
学生三大駅伝開幕戦「出雲駅伝」徹底解説 史上稀に見る混戦を制するのは?
スピードの“出雲”、伊勢路を舞台に大学日本一を決める“全日本”、そしてクライマックスの“箱根”。文化放送では、今年も「学生三大駅伝」をすべて実況生中継!
文化放送では「学生三大駅伝」の幕開けとなる第37回出雲駅伝を10月13日(月・祝)午後1時より、解説に大志田秀次さん(明治大学体育会競走部駅伝監督)をお招きし、実況・斉藤一美アナウンサーでお送りします。
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今大会のみどころを徹底解説します。
東京世界陸上の熱狂も冷めやらぬうちに、大学駅伝の季節が到来。10月13日の出雲駅伝で幕を上げる。
出雲駅伝には22チームが参加。6区間45.1kmと、大学三大駅伝(出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝)で最も距離が短く、長丁場の他の2つの駅伝とは明らかに各校の戦法は変わってくる。
スピード駅伝とはいえ、どの大学も夏は相当走り込んでおり、トラックレースのデータ通りにはいかないのもこの駅伝の特徴だ。
とはいえ、9月下旬の各競技会では箱根駅伝のシード校(すなわち関東勢)の順調な仕上がりぶりが窺えた。優勝候補には6校も7校も名前が挙がるが、その実力は伯仲していると見ていい。
今年の箱根駅伝を制した青山学院大は、例年同様に9月24日の絆記録挑戦会の5000mで戦力の充実ぶりを見せつけた。チームトップだった黒田朝日(4年)の13分34秒01を筆頭に、なんと11人が13分台をマーク。さらに、9月27日のU20日本選手権でも、出雲メンバー外の5人が13分台で走った。出雲のエントリーメンバーで14分かかった選手もいたものの、概ね順調に夏を送った証だろう。
昨季まで主力を担った選手たちが卒業し出雲経験者は3人しかいないが、例年同様に選手層は厚く、大黒柱の黒田朝日も健在だ。折田壮太や小河原陽琉ら2年生が爆発力ある走りを見せれば、7年ぶりの優勝が見えてくる。

選手層の厚さでは中央大も負けてはいない。吉居駿恭(4年)、本間颯(3年)、溜池一太(4年)の3人が10000m27分台を持ち、今年7月の日本選手権では7選手が5000mに出場し、そのうち岡田開成(2年)が決勝進出を果たした。5月の全日本大学駅伝関東選考会でも他を圧倒しトップ通過しており、トラックの実績、タイムでは群を抜く。さらには、濵口大和と三宅悠斗、2人のルーキーも即戦力として存在感を示している。
今夏は例年以上に距離を踏み、泥臭い練習に取り組んだ。その影響もあって、藤原正和駅伝監督は「出雲は苦戦するかもしれない」と夏に話していた。だが、実際には、夏が明けて9月28日のThe Road of WASEDAではロード5kmで好記録が続出。岡田が13分41秒で全体1位を勝ち取ったのをはじめ、5人が13分50秒切りした。出雲は2年ぶりの出場だが、トラックの記録通りに力を発揮すれば、初優勝は近づく。

“個”が際立つのが早稲田大だ。駅伝主将の山口智規(4年)が名実ともに大黒柱で、6月の日本インカレでは日本人初となる1500mと5000mの二冠。さらに、日本選手権は1500mで2位となった。今年の箱根駅伝でその名が一気に知れ渡った“山の名探偵”こと工藤慎作は、ハーフマラソン日本人学生歴代2位の60分06秒を持つロードのエース。7月のワールドユニバーシティゲームズではハーフで学生世界一に輝いた。2年の山口竣平も一段成長した姿を見せている。さらに、佐々木哲と鈴木琉胤、2人のスーパールーキーが入学早々に存在感を示している。佐々木は3000m障害でアジア選手権に出場し、鈴木は5000mで早くも学生トップの活躍を見せる。要所を担う選手が揃っており、15年ぶりの優勝を視界に捉えている。

前回王者の國學院大は、新チームになってすぐ2月の宮古島大学駅伝で連覇を果たし、3月のEXPO EKIDENでは学生トップの3位となり、駅伝で力を発揮している。
昨年までエースだった平林清澄(現・ロジスティード)、山本歩夢(現・旭化成)が抜けた穴は大きいが、2月の日本学生ハーフマラソン選手権で60分台をマークした上原琉翔(4年)、青木瑠郁(4年)、辻原輝(3年)、野中恒亨(3年)が四本柱を形成し、総合力でカバーする。主将の上原はワールドユニバーシティゲームズのハーフマラソンで銅メダルに輝き、青木は6月のホクレン・ディスタンスチャレンジ深川大会で5000mの國學院大記録となる13分30秒42をマークするなど彼らの活躍が目立った。
この夏は相当走り込んだという。昨年同様に夏合宿明けの記録会等に出場していないため現況が測れないが、エントリーメンバーを見る限り、抜かりないオーダーを組んできそうだ。

昨年度の学生三大駅伝で全て2位だった駒澤大は、大エースの佐藤圭汰(3年)がエントリーメンバーから外れており、少し気掛かりだ。
もっとも昨年も佐藤は右恥骨を痛めた影響で出雲は欠場。それでもチームは奮起し終盤まで優勝争いを繰り広げた。そのメンバーのうち、今季も在籍する桑田駿介(2年)、帰山侑大(4年)、山川拓馬(4年)、伊藤蒼唯(4年)、島子公佑(3年)の5人がしっかりとエントリーされた。箱根3区6位と好走した谷中晴(2年)や、9月27日の東海大競技会で13分52秒85の自己ベストをマークした安原海晴(3年)も6人のメンバーを争う。ベストな布陣で臨めずとも、底力を示すに違いない。

昨今の大学駅伝界で着実に存在感が大きくなってきたのが創価大だ。箱根で6年連続シード権を獲得しており、出雲駅伝でも常連校になりつつある。
今季は留学生のスティーブン・ムチーニ(3年)が好調だ。関東インカレ(2部)では5000mと10000mの二冠。さらに7月の函館ハーフマラソンでは1時間1分08秒の大会新記録で優勝している。日本人では小池莉希(3年)にブレイクの予感が漂う。積極的なレースが持ち味の選手で、日本選手権では5000mで見事に決勝に駒を進めた。その他にも、ロングに強い野沢悠真(4年)や山口翔輝(2年)、3000m障害で実績のある黒木陽向(4年)、主力を担う石丸惇那(4年)・修那(2年)兄弟と、なかなかタレント揃いだ。ムチーニで先頭に立てば、首位を守り切る力はある。

今季の戦力図は“6強”という声も多いが、そこに割って入りそうなのが帝京大だ。今や高校生でも5000m13分台の選手は珍しくなくなったが、帝京大で高校時代に13分台をマークした選手は歴代でも楠岡由浩(3年)だけ。その楠岡は、1年時は苦戦したものの、順調に力を付け今やエース格となった。さらに、大学に入って地道に力を磨いた選手たちが、他校の主力と渡り合っている。The Road of WASEDAでは、ロード5kmでなんと10人が13分台をマークした。総合力は昨季以上だろう。必要なのは爆発力。ハーフで60分56秒の帝京大記録を持つ島田晃希(4年)や楠岡、小林咲冴(2年)らが、さらに一皮むけた活躍を見せれば、一気にレースの主役になる可能性もある。3月のEXPO EKIDEN 2025では青山学院大にも勝利し大学2番手の4位に入っており、今季の駅伝シーズン、台風の目になっても不思議ではない。

ここまでに7校を挙げたが、斎藤将也(4年)、ヴィクターキムタイ(4年)を擁する城西大も力はある。だが、箱根駅伝9区区間賞の桜井優我(4年)や主将の山中達貴(4年)がエントリーメンバー外なのが痛手だった。
東洋大は、全日本大学駅伝の切符を逃しただけに、出雲には全力で臨んでくるだろう。松井海斗をはじめ、内堀勇、迎暖人、宮崎優ら2年生が充実している。しかし、実績のある岸本遼太郎(4年)と西村真周(4年)が出雲はエントリー外となり、ベストな布陣とはならなかった。
東京国際大は、主将の菅野裕二郎(4年)や小柴裕士郎(2年)がThe Road of WASEDAで好走した。選手層は他校に比べると物足りなく映るが、大エース、リチャード・エティーリ(3年)を擁する。エース力で好位置に付けたいところだ。
なかなか予測が難しいのが出雲駅伝。蓋を開けてみれば、独走もあれば終盤まで勝負がもつれる可能性も十分にある。いずれにせよ、距離が短いスピード駅伝だけに、1つのミスが命取りになりかねない。勝利を手にするには、ミスなくタスキをつなぐのは大前提だ。その上で、チームを勢い付けるエースの存在が勝敗の鍵を握るだろう。
最後まで耳を離せないスリリングなレースが展開されそうだ。
TEXT&PHOTO:和田悟志

◆『オレは摂取す』 Presents 第37回出雲全日本大学選抜駅伝競走実況中継◆
2025年10月13日(月・スポーツの日) 13:00~15:30
解説:大志田秀次(明治大学体育会競走部駅伝監督)
実況:斉藤一美アナウンサー(文化放送)
◆聴き方いろいろ◆地上波FM91.6/AM1134 radiko インターネットラジオ
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この記事の番組情報

『オレは摂取す』Presents 第37回出雲全日本大学選抜駅伝競走実況中継
10月13日(月・祝) 13:00〜15:30
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