昭和30年代、世界と戦う商社マンたちのラジオドラマ!【アーカイブの森 探訪記#52】

昭和30年代、世界と戦う商社マンたちのラジオドラマ!【アーカイブの森 探訪記#52】

Share

普段は文化放送の若手スタッフが過去の資料から発見した番組を紹介する
この「アーカイブの森 探訪記」だが、
今回は文化放送の大ベテランの視点から発見した番組をご紹介したい。

発見してくれたのは、
文化放送で18年以上勤続しているレジェンド隊員・築島さん(通称・つっき~)だ。
普段は法務担当として文化放送で働いている。
そのつっき~が発見してくれたのは、昭和33年(1958年)7月12日に
『現代劇場』という番組内で放送された、
城山三郎さん原作のラジオドラマ『輸出』の台本である。

城山三郎さんは直木賞を受賞した「総会屋錦城」や「小説 日本銀行」のほか数々の話題作で「経済小説」というジャンルを切り開いた「経済小説の開拓者」とも呼ばれる作家だ。

昭和2年(1927年)に生まれ、17歳で海軍の少年兵に志願。
軍隊での体験が小説家としての原点であり、
戦後企業という組織に個人がつぶされていくさまは、
戦時中と何ひとつ変わらないのではないかという思いを小説に込めているという。

ここからはつっき~によるレポートで番組の概要を説明したい。

 

「輸出」は昭和32年(1957年)の第四回文学界新人賞の受賞作である。
出演者は、仲谷昇、岸田今日子、芦田伸介、三谷昇など往年の名優が名を連ねる。
メンバーだけを見ても昭和30年代前半のラジオの人気を伺うことができる。


お話は昭和30年前後のロサンゼルス及びベネズエラのカラカスを舞台に展開される日本製のミシンを輸出する商社マンの話。

昭和30年と言えば、日本全土が焦土と化し、全てを失った太平洋戦争が終わってから、
たった10年しか経っていない。しかし、日本人は既に世界を舞台に活躍を始めていた。

ラジオドラマの中では日本語、英語、スペイン語が飛び交い、
プロペラ機で太平洋を渡る、国際電話は交換手につないでもらう、1ドル2円、
インチキをやるのが一流商社、それを真似するのが二流、
インチキもやれないのが三流と言われる時代。
協定破りで売上を倍増させ、その代わりに監禁されて音信不通になるなど、
戦後日本が短期間で復興していく様子が表されている名作だ。

つっき~のレポートを見て興味が湧き、当時の音源を探してみたところ、
ありがたい事にアーカイブに残されていたのでその音源を聞いてみた。

戦後、日本の企業が様々な手を使って世界と渡り合おうとする様子や、
会社の兵隊として扱われる商社マンの姿は、確かに軍隊に通じるところがあった。

また、名優たちによる、文章だけでは感じ取れない登場人物の感情の機微や
当時の雰囲気を感じさせる音楽や外国語のやりとりから、
小説とはまた違った、ラジオドラマならではの魅力を感じることができた。
なによりも「輸出」というタイトルにつけられた意味が個人的にとても興味深かった。

「経済小説」というジャンルにほとんど触れてこなかった自分としては、
つっき~の視点は無かったし、とても新鮮な発見だった。
機会があれば、皆さんもぜひ城山三郎さんの『輸出』に触れてみてほしい。

執筆:アーカイブ探訪隊員 原田
:レジェンド探訪隊員 築島

『文化放送アーカイブス』
■毎週水曜日 12時更新
■メールアドレス:archives@joqr.net
■推奨ハッシュタグ:#文化放送アーカイブス

Share

関連記事

この記事の番組情報


文化放送アーカイブス

文化放送アーカイブス

「文化放送アーカイブス」では、文化放送に眠る貴重な音源・台本・資料などを再発掘し、リスナーの皆さんにご紹介します。過去の番組に思いを馳せて、お楽しみください!…

NOW ON AIR
ページTOPへ