『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    上昇を続ける不動産価格、考えるべきことは

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    上昇を続ける不動産価格、考えるべきことは

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情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2023」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

上がる一方の住宅価格

先日、電気代が15%上がって、キャーッとか言ってましたけど、それどころじゃなくなっているのが家の値段です。戸建てだとやっぱり、500万とか1000万とか、平気でヒュッ…と上がってます。
本当にバブルの頃を思い出すぐらいの上がり方です。それで、当時、不動産が買えない…となって登場したのが、50年や100年のローンだったんです。
残間さんは「100年ローンなんてどうやって返すの!」ってビックリされていましたが、貸す方は「住宅価格が上がるから大丈夫ですよ。ローンの残額は減らさなくても」という感じでした。いまはそんな極端なのは、もうありませんけど、当時はそういう景気で「返しちゃもったいない、上がるんだから」っていう雰囲気でした。実際毎年、倍々になってましたからね。

いまはもっと景気の悪い話

最近、地方では本当にもう住宅が高くて買えなくなっています。
住宅ローンを組むときって、年間の返済額を年収で割るんですね。目安で言うと、だいたい35%くらい。これ以上年収がないと借りられないんです。で、これをクリアするために、ローンを長期化して、年間の返済額を圧縮する。そうすると、借りられるというのが住宅ローンなんです。
要するに、どのくらいの金利で借りるとかいう問題ではなく、年間の返済額が下がれば審査は通る。それで35年だったローンが40年、50年にするのが当たり前になっています。
銀行によっては「おまとめローン」とかいって、住宅と自動車のローンをまとめて借りられたりします。これを、僕らが名前を聞くとびっくりするくらい堅い、ちゃんとした地方の大きな銀行が普通にやりだしているんです。

80歳でローンを払えるか

皆さんにちょっと考えていただきたいのは、75とか80までローンを返せるのか、というところです。私は繰り返しお話していますが、35年ローンだって、退職から10年は払い続けなきゃいけないんです。それが40年、50年となると…。
いまは4千万近く借りることができます。以前はあり得ない高い金額で、かつては2千万台が主流でした。でも、今はそれじゃ、たぶん買えないんです。買える家もあるかもしれませんけど、ちゃんとした家は2千万の借金では厳しですね。
それで銀行の担当の方に、75、80で返せなくなったらどうするんですか、って聞くと「いや、そんなのしみじみ考えたら家なんか買えませんよ」って。勢いで買え、みたいな話になってる。実際にはいろいろ考えているのでしょうが「まあ、何とかなりますよ」って。でも私は、何ともならないような気がしています。
銀行の方は「大丈夫ですよ、退職金というものがありますから」って言います。でも最近は、5年に1回ぐらい会社変わるのが当たり前になってきています。そうしたら、退職金なんかありません。まとまった退職金は、40年勤めてはじめてもらえるものなんです。
いまちょっと銀行がおかしくなっていると思います。昔の銀行はそんなこと絶対にしなかったんです。

金融庁は「顧客本位」と言うけれど

あんまり無理をしないのがいいと思うんです。金融庁は「顧客本位で考えなさい」と口を酸っぱくして言ってるんですけど、はたして80歳まで借金させるのが顧客本位なのかどうか。残間さんは「家がほしいって言う人がいるんだから、どうすれば買えるかを考えてあげる、それが顧客本位っていう意味なんじゃないの」と仰ってましたが、そうなのかどうか、私にはよくわかりません。
私はもうヤバイ、と思ってます。それで「残価設定型住宅ローン」を使える場面をもっともっと増やしていきたいと考えています。現在は長期優良とか、メーカーの住宅だけでやっています。でもこれからは、そうやって40年、50年になってしまったローンにも残価をつけられるようにがんばっていきたいと思っています。国の補助事業に申請して予算もつきました。もう少しお待ちいただければ何とかできると思います。
とにかくご自分のことを冷静にお考えになって、無茶はしないようにしていただきたいと思います。残価設定型を使える住宅を、もっともっと増やせるよう、日夜がんばっておりますので…。

今回は、「長期の住宅ローン」について考えてみました。

大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。

家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください。

お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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