第16回 2010.02.04 ON AIR
2010/02/04
『センパツ!』毎週木曜日の『情報満載スタジアム』は
「弁護士中田のタイムリートーク」。
 
毎週、その時々の“タイムリーなニュース”を
中田総合弁護士事務所の中田
“法律”の観点から解説します。
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 ○注目のニュース
   
  公務員の身分保障を通じて考える公務員制度
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  埼玉県警蕨署地域課の巡査が
  女子大生にわいせつな行為をしたとして逮捕された事件で
  埼玉県警は、この巡査を、先月15日に懲戒免職処分としました。
  この巡査は去年12月10日、横浜市青葉区の路上で
  21歳の女子大生の腹を殴り、頬にキスをするなどしたとして
  強制わいせつ容疑で逮捕。
  その後、示談が成立し、不起訴処分となっていた。
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  ◆ポイント1 公務員の身分保障は何のためにある??
 
  公務員には【国家公務員】【地方公務員】があり
  国民、地域住民の全体に対してサービスを提供する
  “全体の奉仕者”と言われています。
  中田「民間企業に雇用される関係とは違うところがある点について
       理解することが、この問題について考えるためには必要です」
  法廷の事由によらなければ
  意に反して降任、休職、免職をされないことが
  国家公務員法や地方公務員法で定められています。
  中田「公務員が持っている“既得権”ではなくて
       公務員が担当する“公務そのもの”を保障するという意味なんです」
  日本の制度は
  成績主義――“メリットシステム”の要請であるともいわれています。
  【メリットシステム】とは、公務員の採用基準を『能力』のみに求めることで  
  その狙いは、政治的な思惑などから、公務の中立性を確保すること。
    一方“スポイルズシステム”――『猟官制度』という
    【公務】を、政治的目標の実現のためのものと考える制度があります。
    こちらは、時の政権担当者の“政策実現”のために奉仕するシステム
    となり、【公務】に対するとらえ方が異なります。
  現在の日本の制度(メリットシステム)では
  公務員の身分保障は、政治的情実による不利益処分を受けません。
  また、それによって、
  公務員の持っている既得権を 守 る の で は な く 
  公務の中立性を守る――ことを目指しています。
    中田「公務は行政サービスであると考えると
       サービスの受益者である【市民】(国民全体・地域住民)の利益を
       実現するために、公務員の身分保障はあるんです」
  つまり、日本の公務員制度=メリットシステムは
  民主的行政の基盤・土台であると考えられているため
  民間の労働者とは異なる法原理のもとに、身分保障がされています。
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   ◆ポイント2 海外の制度
 
  ●ヨーロッパ諸国で採用されている『キャリアシステム』
   公務員が――継続的昇進――するシステムで
   『メリットシステム』と整合性があるとされる。
  ◆特徴1:主として新規学卒者が採用対象とし
       当該職種全般への適正・潜在能力を評価。
  ◆特徴2:配転・昇進などの職務経験を重ねながら
       “偉くなっていく”。
  ◆特徴3:原則的に終身雇用・長期雇用となり
       中途採用は例外的に。
●アメリカで採用されている『ノンキャリアシステム』
   継続的昇進を前提としないシステムで
   『スポイルズシステム』と整合性があるとされる。
    中田「ところが、日本の公務員法は、実は
       正反対のアメリカの公務員制度をモデルとしているんです。
       制度の実態はコチラ/制度そのものの作り方はコチラ…と
       “どっちつかず”になっていると思われるんじゃないかな」
    中田「政権交代という歴史に残ることが起きた機会に、
       公務員制度改革を
       理論的なところや現実的なところをキチンと考えて
       十分に議論を重ねてほしいですね」
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   ◆ポイント3 公務員制度改革には市民の参加を
 
  これまでの説明の通り
  公務員の身分保障を、公務の中立性・能率性確保を目的とするならば
  ひいては、市民に対する適切な行政サービスの提供が目的となるはず。
    そこで【能力を欠く】【刑事事件を起こす】人は
    積極的に追放しなければならない――という考え方が
    導き出せるのではないでしょうか。
    中田 「“市民参加型オンブズマン制度”で人事を考えることも
       必要になるんじゃないのかな、と思います。
       そして、身分保証は、
       あらゆる公務員に一律に与える考えは必要ないんじゃないかな」
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  (中田)
   「きょうの問題は少し難しかったですね。
    でも、民主社会をどうやって実現するのか――というのは
    政治主導か、官僚主導か――なんて大雑把な議論ではなくて
    地味で、実は理論的で難しくて、現実的な議論を
    地道に積み重ねていくしかないんです」
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次回もお楽しみに!
投稿者 senpatsu : 2010年02月04日 21:00






