プーチンに逮捕状を出した「国際刑事裁判所」に迫る危機とは?「アメリカが制裁を…」
フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝のラジオ番組、『武田砂鉄 ラジオマガジン』。3月9日は、弁護士の三輪記子氏が国際刑事裁判所について解説した。
三輪「今日は、『戦争犯罪と闘う 国際刑事裁判所は屈しない』国際刑事裁判所所長、赤根智子さんの著書から今の世界を考える、というテーマで話したいと思います」
武田「はい」
三輪「この本は昨年の6月20日に文春新書から出ていて、私は去年の7月5日に『国際刑事裁判所(ICC)-意義とその役割』という講演会を聞いてきました。これは市民参加ができる講演会で、赤根さんのお話が聞けるということで名古屋まで行ってきたんです。私は日本法のみの弁護士で、国際刑事法に詳しいわけじゃないんですけれども、赤根さんが本を書いたり、いろんなところで講演をされている心意気をすごい感じ、今、世界の情勢がこうなってる中でご紹介したいなと思って、この本を取り上げさせてもらいます。赤根智子さんは、今、国際刑事裁判所の所長でいらっしゃるんですけれど、もともとは日本の検察官なんですね。まず、国際刑事裁判所って最近よく聞くと思います」
武田「そうですね。よく聞くけれども、実際どういう組織なのかとか、どういう力を持ってるのかってなると「どうなの?」って思ってる方も多いと思います」
三輪「そうですよね。国際司法裁判所っていうものと国際刑事裁判所っていうのがあって、よく似ているから間違えられたりするんですけれども、どちらもオランダのハーグにあるんですね。国際司法裁判所は1945年に設立された国家間の紛争を解決する裁判所です。この国際司法裁判所は国連の機関として存在してるんです。一方、赤根さんが所長をしている国際刑事裁判所は、国連の機関ではありません。ICC規程という条約によって設立している独立の機関なんですね。設立はなんと2002年で、個人による戦争犯罪の処罰をするのが使命です。だから国に対する処罰ではなくて、個人に対して成立する犯罪の有無を審議して、犯罪が成立するとされた場合には処罰をするというのが国際刑事裁判所の使命なんですよね。
この国際刑事裁判所がどうしてできたのかというと、20世紀の世界は2回の大きな戦争を経験しました。第一次世界大戦の後、ドイツ皇帝のヴィルヘルム二世はオランダに亡命して処罰されなかったんです。それだけじゃないんですけれど、人道に対する犯罪というものの個人責任を追及しなければ平和な世界っていうのが希求できないんじゃないかという考え方があって。しかし、冷戦時代には、構想はあったものの国際刑事裁判所は設立できなかったんですよね。なので、2002年になってからようやく設立できました。日本は少し遅れてこの条約の締約国になったんです。2025年の時点で125か国がICC規程、国際刑事裁判所の締約国になっています。これは過去の戦争犯罪について処罰する機関で「すごくいいね」「前向きな機関だね」と思われる方が多いと思いますし、私もそう思います。もし、国際刑事裁判所がなければ、いろんな戦争犯罪人が処罰されない、20世紀の力による支配の時代に後戻りするんじゃないかと考えられるからなんですよね。
ただ、課題も多いです。例えばアメリカ、中国、ロシアは非締約国なんですね。最近のニュースで多くの方がご存じだと思うんですけれども、この国際刑事裁判所から、戦争犯罪人の容疑がかかっているとして、ネタニヤフやプーチンには逮捕状が出ています。プーチンについてはもちろんウクライナの侵攻です。このウクライナの侵攻に関して国際刑事裁判所で取り扱ってほしいっていうことについては、ウクライナが管轄を持っているので、それでプーチンが対象になっていて、もちろんロシアは非締約国なんですけれども、プーチンが締約国に立ち入ったら協力して逮捕しなきゃいけないという状況があるんですよね。しかし、現状どうなってるかというと、例えばハンガリーはプーチンの入国を許し、その後、国際的に非難を浴びて締約国から脱退を決定しました。そういうこととかもあって、国際刑事裁判所がうまく機能してるかの評価は、もしかしたら分かれるのかもしれません。
しかし、国際刑事裁判所がなかったらどうなるの?ということを考えると、やっぱり20世紀のあの大戦で個人責任を追及できない社会に後戻りする。これは国際社会が平和を構築して行くために必要だということで、かなり多くの国の合意の下でできた裁判所だから守らなきゃいけないということで、赤根さんもいろんなところで発言されてますし、ICCへの援助を主に締約国の政府要人とかに会って主張をされているというのが現状なんですよね。この現状、どういう危機に直面しているかというと、ICCの裁判官とか検察官に対してアメリカが制裁をしてるんですよ」
武田「制裁?」
三輪「銀行取引をさせないようにしたり、例えばアメリカの企業に対してそのシステムを使わせないようにしたりしてるんですよ。ICCのシステムもアメリカの企業のものだったりするから、このままではシステム自体が使えなくなってしまう可能性があって、存亡の危機にあるんですね。そういうICCの裁判官とかに対する制裁について、各国は「それはアメリカの方がやりすぎですよ」と、比較的穏当な声明を出したりしてるんですけれども、日本は所長が日本の人なわけですから、もっと国際刑事裁判所を守る動きをするべきなんじゃないのかなと思うんですね。
というのも、日本は締約国の中でかなり経済的負担を負っている国なんです。裁判官もずっと出しています。日本が世界に対してできる平和に対する貢献というのは、実はこういうところでもやっているんです。ということは、私たちの税金がここに使われてて、私はこういう平和的な国際機関に対する拠出っていうのは大賛成です。日本は国際刑事裁判所の所長を用意している国で、ましてや20世紀には原爆も経験した国ですよね。だからもっと平和のために発信する材料を持っている国なんだよっていうことを、まず多くの人に知ってほしい。それをもっと世論が後押しすれば、安全保障というのは「武器が」とか「基地が」とかいうことだけではなくて、こういう国際機関で活躍する日本の人を応援するという形でも、国際貢献、平和構築に資することができると私は思います」
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