【アナコラム】太田英明「長距離通勤者の憂鬱」

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▼5月10日配信号 担当
太田英明アナウンサー

はい、どうも、いつも大変お世話になっております。文化放送の太田英明です。
突然ですが、あなたは通勤時間にどのくらいを費やしていますか。
私は、毎日、片道2時間、往復4時間を掛けている、長距離通勤者です。
学生時代も長距離通学でしたから、もうかれこれ40年も満員電車に長時間揺られています。
「40年も続けているのだから、もう長距離にも慣れたものだろう」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。非常に疲れます。
1日のスタートが疲れたものになるかどうかは、小田急線の最寄り駅の伊勢原駅から終点の新宿駅までのおよそ1時間強の間に、いかに早い段階で座れるかどうかがカギとなります。

私は毎朝、7時11分伊勢原駅発の、快速急行新宿駅行き列車の同じ車両に乗車します。
乗車した時点で、もちろん座席はすべて埋まっています。座っている人の前に、誰も立っていない割合は、3、4割といったところでしょうか。

私はまず、ターゲットである、座っているAさんの姿を探します。Aさんはスーツ姿で、色黒、眼鏡を掛けていて、髪の毛の薄い男性、いつも伊勢原駅の次の次の駅、本厚木駅で降ります。
つまり、Aさんの前に立つことが出来れば、本厚木駅から新宿駅まで、およそ50分間は座って行けるのです。ところが、Aさんの前に誰も立っていないときは、時々しかなく、Aさんの前に立てないときは、次なるターゲットを探さねばなりません。

次なるターゲットを探す際、席で爆睡、熟睡している人の前には立たないようにします。こういった人は、終点の新宿まで行くケースが多いからです。
狙い目は、スマホをいじっている人、本を読んでいる人です。こういった人は、途中で降りる人が多いような気がしますので、前に立つようにしています。
しかし、これらはあくまでも確率の問題です。座席で爆睡していたはずなのに、急に目覚めて途中で降りる人もいれば、スマホをいじったり、本を読んでいたりしたはずなのに、それを止めて居眠りを始める人もいます。そのたびに、「あぁ、あの人の前に立っていればよかった」、「しまった、この人の前に立って失敗した」と一喜一憂することになるのです。

比較的安定して座れる確率が高くなるのは、学生服で座っている人の前に立つことです。学生服で座っている人は、まず新宿までは行きません。途中で降ります。着ている制服を見極めて、「あぁ、この制服の学生さんは確かあの駅で降りるはずだよな」と席の前に立ちます。ただ、学生さんが座っている席の前は人気が高いようで、既に人が立っているケースが多く、その前に立つのはなかなか難しいのです。

このように、一駅ごとに、神経を集中して、席に座れるか、座れないかのある種の戦争をしているのでした。最悪なのは、7人掛けの座席のうち、私が前に立つ座席以外の6席が、次から次へと座っていた人が途中で降りて、その前に立っていた人が座ったのに、私の前に座っていた人のみが、終点の新宿まで座り続け、私だけが1時間強立ちっぱなしになるケース。こんな時は本当にイライラしますし、朝からどっと疲れてしまいます。でも、こんなケースも決して珍しくないのです。

考えてみれば、長距離通勤そのもので疲れるよりも、座れるか、座れないかで、神経をすり減らしていることで、ひょっとしたらひどく疲れてしまうのかもしれません。かくして、長距離通勤者の憂鬱は、まだまだ続きそうですし、座席を巡る孤独な戦いは次なる朝にも確実にやって来るのでした。トホホ。

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