
前双葉町長による「井戸川裁判」はなぜ起きたか
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日15時30分~17時、火~金曜日15時30分~17時35分)、8月13日の放送に調査報道記者の日野行介が出演。井戸川克隆・前福島県双葉町長が国と東京電力を相手に起こした損害賠償訴訟、「井戸川裁判」について解説した。
長野智子「まず『井戸川裁判』、ご存じない方もいると思いますので教えてください」
日野行介「井戸川(克隆・前福島県双葉町長)さん、2013年に町議会から不信任案を受けるかたちで町長を辞職しました。2年後の2015年、1人で国と東電の事故の責任を追及する民事訴訟を東京地裁に起こしています。先月、7月30日に10年裁判の判決が出ました」
長野「はい」
日野「ニュースで『東京電力に1億円の支払いを命じた』『国の賠償責任を認めなかった』となっていて勝ち負けがわかりにくい。はっきりいえば門前払いに近い、ボロ負け判決。箸にも棒にもかからなかった。ほかの裁判と何が違うかというと、事故当時、双葉町長であったということ。言ってみれば原発行政を末端で担っていた人が、国や東電の責任を訴えた」
長野「行政を担っていた井戸川さん、というのが大きいんですね」
日野「首長さんは原発行政において大事な存在です。この番組でも何度か言っていますけど選挙で原発が争点になるの、国政選挙ではなく地方自治体の選挙ばかり。なぜかといえば安全協定があるから。原発がある自治体と電力会社は必ず安全協定というのを結ぶんです。法律ではないんですけど増設、トラブルや事故があったあとの再稼働、重要な工事、そういったところで地元自治体の首長の事前了解を得なければいけない、と書いてある」
長野「はい」
日野「事前了解するのかどうかというところで地方自治体の選挙で原発は盛り上がっている。地方自治体の首長にある意味、責任が押し付けられている面がある。井戸川さんがなぜ訴えたかといえば、事故前の2010年に福島第一原発の3号機、事故を起こした原発の1つですけど、プルサーマル運転というのをしていた。使用済み燃料からプルトニウムを取り出してもう1回、原発に装荷するというものです」
長野「はい」
日野「これをするときに津波対策が必要である、ということを地元側にどうしよう、と。具体的には井戸川さんに伝えるか伝えないか、という問題だったと思いますけど。福島県と国と東京電力は、じゃあ伝えないでおこう、と」
長野「ん~? やはりプルサーマルとなると多少リスクも増えると?」
日野「そういわれますけど。問題は、このとき津波対策が必要であると伝えていたらどうだったのか。井戸川さんは、自分がこれを知っていたら運転を止めろと言っていたはずだ、と。これまでの行動が裏付けているだろう、ということなんです。安全協定っていったいなんだ、大切なことを伝えると言っておいて伝えない。津波対策を隠した」
長野「騙し打ちみたいなもの」
日野「事故のあともそうなんですよ。原子力災害対策特別措置法という法律があって、JCO臨界事故というのが東海村で起きて、このあとつくられる法律ですけど。原発事故が起きたら合同対策協議会を行なって、地元自治会から意見を聞く、ということが規定されているんです。ところが福島の事故のあと、会議が行なわれなかった。国側は『やったけど双葉町と連絡がとれなかった』と言っている」
長野「え~、どういうこと?」
日野「周辺6市町村のうち1つだけ参加できた、などと書面にあるんですね。いずれにしても井戸川さんからすれば、呼ばれなかった。呼ばれないのに双葉町の人が避難している間にベントをして放射能を浴びせかけただろう、勝手に決めるな、という話です」
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