介護現場はテクノロジーで変えられるのか#1『浜松町Innovation Culture Cafe』

介護現場はテクノロジーで変えられるのか#1『浜松町Innovation Culture Cafe』

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日本は今「超高齢社会」と言われていますが、この言葉の定義をご存知でしょうか。社会の高齢化を表す言葉には「高齢化社会」「高齢社会」「超高齢社会」の3段階があります。「高齢化社会」とは、人口に占める高齢者の割合が7%を超えている状態で、日本は1970年にこの状態となります。さらに高齢者の割合は増え続け、1994年に高齢化率14%を超える「高齢社会」を迎えます。「高齢化社会」から「高齢社会」となるまでドイツは42年、フランスは114年の年数を経たのに対し、日本はわずか24年という短い期間で迎えることとなりました。その後も少子高齢化に歯止めはかからず、2007年についに高齢化率が21%を超え、「超高齢社会」を迎えました。2020年時点で、日本の高齢化率は28.7%となっており、過去最高であるとともに、世界でも最も高い数値となっています。そして2065年には38.4%に達し、国民の約2.6人に1人が65歳以上となる社会が到来すると予測されているのです。

 

ここまで高齢化が進んだ要因として、1つは平均寿命の高齢化があります。医学の進歩と生活環境の改善により、日本人の平均寿命は大きく伸びました。1950年には男性が58歳、女性が61.5歳だった平均寿命は、2020年には男性が81.41歳、女性が87.45歳となり、大きく伸びている事がわかります。人生100年時代という言葉を耳にするようになりましたが、このペースでいけば2050年ごろには平均寿命100歳も夢ではないかもしれません。もう1つの要因として、少子化による出生率の低下があります。1949年の第一次ベビーブーム時には年間260万人を超えた出生率が、1973年の第二次ベビーブームには約210万人となりました。そこから毎年出生率は低下の一途をたどり、1989年には150万人を切りました。そして2020年には過去最低の86万人となり、ピーク時を大きく下回っています。

 

この超少子高齢化の今、我々は多くの問題に直面しています。中でも介護に関わる問題は年々増えており、「介護難民」「老老介護」「認認介護」「高齢者虐待」「孤独死」「介護離職」など日々多くのネガティブなニュースを耳にします。さらに1947~49年生まれの団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に達する「2025年問題」や、団塊ジュニア世代が65歳に到達し始め労働人口が大幅な減少に向かう「2040年問題」も控えており、状況はますます悪化する事が予測されます。多くの要因が複雑に絡み合い、多数の問題を生み出し、もはや太刀打ちできない大きな壁が立ちはだかっているように見えます。それでもテクノロジーの発展という希望を持って問題解決に挑戦していく人たちに、明るい未来を期待したいと思います。

 

様々な社会課題や未来予想に対してイノベーションをキーワードに経営学者・入山章栄さんが様々なジャンルのトップランナーたちとディスカッションする番組・文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」4月26日の放送では、Panasonic Game Changer Catapult代表の深田昌則さんと、株式会社aba代表取締役CEOの宇井吉美さんにご参加いただき「シニアケアの取組み」から「シニアケアとテクノロジー」について熱いトークが繰り広げられました。

シニアケアの取組み

深田 Game Changer Catapultから生まれた製品で、今力を入れているのが、社会課題解決のための製品「デリソフター」です。見た目も味もそのままというコンセプトで、摂食・嚥下障害をお持ちの方々がご家族と同じものを柔らかくして食べられるというケア家電です。

 

宇井 株式会社abaでは、テクノロジーで誰もが介護できる社会を作るというビジョンのもと研究を進めています。弊社が開発した排泄ケアシステム「ヘルプパッド」は、オムツを開けずに中を見たいという介護現場の声をもとに、オムツを外さなくても臭いを解析して排泄を知らせる製品です。

シニアケアとテクノロジー

宇井 人口ピラミッドから圧倒的に高齢者側が多いので、介護者の能力をテクノロジーで拡張する必要があります。我々技術者は介護対象者を監視するのではなく、介護者の目や耳を増やすことを目指しています。手がふさがっている介護現場は音が大事になるので、ここは工夫の可能性があります。介護が抱える多くの課題を支援できる土壌がテクノロジー側にも出てきたと考えています。介護者を見守るシステムの開発こそ両者を守ることに繋がると考えます。

 

深田 今一番の課題は、施設だけではまかなえない家庭での役割が増えており、家族の負担を減らしていくテクノロジーや製品が必要とされていることです。ここはまさに家電メーカーである我々が担う部分です。介護問題は家族関係の悪化に繋がることも多いので、家族の負担を減らし、良好な家族関係につながるケア家電で貢献していきたいですね。

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浜松町Innovation Culture Cafe

月 19:00~19:30

浜松町の路地裏にひっそりと佇むカフェ「浜松町Innovation Culture Cafe」 経営学に詳しいマスターが営むこのお店には、様々なジャンルのクリエ…

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