中田総合法律事務所

第19回 2010.02.25 ON AIR

2010/02/25

『センパツ!』毎週木曜日の『情報満載スタジアム』は
「弁護士中田のタイムリートーク」
 
毎週、その時々の“タイムリーなニュース”を
中田総合弁護士事務所の中田[なかだ]光一知[こういち]先生が
“法律”の観点から解説します。
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 ○注目のニュース
  
  起訴

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  民主党・小沢一郎幹事長の資金管理団体『陸山会』の
  土地購入をめぐる事件で、東京地検特捜部は今月4日、
  政治資金規正法違反の罪で、衆議院議員・石川知裕容疑者、
  元会計責任者で小沢氏の公設第1秘書・大久保隆規容疑者、
  元私設秘書・池田光智容疑者の3人を起訴。

  小沢氏については、嫌疑不十分で不起訴としました。

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  ◆ポイント1 起訴とは
 
  中田 「きょうは、このニュースの内容というよりも
       『起訴』というものについてお話します」

    「名前の通り訴えを起こすこと。
       法に定められた手続きに従って、
       裁判所に対して、判決をすることを
       求めること――と言われていて、
      『起訴』という言葉を使う場合は
      『刑事事件』として使われることが一般的です」

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  ◆ポイント2 起訴の種類
 
  公判請求
   公開法廷で行われる「公判」手続きを求める請求。

  略式命令を求めるケース
   『公判手続き』に対して、簡易裁判所管轄の事件は
   『略式手続き』と呼び、
   これによる有罪裁判を『略式命令』といいます。

  即決裁判を求めるケース
    新しい制度には、
    簡易・軽微な事件の場合の即決裁判を求める
    『即決手続き』もあります。

  中田 「いずれにしても、有罪の判決・裁判を求めて
       裁判所に提起するものを『起訴』、
       あるいは『公訴の提起』といいます」

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  ◆ポイント3 起訴までの流れ

  吉田 「どんな経過で行われるんですか?」

  事件を知る(事件の認知)

  捜査がはじまる(捜査の端緒)

  証拠の収集・被疑者の特定

  検察官に送致(=送検)
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  ◆ポイント4 『起訴・不起訴』は検察官の裁量で決まる

  起訴独占主義

   検察官以外は起訴することができません(原則)

  起訴便宜主義・起訴裁量主義の原則

   検察官は、刑事裁判で罪に問わなくていい――と判断した場合
   公訴を提起しないこともできます。

  中田 「つまり、検察官が一手に引き受けて」
       起訴した李起訴しなかったりせんといことを
       裁量で決めましょう、という決め方になっているんです」

  今回のニュースで、小沢幹事長が不起訴となったのは
  起訴独占主義・起訴便宜主義により
  検察官が有罪判決を求めて裁判所に公判請求をしなかった
  ――ということ。
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  ◆ポイント5 不起訴の種類

  『不起訴』には次のような種類があります。

  捜査の結果、犯罪を構成しないことがわかった場合

     『犯罪』は、構成要件に該当した場合、罰せられる――と法に定められています。
    
      ◆犯罪が成立する要件を欠く例◆

      ・窃盗犯が盗んだものが、自分のものだった場合
      ・刑事未成年(14歳未満)の場合
      ・心身喪失の状況にあった場合

  訴状条件を欠く場合

      ・被疑者が死亡していた場合
      ・公訴時効が完成していた場合
      ・親告罪に対して告訴がない場合

  嫌疑なし の場合

     ・犯罪発生は認められながら、
      (捜査対象者に)犯人としての嫌疑がない場合

  嫌疑不十分 の場合

     ・犯人としての嫌疑はありながら
      有罪判決のための証拠が集まらなかった場合

  吉田 「小沢幹事長の場合はこれですね」

  中田 「有罪判決をもらうには、
       証拠が足らなかったということですね」


  『不起訴』とし場合も
  検察官は捜査を再開することができ、
  その内容によって、(公訴時効までは)『起訴』することができです。
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  ◆ポイント6 検察審査会制度

  ポイント4でご紹介した
  起訴独占主義、起訴便宜主義(起訴裁量主義)にも例外があります。

    検察官には、不起訴にする裁量権があるものの
    遺族などから「起訴されるべきだ!」という声が上がることもあり
    不起訴にしたことが いいのか悪いのか――について
    審査申し立てを受けるのが『検察審査会』

  『検察審査会』は、
  管轄する地方裁判所の管轄区域の衆議院選挙人名簿の中から選ばれた
  11人の検察審査員で構成されます。

  吉田 「我われもその中に入る可能性があるということですね」

  検察審査会は“不起訴にした処分が、本当に良かったのか”――と
  不服申し立てがあった場合は、審査会議を行い、
  次の議決を行うことができます。

  1.『起訴相当』(起訴をするべきと認めた場合)

  2.『不起訴不当』(起訴しない処分を不当と認めた場合)

  3.『不起訴相当』(不起訴処分が妥当だったと認めた場合)

  1、2の場合
  検察官は再捜査をしなければいけません。

    不起訴不当の議決がありながらも、再び『不起訴』となった場合
    『検察審査会』は、専門家の弁護士を委嘱し、審査補助員として加え
    再び審査をすることができます。(11人+1人)

  ここであらためて『起訴相当』となった場合
  8人以上の多数で、起訴すべき議決――『起訴議決』ができます。
 
  この『起訴議決』がなされた場合
  裁判所が指定した 指定弁護士が
  検察官にかわって公訴を提起し、公判が開かれます。

    有名な事件には『明石花火大会歩道橋事件』があり
    初めて『起訴議決』がなされ、明石警察署 元副署長が起訴されました。
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(吉田)
 「今まで、たくさん聞いてきたことを、
  なんとなく整理できた方が多いんじゃないかな、と思いますね」

次回もお楽しみに!

投稿者 senpatsu : 2010年02月25日 21:00

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第18回 2010.02.18 ON AIR

2010/02/18

『センパツ!』毎週木曜日の『情報満載スタジアム』は
「弁護士中田のタイムリートーク」
 
毎週、その時々の“タイムリーなニュース”を
中田総合弁護士事務所の中田[なかだ]光一知[こういち]先生が
“法律”の観点から解説します。

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 ○注目のニュース
  
  和解

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  いわゆる“リーマンショック”の余波などで廃業に追い込まれた
  JR品川駅前の『京品ホテル』の元従業員が
  経営会社に対して、地位確認などを求めていた裁判で
  和解が成立していたことがわかりました。

  この裁判は、おととし10月、リーマン・ブラザーズの日本法人による
  債権回収などをきっかけに廃業した 京品ホテルの経営会社に対し
  解雇された従業員46人が地位確認などを求めて
  東京地方裁判所に提訴していたもの。

  従業員を支援している 東京ユニオン によると、
  1月29日に、経営会社の破産管財人との間で
  和解が成立した――ということ。
  「和解の内容は守秘義務があり言えないが“勝利的な和解”だ」としている。

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  ◆ポイント1 和解の定義は・・・?
 
  京品ホテルは、2008年10月に廃業したものの
  その後も、従業員の方々が“自主運営”の形で営業を続け、
  2009年1月に、東京地方裁判所の決定により強制排除され
  大きなニュースとなりました。

  中田 「きょうは、もっと一般的に
     『和解』ということについて お話したいと思います」

  日常生活においてもつかわれることの多い『和解』ですが
  法律の観点から語られる場合は、
  “権利義務”に関わることから、その『定義』が重要になります。

  中田 「当事者間に存在する、法律関係の争いについて
       当事者が互いに譲歩して、争いをやめる合意をすること
       ――と定義されています」

  今回のニュースでは、
  従業員側 と 経営会社側とが 互いに譲歩して 争いをやめる合意をした――
  ということ。

  したがって、一方が全面的に譲歩する場合は『和解』にはあたりません。

  中田 「自分の主張が全面的に通った――ということではない、
       ということです」

  再び今回のニュースでは【勝利的和解】とありましたが
  従業員側が全面的に勝ったわけではなく、
  譲歩の程度において、相手方(経営会社側)の譲歩が大きかった――ということ。

  中田 「自分たちも少しは譲歩したんですけど
       それよりも相手側から大きな譲歩を勝ち取った――と言っているんです」

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   ◆ポイント2 和解調書

  今回のニュースのように、裁判所の関与によって成立した和解は
  【和解調書】に記載され、確定判決と同一の効力を有すると決められています。

    当事者が、和解の内容を履行しない場合
    裁判所に対して【強制執行手続き】を申し立てれば
    強制的に和解内容を実現することができます。

  中田 「(いくら)払う――という和解があったのに、払わない場合
       和解調書をもとに、お金を取り立てることができます」

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   ◆ポイント3 和解 と 示談の違いは?

  吉田 「“和解”と“示談”は同じですか?」

  【示談】は、法律で定められた言葉ではありませんが
  多くの場合、【和解】と同じ意味で使われています。

  法的に【和解】と【示談】の意味が違う例をご紹介します。

  元横綱・朝青龍の暴行事件

  “被害者と示談した”――と報道されましたが
  この場合【和解】のように“互いに譲歩”する必要が あ り ま せ ん

  中田 「一方が全面的に譲歩する場合も“示談”といって
       この点が【和解】と大きく違います」

  刑事事件で【示談】が使われるケース

  加害者と被害者の間で行われる【示談】は
  加害者が真摯に反省している / 被害者の被害感情が軽減されている など
  加害者に有利な情状になります。

    加害者が全面的に譲歩する内容になり
    被害者側が
    「加害者の刑事処罰を望まない」(=被害感情の軽減)として    
    加害者の刑を軽くすることを目的に行われることが多くあります。

  中田 「しかし【示談】はあくまでも民事上のものなので
       “示談”が成立したからといって、
       必ず刑事処分が軽くなるのか――というと、そんなこともなくて
       加害者にとって有利な情状として考慮されることがありえる――
       そのことによって、刑事処分が軽くなる可能性がある――ということに
       とどまるんです」

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   ◆ポイント4 交通事故における示談

  吉田 「交通事故を起こした時に
       被害者と加害者の間で“示談”って、聞きますよね」

  【交通事故】は刑事事件にもなりうることから
  【和解】よりも【示談】という表現を使うことが多いようです。

    しかし、事故によって生じた損害の賠償をめぐる権利・義務について
    双方が互いに譲歩する――ことが多く、
    実際には、法的な【和解】であることがほとんどでしょう。
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   ◆ポイント5 和解する際の注意点
 
  【和解】は“争いをやめる合意”。
  原則として、あとから、和解の時には知らなかった事実が判明しても
  『勘違い』だった――とは言えません。
  
  中田 「たとえ和解の時に知らなかった事実が後から明らかになっても
       和解の内容に拘束される――『和解の確定効』といって
       民法に定められているんです。
       “うっかり和解”はダメなんです」

  しかし【救済判決】といえるケースとして
  交通事故の際に、事故後、相当後から“後遺症”を発症し、
  早急に少額の賠償金をもって示談がされた場合
  “示談によって被害者が放棄した損害賠償請求権”
  示談当時に予想された損害についてのものだけ――と考えるべき。
  
    予想できなかった、再手術や後遺症などが示談後に発生した場合
    損害をあらためて請求することができる――と判例でいっています。

  吉田 「後遺症は示談の後でも請求できますよ、ということですね」

  和解の趣旨からは認められない考えのようですが・・・
  法律上“当事者の合理的意思に合致するか否か”という言葉が使われます。

    つまり 普通に生活する一般市民の日常感覚に即してどうなのかということ。
    
  中田 「法律というのは、社会に広く適用されるので
       誰でも納得できる結論を導くために
       必ずしも“書面や言葉に表れていない意思”
       解釈しなければいけないということもあるんです」

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(中田)
「わたしたちの生きている、自由な社会は
 【意志】ということと、意志の合致を意味する【契約】というのが
 非常に重要なキーワードなんです」

「交通事故の後遺症をめぐる裁判は、長年にわたって
 最高裁まで争われて、“合理的意志の解釈”ということで
 ようやく救済されたんです。
 いずれにしても安易な“うっかり和解”は禁物ですよ」

次回もお楽しみに!

投稿者 senpatsu : 2010年02月18日 21:00

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第17回 2010.02.11 ON AIR

2010/02/11

『センパツ!』毎週木曜日の『情報満載スタジアム』は
「弁護士中田のタイムリートーク」
 
毎週、その時々の“タイムリーなニュース”を
中田総合弁護士事務所の中田[なかだ]光一知[こういち]先生が
“法律”の観点から解説します。


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 ○注目のニュース
  
  不倫はなぜいけないか

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  プロゴルファー タイガー・ウッズ選手の
  不倫スキャンダルがスポンサー企業の株を下落させ
  資産価値に与えた損失は、一時、120億ドル(約1兆1040億円)に
  上った――とする調査結果を、アメリカの経済学者が明らかにしました。

  スポンサー企業株の取引を調べたところ
  株価が平均4.3%も急落したことがわかったという。

  調査を担当した
  カリフォルニア大デービス校の経済学教授ビクター・スタンゴさんは
  「ウッズ選手の名声を活用できることは利点である一方、
   ネガティブなリスクも大きいことを証明した」とコメントしている。

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  ◆ポイント1 憲法で定められた夫婦の関係
 
  辞書によれば、男女の関係が人の道に外れること――とされる不倫。
  なぜ不倫はいけないのか――法律的な視点で考えてみましょう。

  夫婦関係(婚姻)の基本的な考え方は憲法で定められ
  社会的における基本的な秩序を維持するものとして位置付けられています。

  中田 「こういった意味で『不倫』
       婚姻共同生活の平和の維持とか、
       法的に保護に値する利益を侵害する行為――とされているんです」

  吉田 「“平和”の侵害なんですね。へぇ~!」
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   ◆ポイント2 民法で定められた夫婦の基本

  民法によれば、【夫婦】は、同居し、互いに協力し、扶助する関係が基本。
  また、互いに貞操義務を負うとされています。

  【貞操義務】は離婚原因に定められ
  配偶者に“不貞な行為”があった場合は離婚原因になる――と明文化。

  これにより、日本国憲法では【一夫一婦制】を前提としていることがわかります。

  中田 「ほかの男性・女性に目を移しちゃいけませんよ、というわけですね」

  【一夫一婦制】を大前提とする制度のもとでは、
  (公序良俗の基本である)夫婦関係を維持するには
  夫・妻が、妻・夫以外の異性との関係を自由に認めるわけにはいきません。
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   ◆ポイント3 夫婦は契約関係 / 不倫は債務不履行

  夫婦は【合意】によって成立することから【契約関係】と考えることができます。
  
  したがって、両性の【合意】に基づく関係を破壊する行為(不倫)は
  【債務不履行】である――ということができます。

  中田 「第三者が壊せば不法行為だし、
       夫婦の一方から他方に対してならば、債務不履行だ――となって、
       精神的な損害については
       慰謝料を払わなければならない関係になるんです」

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   ◆ポイント4 そもそも【不貞な行為】とは

  法的には【不貞な行為】にあたる『不倫』

  中田 「不貞な行為とは…“配偶者以外に目を移さない”ということなんですが」
  吉田 「どこまでがよくて、どこからが悪い――
       というのがわかりづらいですね」

  中田 「損害賠償請求の根拠や、離婚原因になるものとしては
       基本的には【肉体関係】というものがあるんです。
       法律的な問題になるのかならないのか――というのは

       “グレー”なところもたくさんあって
       実は、法律上、この言葉の定義がはっきり書いてないので
       解釈する必要があるんです」

  吉田 「“不貞”がどういうものか、具体的に何か――
       というのは書かれてないんですか」

  離婚・損害賠償の請求を認めるケースでは
  配偶者が、自由意思で、配偶者以外の異性と肉体関係を結ぶこと――
  と考える傾向があります。

    さらに、裁判では、
    通常、一回限りの肉体関係の存在を立証しただけでは
    不貞行為を理由とする離婚は認められない――場合があります。

  吉田 「回数も関係あるんですか」

  中田 「継続的・反復的な不貞行為を立証しなければならないんです。
       これは、裁判所というのは
       夫婦関係を“壊す”よりは“維持する”方向で考えるからなんです」

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   ◆ポイント5 夫婦関係破たん後の不倫関係

  夫婦関係が【破たん】した後に、不倫関係が始まった場合――。

    この場合、すでに、保護するべき“婚姻共同生活の平和”がない――とされ
    破たんした後に始まった関係は、そもそも【不倫】ではない――
    ということになります。
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   ◆ポイント6 プラトニックな関係の場合

  プラトニックな関係であっても
  交際している――という評価に至れば不貞行為にあたる――といえます。

  中田 「プラトニックな関係でも“お付き合いしています”――
       ということになれば、他の異性に目を移していたことになるから、
       交際期間はどれくらいか、贈り物――家をあげた――とかあれば
       そういうのはプラトニックな関係であっても
       離婚原因や、損害賠償問題になったりするでしょう」

  中田 「これが交際しているとは言えない
       “恋心”の段階だったら、
       法律上問題にされる不貞行為にはいえないと思いますね」

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(中田)
「夫婦生活の平和とは『幸せ・幸福』――。
 ひとりひとり、人生において最も大切なものなので、
 よくよく考えて、お付き合いしたり、それ以上になっちゃうのが、
 自分にとって本当に幸せなのか、ということを
 奥さん、あるいは旦那さんとの関係を考えて
 よく考えてから行動すべきだろうと、いうことですね」

次回もお楽しみに!

投稿者 senpatsu : 2010年02月11日 21:00

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第16回 2010.02.04 ON AIR

2010/02/04

『センパツ!』毎週木曜日の『情報満載スタジアム』は
「弁護士中田のタイムリートーク」
 
毎週、その時々の“タイムリーなニュース”を
中田総合弁護士事務所の中田[なかだ]光一知[こういち]先生が
“法律”の観点から解説します。
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 ○注目のニュース
  
  公務員の身分保障を通じて考える公務員制度

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  埼玉県警蕨署地域課の巡査が
  女子大生にわいせつな行為をしたとして逮捕された事件で
  埼玉県警は、この巡査を、先月15日に懲戒免職処分としました。

  この巡査は去年12月10日、横浜市青葉区の路上で
  21歳の女子大生の腹を殴り、頬にキスをするなどしたとして
  強制わいせつ容疑で逮捕。
  その後、示談が成立し、不起訴処分となっていた。

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  ◆ポイント1 公務員の身分保障は何のためにある??
 
  公務員には【国家公務員】【地方公務員】があり
  国民、地域住民の全体に対してサービスを提供する
  “全体の奉仕者”と言われています。

  中田「民間企業に雇用される関係とは違うところがある点について
       理解することが、この問題について考えるためには必要です」

  法廷の事由によらなければ
  意に反して降任、休職、免職をされないことが
  国家公務員法や地方公務員法で定められています。

  中田「公務員が持っている“既得権”ではなくて
       公務員が担当する“公務そのもの”を保障するという意味なんです」

  日本の制度は
  成績主義――“メリットシステム”の要請であるともいわれています。

  【メリットシステム】とは、公務員の採用基準を『能力』のみに求めることで  
  その狙いは、政治的な思惑などから、公務の中立性を確保すること。


    一方“スポイルズシステム”――『猟官制度』という
    【公務】を、政治的目標の実現のためのものと考える制度があります。

    こちらは、時の政権担当者の“政策実現”のために奉仕するシステム
    となり、【公務】に対するとらえ方が異なります。


  現在の日本の制度(メリットシステム)では
  公務員の身分保障は、政治的情実による不利益処分を受けません
  また、それによって、
  公務員の持っている既得権を 守 る の で は な く
  公務の中立性を守る――ことを目指しています。

    中田「公務は行政サービスであると考えると
       サービスの受益者である【市民】(国民全体・地域住民)の利益を
       実現するために、公務員の身分保障はあるんです」

  つまり、日本の公務員制度=メリットシステム
  民主的行政の基盤・土台であると考えられているため
  民間の労働者とは異なる法原理のもとに、身分保障がされています。
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   ◆ポイント2 海外の制度
 
  ヨーロッパ諸国で採用されている『キャリアシステム』

   公務員が――継続的昇進――するシステムで
   『メリットシステム』と整合性があるとされる

  ◆特徴1:主として新規学卒者が採用対象とし
       当該職種全般への適正・潜在能力を評価。
  ◆特徴2:配転・昇進などの職務経験を重ねながら
       “偉くなっていく”。
  ◆特徴3:原則的に終身雇用・長期雇用となり
       中途採用は例外的に。

  アメリカで採用されている『ノンキャリアシステム』

   継続的昇進を前提としないシステムで
   『スポイルズシステム』と整合性があるとされる

    中田「ところが、日本の公務員法は、実は
       正反対のアメリカの公務員制度をモデルとしているんです。
       制度の実態はコチラ/制度そのものの作り方はコチラ…と
       “どっちつかず”になっていると思われるんじゃないかな」

    中田「政権交代という歴史に残ることが起きた機会に、
       公務員制度改革を
       理論的なところや現実的なところをキチンと考えて
       十分に議論を重ねてほしいですね」

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   ◆ポイント3 公務員制度改革には市民の参加を
 
  これまでの説明の通り
  公務員の身分保障を、公務の中立性・能率性確保を目的とするならば
  ひいては、市民に対する適切な行政サービスの提供が目的となるはず。

    そこで【能力を欠く】【刑事事件を起こす】人は
    積極的に追放しなければならない――という考え方が
    導き出せるのではないでしょうか。

    中田 「“市民参加型オンブズマン制度”で人事を考えることも
       必要になるんじゃないのかな、と思います。
       そして、身分保証は、
       あらゆる公務員に一律に与える考えは必要ないんじゃないかな」

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  (中田)
   「きょうの問題は少し難しかったですね。
    でも、民主社会をどうやって実現するのか――というのは
    政治主導か、官僚主導か――なんて大雑把な議論ではなくて
    地味で、実は理論的で難しくて、現実的な議論を
    地道に積み重ねていくしかないんです」

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次回もお楽しみに!

投稿者 senpatsu : 2010年02月04日 21:00

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