる人がいると。

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本日のお客様
高見悠介さん
大学卒業後、日系システムインテグレーターに入社。公共向けのプロジェクトを担当後、海外事業に異動され、ヨーロッパ、アジア向けのクラウド・IoT関連プロジェクトを推進。その後、インドネシアや香港での新規事業開発を経て、2021年よりソラコムに参画。ソラコムの中でも、新基軸となるクラウド型カメラサービス「ソラカメ」や、IoTシステムの自動化を身近にする「SORACOM Flux(ソラコム フラックス)」といったソリューション事業を事業責任者としてリード。「答えはいつもお客様の中にある」をモットーに、真のニーズを見極めるべく、自ら現場を駆け回る。

岩佐大輝さん
大学在学中に起業された岩佐さんは、その後東日本大震災で大きな被害を受けた故郷の復興を目的にGRAを設立。「IT×農業」でイチゴビジネスに構造変革を起こし、ひと粒1000円の「ミガキイチゴ」を生み出す。そうした取り組みが評価され、数々の賞を受賞。さらに、小学6年生用の理科の教科書で紹介された他、多数のメディアから注目を集める。2014年より新規就農者支援事業をスタート。国内の農業の担い手を育成し、後継者不在問題の解決に尽力。趣味はサーフィンとキックボクシング。


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