引っ越したら選挙権がなくなった!?武田砂鉄と弁護士が係争中の裁判を深掘り
フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝のラジオ番組、『武田砂鉄ラジオマガジン』。2月16日は、弁護士の三輪記子氏が係争中の国家賠償請求事件について解説した。
三輪「今日は、2回の引越しで投票が不可能になってしまった、ということについて司法修習生が違憲だとして国を訴えている事件についてお話したいと思います」
武田「はい」
三輪「新聞とかでご覧になった方もたくさんいると思うんですけれども、能町みね子さんも実は今回の選挙で同じことになったとつぶやいていたんですね。2月の5日に能町さんが『なんと今回私の選挙権がないことが判明した。ない、とかあるの。びっくりした。わけわからない。そんなことあんの。同じ内容がちょうど最近記事になっていてさらにびっくりした。』とつぶやいていたんです。2日前の土曜日にイベントでご一緒して、そのイベントでも話そうと思ったんですけど話せなかったので、今日に持ち越したんです。もう報道でご存知の方もいらっしゃると思いますが、今、司法修習をやっている井上さんという方が、投票ができなかった去年の参議院議員選挙について、投票ができない制度にしていることは国が制度を作ることを怠ったからで、それによって自分は投票できなくて傷ついたので慰謝料を払ってくださいという訴訟をやっているという事案です。これは『CALL4』というサイトに公共訴訟として資料が全部上がっているので、全部プリントアウトして事件記録のように綴って持ってきました。まずは訴状について詳しく見て行きたいと思います。なんでこういうことになってるかの説明を、ちょっと抜粋していきますと、『公職選挙法は、選挙の公示・告示の前日までの4か月間に市町村をまたぐ転居を複数回した人の多くについて、その選挙権行使を否定する』構造になっています。国政選挙と地方選挙は、もちろん投票できる人の範囲が違いますよね。なのですが、国政選挙において、国内あるいは国外であっても同じだと思うんですけれども、偶然その直前に転居を繰り返しただけで選挙権が行使できない、それは全くそれをしてもよいという理由は見当たりませんよね、と。分かりますよね」
武田「そうね、うん。だって同じ国にいるわけですからね」
三輪「そうなんですよ。選挙権が失われる、例えば選挙犯罪人とかでない限り投票できないのはおかしいんじゃないんですかと。ましてや参議院議員の比例代表選挙は全国を一つの選挙区として投票が行われているから、国内、国外であったとしても、引っ越ししただけで投票できないのはとても不合理だよねっていうことが書いてあるんですよ」
武田「そもそもの前提として、例えば港区に住んでた人が千代田区に引っ越します。引っ越した途端に千代田区で区長選挙がありますよ、ということになると、これはすぐにはさすがにできないわけですよね」
三輪「そこが地方選挙と国政選挙の違いなんですけれども、これについても結構詳しく訴状に書いてあるんです。例えば、いろんな例外があって、都知事選が行われるとき東京都内で引っ越した人の選挙権を奪うことって妥当じゃないですよね」
武田「そうですよね。都内で引っ越しているわけですからね」
三輪「こういうパターンの場合には投票権があったりするんですよ。投票権のあるなしは結構複雑になってはいるものの、現状の公職選挙法上では、投票権がある人の名簿を調整するために、3か月未満の転居を繰り返すと、どこの名簿にも名前が無いということが生じてしまうんですよ。じゃあ国側は、この状況を全く認識してなかったのかっていうと、実はそうではないということも訴状に書いてあるんですね。2016年に公職選挙法の一部を改正する法律が成立して、法案提出者の1人である北側一雄議員によって趣旨説明があったんですよ。そこでこういう発言が議事録に残ってるんです『現在、選挙人名簿に登録されるためには、選挙人名簿の登録基準日において、現住所地に3か月以上居住していることが必要とされております。登録基準日との関係で、ある市町村に3か月以上居住していても、登録基準日の直前に転居した者が、新住所地において選挙人名簿に登録されないうちに国政選挙があるようなケースがあります。そのようなケースでは、国政選挙の選挙権を有しているにもかかわらず、選挙人名簿に登録されていないため、実際に投票をすることができないこととなっております。』というふうに、この時点でも制度のバグというか、制度の穴があるよということを認識されて、質疑や議論がされていたんですよね。他の議員からも同じような指摘がされていて、牧山弘恵さんはこう発言しています。『実際、昔は定住が当然でしたけれども、今は非正規雇用も増えて住所が不安定化している傾向がございます。また、経済活動の多様化によって短期間に転居を繰り返す方も少なくないんですね。』と指摘されているんですよ。これが10年近く前です。そうであるにもかかわらず、この制度の穴について何も手当てがされないまま2025年になっていて、原告の井上さんは投票ができなかった。こういうバグがあるということを知らずに、その制度を放置していたんだったら仕方ないかもしれないけれども、そういうことをわかっていて、国会でその話も出てたのに改正を行わずにずっときた。手当てをする義務があったのにしなかったから慰謝料を払ってくださいというのが、この訴訟なんです」
武田「能町みね子さんと、前にちょっとお話した時、能町さんのXに「そんなことも知らないんですか?」みたいなリプライが来たみたいなことを、ちょっとお怒りになりながら言ってましたけど。その制度を知らなかった側がおかしいんだ、みたいなことを言われても、でも知らないし。例えば「自分、選挙権ないんですか?」って気付いた時に、「色々バタバタ動いてたから、しょうがないんだ」みたいに、声をあげなかった場合も多分いっぱいあるわけですよね」
三輪「いっぱいあるし、今回の能町さんなんて特に衆議院議員選挙があるって予測できないから」
武田「そうですよね」
三輪「仮に知ってたとしても選挙に合わせて住民票の登録を変えるなんていう器用な事は多分できないと思います」
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