
バラマキによる経済対策は限界なのか?「減税問題をもう一度、政策の議論の中心に」
6月4日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、火曜コメンテーターで上武大学教授の田中秀臣氏と番組パーソナリティーの寺島尚正アナウンサーが、バラマキによる経済政策について意見を交わした。
安倍政権の遺産を地に捨てる人たちが今の政権を握っていますから……
物価高やトランプ政権時代の関税措置を背景に、この夏の参議院選挙では「物価高対策」が一つの焦点となっている。
バブル崩壊後の日本では、たびたび補正予算が組まれ、景気対策が実施されてきた。コロナ禍では国民一人あたりに一律10万円の現金給付が行われ、それ以来、議員から現金給付を求める声が当たり前のように上がるようになったとも言われている。
1990年度に約60兆円台だった一般会計予算は、現在では当初から110兆円を超える規模となっている。
(寺島アナ)「日本の国家予算が30年で約1.8倍になってるわけですが、田中さん、この辺りどうご覧になりますか?」
(田中氏)「二つ言えると思うんです。一つは“必要な経費が拡大した”こと。高齢化社会なので医療費や年金で支出が増えた。さらに日本経済の規模が増えれば自然と財政の規模が増える。ここら辺の構造的な財政規模の拡大ってありますよね?もう一つさらに重要なのは、日本経済の『失われた20年』といって、1990年代から2012年くらいまで長期停滞をしていたわけですよ。そして民間の経済が不景気によってお金を出さなくなっちゃったわけです。それを支えるためには政府の支出を増やさないといけないので、財政規模が拡大するのは当たり前ですね」
田中氏は、緊縮派の政策の失敗だと指摘する。
(田中氏)「もし本当にこれを問題視する人がいるなら、長期停滞を回避する大胆な政策を早期にやっていれば、こういった財政規模が拡大する云々という話を回避できたと思うんですが。1990年代のマスコミやこういった主張を言いがちの人達は“なるべくお金を出さないで経済を良くしよう”という人たちばかりだったんですよ。引き締め派、緊縮派の人たちね?それが今になってこんなこと言ってるっていうのはね、自分たちがもたらした政策や政策間の失敗の表れだと。反省しろと思いますけどね」
OECD経済協力開発機構によると、過去30年でアメリカやイギリス、実質賃金が1.5倍近くになり、ドイツやフランスは1.3倍に増えた。しかし日本は横ばい。この間に、経済の自力を示す「潜在成長率」3.7%~0.3%に落ち込んだ。
(寺島アナ)「“財政拡張は日本の底上げにつながっておらず、バラマキ頼みは限界という指摘もある”という指摘もありますが、この辺り、田中さんどうでしょう?」
(田中氏)「自民党の森山幹事長とかが“限界”とか言ってますけど、あんたが限界だろ、ともし目の前にいたら言いたいと思うんですが。“実質賃金が伸びなかった要因”を原田泰さんの勉強会でみんなで議論しましたが、大体“消費増税”なんですよ。なんで消費増税が実質賃金の抑制にはたらいちゃったかと言うと、簡単です。消費者がお金を出さなくなっちゃったわけですよ」
(寺島アナ)「買い控えするようになりますよね」
(田中氏)「そうすると企業は物が売れなくて、その状況でコストが嵩んでも価格に乗せることができないんです。それで仕方ないので賃金カット、雇用カットを繰り返していた。そして21世紀になって、様々な社会保険料のアップがあったわけです。それで大体7~8割説明できちゃうんです。つまり簡単に言うと政府の失敗ですよ。その一方で大胆な経済政策をやらなかった」
田中氏は1995年がターニングポイントだった、と指摘する。
(田中氏)「1995年にもう一段の財政政策と金融緩和をやっていれば、1997年の本格的なデフレを回避できただろうと。実際1995年に何やっていたかというと、消費増税の議論をやっていたわけです。財政引き締めの議論をしていたんです。今と似てますよね?もう一歩で経済状況が安定化するのに、バラマキ批判だとか、自らの思考能力の限界を政治家たちが示していて、それにマスコミが便乗している。なぜマスコミが便乗するかと言うと、ニュースソースが財務省なんです。官僚の広報機関でしかないから」
(寺島アナ)「情報源がそこだから」
(田中氏)「官僚マスコミと官僚政治に官僚さん、この三位一体になぜか民間の経営者も乗っちゃうし、生活を維持するために頑張らなきゃいけない日本労働組合総連合会の幹部も同じことを言う。僕が昔、日本労働組合総連合会の幹部たちの前で講演やったときに驚きました。労働者の賃金をあげるんじゃなくて、“引き締めをしろ”と言ってますからね。それが日本の日本労働組合総連合会の特徴なんですよ。積極財政派は世間的には極少数派ですけど、それを打ち破ったのが安倍政権だったんですけど、安倍政権の遺産を地に捨てる人たちが今の政権を握っていますから。これをどうにかしなければ、日本経済の活路は見出しにくいと僕は思っています」
(寺島アナ)「以前から田中さんも、“せっかく日本の経済が、今一つのところまで来ている”と言ってますよね」
(田中氏)「しかもトランプ関税が当初に言われていたよりも、“まだまだ交渉の余地がある”となってますよね? たしかに自動車部門とか関税が上がってますが、大手であれば対応が可能なところもあります。中小企業は大変ですけど。でもある程度、今のレベルであれば対応することが可能なのですが、安定的な経済成長が可能かどうか、日本経済は夏以降にかなりしんどい局面が来ると思います。今、お米の問題で頭が取られちゃってますけど、減税問題をもう一度、政策の議論の中心に持って行かないと、秋以降に日本経済が疲弊しはじめる可能性が高いと思います」
(寺島アナ)「ということは積極財政が大事ということですよね。この辺りは我々も忘れちゃいけない部分です」
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