朝のほっと一息…母と子の童話館 お話がいっぱい【アーカイブの森 探訪記#68】
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スマートフォンで手軽に聴けるオーディオブックが人気を集める昨今であるが、実は40年以上も前のラジオにも、耳で楽しむ“朗読番組”があった。それが、1982年4月から1985年9月まで文化放送で放送された「母と子の童話館」だ。
放送時間は朝9時47分から9時57分までのわずか10分間。あわただしく出勤していく父を見送り、「母と子の童話館」というタイトルが示すように、洗濯や掃除など日々の家事であわただしい時間帯に、母親と子どもが一緒に耳を傾けられる“朝のひととき”を届けることを意図した番組である。わずか10分間という短い番組ながら、毎朝、童話の読み聞かせに子どもたちは釘づけになり、その時間は母親の気持ちもほっと休まる時間だったに違いない。
語りを務めたのは、大山のぶ代、なべおさみ、ジェリー藤尾、熊倉一雄といった豪華な面々。イソップ童話、日本民話、世界のとんち話、そして創作童話まで、幅広い作品がラインナップされた。「神様をのせたろば」「親指姫」「はらぺこの床屋さん」「白い鳥」など、時にユーモラスで、時にしみじみとした物語を、語り手たちが優しい声で届けていた。



テレビが家庭の中心になりつつある時代に、ラジオはまだまだ「声で想像する物語の世界」を届ける場だったのだ。
おそらく、いまこの番組を覚えている人はほとんどいないだろう。それでも、あわただしい朝だからこそ静かに物語を聴く10分間――そんな番組が、またあってもいいのかもしれない。
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