様々な場面で言い訳のように使われる「必要悪」。これって必要ですか!?
フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄ラジオマガジン」(文化放送)。10月29日(水)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、水曜前半レギュラーの組織開発コンサルタント・勅使川原真衣が、社会にはびこる「必要悪」という言葉 の問題点や改善方法について語った。
勅使川原真衣「今日は『必要悪』という言葉について考えます。必要悪って聞きますか?」
武田砂鉄「必要悪? 必要悪ってなんか色んな言い訳に使われてそうな気がしますが」
勅使川原「やっぱり開き直りに近いところがありますね。最近のもので言うとまず裏金。『裏金は必要悪と開き直る政界の闇』っていう記事が東京新聞に出てたりとか、あとは企業で言うと転勤。これ『自分転勤に行きたいです!』って人あんまりいなくて、だけど誰かが行かなきゃいけないとなると『必要悪の転勤』って結構言われたりします。まあ、変わる兆しもあるんですけども。あとは体罰。特にスポーツ界の体罰なんかは『強豪校になるためには必要悪として厳しい指導が必要だ』という言われ方をしたりもします」
武田「なんかあれですよね、『それ良くないよ』って言った時に『いや、でもこういう業界はさ~、昔からこういうことになってるから、そういうのあなたの正義で言うと確かにそうかも知れないけど、正論はわかるが政治家の世界ではこうだし、スポーツの世界ではこうなんだから』みたいな感じの匂い、ありますよね」
勅使川原「ありますね。慣習を是正する気がない時、是正し難い時に使うんだと思うんですけども。あともうひとつだけ言うと精神科病院の虐待事件。これもう1984年とかですかね、宇都宮病院事件から連綿と続いていますが、 やっぱりなくならないということを日本精神科病院協会、通称日精協って言うんですけど、山崎學学部会長っていう首領(ドン)がいらっしゃるんですよ。首領ご自身が『あんた出来んの?体を拘束して何が悪いの?』って、東京新聞やNHKなど各メディアに出演されて『必要悪だ』っておっしゃってるんですよ。この必要悪論、しばしば原爆とか核兵器なんかにも使われるので、とても同意しかねるんですけども、先ほど申し上げた通りなかなか根絶が難しいんです。しかも先ほどの山崎学部会長じゃないですけども『じゃああんた裏金なくてどうやって政治するの?』とか『身体拘束しないでどうやって身を守るの?』とか、『あんた出来んの?』って言われると二の句が告げない。この辺も問題だなと思います」
武田「色んなジャンルで今『だったらお前がやってみろよ!』 みたいなことって言われることがあって。とりわけ『この発言どうかと思いますよ』みたいなことを政治家の発言に対して言うと『じゃあお前が政治家やってみろよ!』みたいな(笑)。『いや別にこっちは目指してるんじゃないから』って思うんですけど、なんかそれが機能させたくはないんだけど、機能しちゃってる一面はありますよね」
勅使川原「ただの詭弁なんですけどね。そもそも必要悪、ちょっと振り返ってみると語源的には色々あるみたいですが、『キリスト教の原罪とかから来てるよ』って意見もあれば、『古代ギリシャが』とかいう方もいて『諸説ある』っていう感じなんです。で、広まったのはやっぱり16世紀や17世紀の戦争に関して『国家のための必要悪』という言説だったという風に言われてます。19世紀になると功利主義時代っていうんですかね、ある悪を許容することでより大きな善を得るという計算倫理というみたいですが、その文脈で『不正義は根絶するんじゃなくって許容する範囲もあるでしょ』という言われ方をし始めたと。日本でも諸説あるみたいで夏目漱石さんが『社会的妥協としての悪』と表現したとも言われてますが、やっぱり戦後ですね。『日本で政治資金とか、厳しすぎる組織の管理体制などに対して批判管理とか、統治側の体制維持の逃げ向上として使われた』と。それが今に至るってところだと思うんですけども、整理すると道理的とか法的には悪だけども、ある立場からすると一定の必要性がある。そして根絶が難しい場合を指して必要悪と呼ぶようですが、どうですか?」
武田「今なんかこう、真っ直ぐ正義とか正義感みたいなことを言うと『いやいやお前、そんな真っ直ぐ言われてもね。そんなに100%クリアなことってないですよ』みたいな。そのまっすぐ正義じゃない、淀んでる部分とか汚れてる部分みたいなものを割とパクッと食べて隠すみたいなことが、ともすれば生きる上でのたしなみみたいなことになってる感じの気持ち悪さっていうのがあるし、でもそれこそ例えば戦争なんかでも『尊い犠牲』みたいな言われ方ってあるじゃないですか。平和を作り出すためにはある程度の犠牲が必要なんだとか、そういう人たちがいたからこそ今の平和があるんだ、みたいな言われ方って、もちろんそれも一理はあるとは思うんですけど、そういうことを繰り返していると、この必要悪みたいなものが色んなところで顔を出してしまうんじゃないかなと」
この後も、勅使川原さんがこの必要悪という言葉をなるべく使わないようにするための方法などについて語りました。気になる方はRadikoのタイムフリーでご確認ください。
「武田砂鉄 ラジオマガジン」は月曜~木曜 8:00~11:30、文化放送(FM91.6MHz、AM1134kHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
※タイムフリーは1週間限定コンテンツです。
※他エリアの放送を聴くにはプレミアム会員になる必要があります。
関連記事
この記事の番組情報