
『ニーズ』とは『不安の化身』。勅使川原真衣が改めて問う『ニーズ』の意味
フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄ラジオマガジン」(文化放送)。10月15日(水)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、水曜レギュラーの組織開発コンサルタント・勅使川原真衣が世の中にはびこる『ニーズ』という言葉 について考察した。
勅使川原麻衣「今日は『正解至上史上主義社会における子育て』って、ちょっと厳めしいタイトルになってしまってるんですけど、『ニーズがあるから』っていう言い方よくしませんか? 『ニーズがあって、ニーズに答えて何が悪い』って話があるんですけど、『それって本当に正義なの?』っていうところをお話ししたいと思ってます。これ、きっかけがありまして、ちょうど先週の『ラジマガ』放送後、3時ぐらいに横浜市立の小学校に通っているうちの下の子供が帰ってきました。で、私に『学校でもらったよ』って渡してきた手紙があるんですね。今日ここにお持ちしてるんですけども、そこに大きく『佐藤ママ講演会in横浜』と書かれているんです」
武田砂鉄「佐藤ママ講演会in横浜?」
勅使川原「そうなんですよ。皆さん多分ご存じだと思うんですけども、一応佐藤ママこと佐藤亮子さんとおっしゃいます。ちょっとご紹介したいと思うんですけども、全国各地で講演活動他、『決定版・受験は母親が9割』という本を朝日新聞出版から出版されていると」
武田「『受験は母親が9割』……残り1割は何なんだろうね?」
勅使川原「そうなんですよ。プロフィールには『3男1女全員が東京大学理科三類に合格。子育て方法が話題』という風にご自身で書いていらっしゃるわけなんです。結構珍しくないですか? 子供のことがご自身の実績であると。さらによくよく読むと、主催は朝日新聞社で後援がポイントでして、横浜市教育委員会なんですよね。私よく知ってるわけじゃないんですけど、佐藤ママさんと教育委員会が並んでいる姿を見るとですね、ちょっと違和感があったんです。教育委員会が後援するとなると、公共性の高い内容をお話しされるのかな? っていうのが気になってしまうので、その旨を私がクローズドでやってるSNSにちょっと書いたんですね。そしたら主には『分かる!』という反応が多かったんです。横浜市の小学校の先生も友人の中にいて『いやこれ僕も配ったんだけど、ちょっと躊躇したんだよね』みたいな話をしてくださったりもしたんですが、一方で後から出てきたのが『ニーズがあるから』と。『この人の集客力知らないんですか、テシーさん』みたいな意見も結構いただきました。そこで考えたくなったのが先週『ワークライフバランス』っていう外来語について考えましたけど、今日は『ニーズ』って言葉なんですよね。『ニーズがあるからいいじゃない』『ニーズに応えて何が悪いの?』って言うんですけど、『ニーズ』って何ですか?」
武田「『需要がある』、『必要性がある』とか、そういうことですかね?」
勅使川原「そうですよね。日本語訳はその通りだと思うんですけども、その必要性とか欲求って、自然発生してるんですかね? 私は社会が構築してるんじゃないかと思うんですよ。『ニーズ』って言うとなんかもう、フラットに状況を把握して、割とクリーンな印象すらあるかも知れないんですけども、『いやいやいや、これがないと困りますよ』とか『豊かに生きられませんよ』、『一旦道を外すと大変ですよ』『中学受験した方がいいですよ』とかね、いろんな脅迫観念との親和性が『ニーズ』って意外と高いんですよね。『不安』は売れます。これ自分も能力開発業界にいて思ったことですけど」
武田「能力開発業界ね」
勅使川原「あんまり言いたくなかったんですが(笑)」
武田「何度繰り返しても怪しい業界ですけど(笑)」
勅使川原「言えば言うほどそう。不安は売れるし、『ニーズ』ってその意味では不安の化身なんですよね。『ニーズ=不安』と言ってもいいと思います。ちょっと話逸れるんですけど、かつて匂いを消すために売られたのって、消臭剤とか芳香剤だった記憶ありません?」
武田「そうですね」
勅使川原「ねえ。だけど、ある時……1999年の3月らしいんですけども、『いやいや、布に染み付いた匂いが部屋の匂いを悪くしてる』っていう、ある消臭剤メーカーのキャンペーンがあったんですよね。それによって今は消臭剤というよりも、布にシュシュッとしませんか? そういう感じでやっぱし『ニーズ』って、その場にフォワッと浮いてたものじゃなくて、人が作れるんですよね。特に何か売りたい時に作れるものなので、『ニーズ』って聞くと脊髄反射的に『ニーズは必ずしも正義かどうかわからないぞ』という風に私は思ってます。なので絶対視する前に一回相対化する。『これは一体、誰がニーズって言ってるんだろうか?』とか『どんな不安を煽られてしまったんだろうか?』とか、そういうことを自問自答してもいいかなという風に思っています」
この後も、勅使川原さんによる『ニーズ』への鋭い考察が続いた。気になる方は、radikoのタイムフリーでご確認ください!
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