伝統工芸×事業承継 伝統工芸の価値をもっと高めるには

伝統工芸×事業承継 伝統工芸の価値をもっと高めるには

Share

様々な社会課題や未来予想に対してイノベーションをキーワードに経営学者・入山章栄さんが色々なジャンルのトップランナーたちとディスカッションする番組・文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」。

2025年9月29日,10月6日の浜松町Innovation Culture Cafeは、『伝統工芸の価値をもっと高めるには』をテーマに常連さんに、一般社団法人ベンチャー型事業承継代表理事・山野千枝さん、お客様にユキヤ株式会社代表取締役・大野深雪さんをお迎えしました。

入山:ここからは、「伝統工芸の価値をもっと高めるには?」というテーマでお送りしますが、ここでは伝統工芸そのものの現状についてお話をします。まず、山野さんに伺います。いろんな跡継ぎや、事業承継者とお付き合いがあると思うんですが、この伝統工芸分野の後継ぎ事業承継者の現状について教えてください。

山野:まず人手不足で悩んでいるというのはもちろんです。そして伝統工芸も含む伝統産業、例えば和紙と言うと滅びゆく素材と思われるかもしれませんが、実は紙すきの技術は1300年続いていて、それが今電気自動車のバッテリーが燃えないように、緩衝材として、燃えないようにするためのプラスチック素材の代替材料になったりとか。

入山:和紙が!?

山野:紙すきの技術が残っていたからこそ、新しい素材ができて。電気自動車の火事ってのは今すごく多くて、それが1500 °cでも燃えない材料を紙付きの技術でやってる後継ぎがいます。そういう伝統産業で斜陽だよねと言われてるけど、新しい時代感とかセンスとかを持ち込んで、全く違う価値に生まれ変わらせてる事例はたくさんあります。

入山:他にはありますか?

山野:あとは西陣織で言うと、帯を作っていた会社が銀糸の機能を持たせる特徴を生かしてウェラブルデバイスに展開するミツフジさん。

入山:フォーブスのイケてる中小企業を表彰する、スモールジャイアンツアワードにも選ばれた初代チャンピオンですよね。

山野:そうです。あそこの話が面白いなと思ったのは、お父さんが2代目で導電性繊維の糸だけあって、後は借金しかなくて。糸だけが転がっていたという話なんですけど、そこからウェアラブルデバイスを展開されていく中で、最も貢献したものというのは、職人さんの織の技術だったんです。西陣織、帯の技術の会社の後継ぎってなるとちょっと未来がないような気がするかもしれません。でもやっぱりそこで新しいことを始めようと思えば、家業の経営資源を利用するという人たちは新しい価値を作って強いですよね。

入山:大野さんどうですか、ここまでのお話を聞いて。

大野:東京友禅はですね。産地の規模が小さいので、データも出ないような状況なんですけど、特に着物産業自体が落ち込んでいて、昭和40年代がピークで、いま着たとしても、結婚式とか成人式とかですね。それで、着物は高いものと安いもの(レンタル)二極化しています。古着(リサイクル)は売れているんですけど。

入山:京都とかの観光地に行くと海外の方が切られていますけど、あれはレンタルですか?

大野:あれはレンタルですね。あれは海外縫製で安く作っているものをレンタルの業者さんは使っていますし、伝統工芸の分野で言うと、多分東京友禅ですと事業者の平均年齢70歳ぐらい。後継者部族もそうですし、雇うこともできない状態です。

入山:それはビジネスとして成り立ってないのか?それとも成り立ちそうなんだけど、単純に後継人がいないか、どちらですか?

大野:着物の売上自体がどんどん下がっているというか。

大野:東京友禅も厳しい。だから息子さんに継がせるのはどうなのかと。個人事業でやってる方は自分がやめる時は廃業、そういう方が多いです。

入山:去年金沢に行ったんですけども、その時に聞いたのは三大友禅の1つ加賀友禅大変らしいですね。このままだと、なくなっちゃいそうで、後継ぎないんですって。

大野:加賀友禅は問屋さんが強いので制約が大きいのだと思います。使う生地がきまっていたりとか。その点、東京友禅のメリットは産地が小さいが故に機動力はあるんです。

入山:生地が決まっていると何で作りづらいんですか?

続きはこちらから
浜カフェSpotify
過去の放送は、YouTubepodcastでも配信中!

本日のお客様
山野千枝さん
大学卒業後、大阪市経済戦略局の中小企業支援拠点「大阪産業創造館」などを経て、中小企業の承継予定者を対象に新規事業開発を支援する「一般社団法人ベンチャー型事業承継」を2018年に設立。関西圏の大学で親が商売を営む学生を対象に「アトツギ白熱教室」を主宰。また、昨年1月には新潮社から『劇的再建―「非合理」な決断が会社を救う』を発売。

大野深雪さん
専門学校を卒業後、「染匠小町苑」に入社。友禅作家・坂井教人氏に師事し、「東京手描友禅」の技法を学ぶ。その後、全国染織作品展への入選や染芸展での受賞を経て、2011年に個人事業「染工房ユキヤ」を開設。2013年には職人仲間である町田氏と、若手作家集団「そめもよう」を立ち上げ、展示会や販売活動を展開。2017年には法人化し、ユキヤ株式会社を設立。伝統工芸の技を礎としながら、手描友禅をデジタルで複製する「デジタル友禅」〈some-pri〉シリーズの発表、ファッションブランドとのコラボレーションなど、従来の枠を超えた新たな取り組みにも挑戦し続ける。

文化放送が運営するポッドキャストサイト「PodcastQR」では、浜松町Innovation Culture Cafe以外にも社会・ビジネスに関する番組が多数ありますので、ぜひお聞きください。
エピソード一覧はこちら

Share

関連記事

この記事の番組情報


浜松町Innovation Culture Cafe

浜松町Innovation Culture Cafe

月 19:00~19:30

浜松町の路地裏にひっそりと佇むカフェ「浜松町Innovation Culture Cafe」 経営学に詳しいマスターが営むこのお店には、様々なジャンルのクリエ…

NOW ON AIR
ページTOPへ