耳で見るファッション・ショー【アーカイブの森 探訪記#41】
1973年(昭和48年)のQR通信を見ていると、「耳で見るファッション・ショー」
という文字が目に入った。
「耳で見るとは?」と不思議に思い、内容を読んでみると、
様々な番組で司会やラジオパーソナリティを務めていたせんだみつおさんが
1973年の春から夏にかけて流行が予想されるファッションを、
リスナーにおしゃべりで伝えるという企画だった。
今でこそ映像付きのラジオや、
ラジオの放送風景の写真を公式Xなどにアップするのは一般的だが、
当時のラジオはほぼ耳だけで楽しむものであり、
視覚的に楽しむものとの相性はあまり良くないイメージがある。
しかも、予想されるファッションの流行が「スポーティ・エレガンス」ということで、
このワードだけではなかなかイメージを伝えるのは難しそうだ。
だからこそ、せんだみつおさんのような表現の引き出しが豊富なパーソナリティによる、
リスナーの想像力を掻き立てるようなイメージ豊かなファッションショーは
聴いていたリスナーも新鮮だったのではないだろうか。
話は少し変わるが、個人的に、視覚的な情報が強いものをあえて見せずに、
リスナーのイメージを膨らませる楽しさがあるんだと思わされたラジオ番組に、
女性声優の花澤香菜さんによる文化放送のラジオ
「明治 presents 花澤香菜のひとりでできるかな?」がある。
この番組では、年に一度「水着回」なるものがあり、
その日は花澤さんが本当に水着に着替えて放送をしている。
もちろん、ラジオなのでリスナーにはどんな水着を着ているかは想像しかできない。
しかも、そこから花澤さんがリスナーに電話をかけ、
「いま私、何色の水着を着てるでしょう?」とクイズを出しているのだから、
なるほど、視覚情報が無いからこそできる遊びだろう。
基本的にはラジオは音を届けるコンテンツで、視覚情報の多いものを楽しむのは難しい。
だが、だからこそリスナーの想像力を刺激する企画は新鮮とも言える。
YouTubeやSNSなど、視覚情報が溢れている現代で、
あえて視覚を封じ、ラジオで想像力を楽しむのも一興ではないだろうか。
執筆:アーカイブ探訪隊員 原田
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