木村草太「藤井竜王の8六歩」
「第75回NHK杯将棋トーナメント」の2回戦で、藤井聡太竜王が、過去11回の優勝を誇る羽生善治九段を下した。10月28日の「武田砂鉄ラジオマガジン(文化放送)」では、憲法学者で自身も将棋を指す木村草太が藤井竜王の一手について語った。
木村「今日取り上げるのは日曜日に行われたNHK杯の羽生・藤井戦で出た藤井竜王の8六歩という手。手の意味としては完全な一手パス。将棋というのはルール上、一手パスすることはできなくて必ず何かやらなきゃいけない。工夫して全く自分の陣形は動かさずに相手に手を渡すっていうことをやった手なんですけど、普通これは悪い手なんですよ。ボードゲームやあらゆるスポーツでもそうだと思うんですけど、とにかく相手より1つでも多くアクションをして、それによって得点を取ったり、勝ちに結びつけるというのが基本的なゲームの進め方ですよね。ですので一手パスというのは何もしないということなので普通は良くないことなんです。ところが藤井竜王の場合は相手に手を渡すことによって相手が動かさざるを得なくなって出来た隙に手を進めていく。そういうやり方だったんですね。解説されていた谷川浩司十七世名人もですね『一手パスの手が最善になる将棋とは奥深いものですね』と、ちょっと引き気味に笑っていたのが印象的でした」
砂鉄「一手パスってどういうことですか?」
木村「取って返されるだけの歩を指して、飛車で取って、歩を指して、飛車が元の場所に戻るという手でした。これから連想したのは『何かしたい』と焦燥に駆られる時でも、こっちの陣形が飽和して、きちんと陣形が組み上がっている時には状況によって何かをすることによって返って悪くなることがある。それは世の中の事情にも重なるなと思いましたね」
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