北方謙三「短い作品を何本か書くことで文体が引き締まる」
大竹まことがパーソナリティを務める「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送・月曜日~金曜日11時30分~15時)、10月29日の放送に作家の北方謙三が出演。9月に最新刊『森羅記 一 狼煙の塵』を発売した北方が、自身の執筆スタイルについて語った。
大竹まこと「前は『チンギス紀』の1、2巻が発売されたとき(2018年)にお越しいただきました。あのシリーズは最終的に2023年、17巻で完結しました。長いですよね」
北方謙三「でもさらに前に書いている『三国志』が13巻、『水滸伝』が19巻、『楊令伝』が15巻、『岳飛伝』が17巻ですから」
大竹「その間にもお書きになっている」
北方「書いています。長いものと長いものの間に短いものを書くんですよ。私は1冊500枚(原稿用紙)なんですけどね。15枚の作品もあるんです」
大竹「ほう。書くと気持ちいいんですか?」
北方「気持ちはよくない(笑)。要するに、長いものはいくらでも言葉を使えるんですよ。選ばなくても、3つあったら3つ書いてしまおう、ということができる。ところが15枚と限定すると1つの言葉を見つける作業になってくる。何本か書き終わると、無駄のないように文体が引き締まっている。文体が崩れていると言われたことはないけど、19冊書くとどこか甘くなっているんじゃないか、と自分で感じるんです」
大竹「なるほど。そういったことを言いつつ、遊んでもいらっしゃる」
北方「いま遊んでいるのは大したことない(笑)。昔は忙しかった。人間は忙しいときほど遊んでいるんですよ」
大竹「銀座ですか?」
北方「銀座が主(おも)ですけどね(笑)」
大竹「銀座には三羽ガラスがいらっしゃって。『新宿鮫』(作者の大沢在昌)と伊集院(故・伊集院静)さんと北方さん。いま新宿鮫も銀座にもあまり行っていない?」
北方「新宿鮫は六本木で飲んでいることが多いんじゃないですか」
水谷加奈「“新宿鮫”って(笑)」
大竹「北方さんとは一度だけ宴席をご一緒したことがあります。伊集院さんもご存命でした。驚いたのは、この方、誰にでも胸を開く。仲居さんから横にいたお嬢ちゃんから、私にまで。誰でも全部横並びというか。上にも下にも置かない。この人、すごいなと思った」
水谷「そういう方だろうなと、スタジオに入った瞬間に感じました」
北方「誰にでも開きますけど、じつは誰にも開いていないんです(笑)」
大竹「そうかあ。新宿鮫も、誰にでも開いている顔していますよね」
北方「あいつとは、開きっぱなしです。腹の底を知り尽くしていますから。何かいいこと言っていても、こいつは俺のことを何とか言いたいんだろう、というのがわかります」
「大竹まこと ゴールデンラジオ」は午前11時30分~午後3時、文化放送(FM91.6MHz、AM1134kHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
※タイムフリーは1週間限定コンテンツです。
※他エリアの放送を聴くにはプレミアム会員になる必要があります。
関連記事
この記事の番組情報



