プチ鹿島が徹底解説!「『一次資料にあたれ!』の背景にあるもの」

プチ鹿島が徹底解説!「『一次資料にあたれ!』の背景にあるもの」

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フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄ラジオマガジン」(文化放送)。10月30日(木)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、木曜前半レギュラーの時事芸人・プチ鹿島が「一次資料にあたれ!の背景にあるものとは?」というテーマでコラムを展開した。

プチ鹿島「今日は高市政権が発足して、トランプ氏との会談もあった中でつい埋もれてしまいそうなニュースに注目しました。1週間ぐらい前、新しく入閣した松本洋平文部科学大臣が『南京事件はデマだよ』っていうメッセージのある映画に賛同していたっていうのを毎日新聞が報道していたんですね。これ、初入閣した松本文科大臣が日中戦争中に旧日本軍が南京で捕虜や住民らを殺害し、強姦などを重ねた南京事件の存在を疑問視する映画の賛同者に名を連ねていたことが分かりました、と。で、これは毎日新聞がまとめているんですが、2007年に制作された『南京の真実』という映画、公式ホームページでは監督が『南京事件をデマでっち上げなどと主張している』ということなんですね。ちなみに外務省のホームページには南京事件について『日本軍が南京に入った後、非戦闘員の殺害や略奪行為があったことは否定できない』という見解。これを政府が載せているんですよね。松本大臣は『この南京事件を今どう認識しているんですか?』と記者会見で問われて、『政府の見解通りです』と答えたんですよ。ですので、そもそもなんでこういう発信をした人、賛同した人を入閣させたのか? ということで、東京新聞なんかを見ると、参政党のはじかの(初鹿野裕樹)参議院議員でしたっけ」

武田砂鉄「はいはいはい」

鹿島「今年の6月、『やっぱり捏造された南京事件』と、はじかの議員がXに投稿して批判を浴びてましたよね。それに対して南京事件の著者でもあります、鶴留文化大学の笠原十九司(とくし)名誉教授は『否定派の政治家らが台頭する現状を国際的に恥ずかしい』とコメントしているんですよね。ここもやっぱり注目で、第二次安倍政権では教科書の検定基準の見直しによって歴史問題について政府の統一見解を踏まえた記述を求める規定が盛り込まれたと。例えば犠牲者数に関して諸説あるなど詳しい記述は減って、教科書には名称が出ているだけ。つまりこれ『虐殺があったと知りながら、国民にあったと思わせないようにして、無知な状態にしようという動きが進んでいるんじゃないか?』と教授はおっしゃっているんですよね。だからこれでかつて賛同していた大臣を入れるということは、やっぱり安倍政権はここでもモデルにしているのかな?っていう」

武田「その教科書の記載に、この南京事件のことを薄めよう薄めようとしている動きはありましたけれども、それをまたデマだっていうのに賛同する人が、ましてや文科大臣になったっていうのは、ちょっと一歩先二歩先に入っちゃった感じがありますよね」

鹿島「こういったもので南京事件が例えとしてよく出てくるんですが、その上で改めて最近思い出したことがありまして。8月なんですが、SNS上で元サッカー日本代表の本田圭佑さんが以下の投稿をしたんですよ。『石原慎太郎さんが好きなこともあり、歴史のことは知っていたつもりだったものの、希望的コメントをしました。ただ一次資料などを詳しく調べたら、事実はほぼ歴史通りであると思いました。この点、僕の間違いでした』と。本田さんは何を間違えておっしゃってたかというと、南京事件について、かつて石原慎太郎さんが『日本軍による40万人もの虐殺はなかった』と語る映像を、本田さんが『僕もそう信じてる』と引用したことを指してるわけですね。この件については僕色々その時点で読み比べたんですけど、RKB毎日放送が特集してて、『人数のことで今も論争あるけど、中国側のオーバーな30万人犠牲者説を否定するには、まず日本が事実を認めないと始まらないでしょ?』と。『まず南京事件はあったっていう事実を認めないと、その後の犠牲者の人数の話にならないよね、歴史をまず認めましょうよ』と。僕はこれ、一番納得したんですが、ただその後僕が『ちょっとモヤった』のが、本田さんが『一次資料にあたったら、やっぱり皆さんの言う通り南京事件は認めなくちゃいけない』みたいな。これ称賛はされたんですけども、『一次資料にあたった』っていう、ここなんですよね。いつ頃からかSNSでは特に論争になると『エビデンスはあるのか?』とか『ソースは?』とか、その流れで『一次資料にあたったのか?』みたいな論説が結構出てくると思うんですよ。まるで論争のテクニックのようにね。そうした風潮の中で本田さんは『一次資料にあたりました』ということで、なんか鉄壁な防御をしているように見えたんですが、ただ一方で一次資料って誰もがすぐにアクセスできるわけじゃないじゃないですか」

武田「そうですね、時間もかかりますよね。本当にアクセスしに行こうと思ったらね」

鹿島「ましてや分析や解釈には時間がかかるし。だからこそ僕らは何を利用するかって言ったら例えばこの問題についての報道とか、あとメディア。さっきも僕、専門家のコメントを引用しましたけど、専門家のコメントも含めて取材もしてくれるわけじゃないですか。だから僕は新聞でもそうだし、ニュースを読み比べる理由でもあるんですよね。自分が一次資料をあたれば本当はいいんだけど、でもそんな時間も手間もないじゃないから、それをちゃんとAIじゃなくて記者が要約してくれる報道っていうのは大事だと思うんです。ただ一方で思うのが、じゃあ今ネットではオールドメディアとかマスゴミ批判がすごくあるから、そういう中で『一次資料を詳しく調べたら?』っていう言説って、すごく賞賛も集まりやすいんだろうなと思うんですよね」

武田「この本田さんのコメントには『やっぱ本田スゲーッ!』『自分の間違いを認められてそれを発信出来るのは凄い!』みたいなコメントも、バーッと来てましたけどねえ」

鹿島「本田さんも偉いと思うんですよ。ただやっぱりこの空気には『マスコミなんか信用ならない』っていうマスコミ不信もあるんじゃないかなっていうのがあって。で やっぱりメディアが取材しても 例えば南京事件はこうだったとか、色々あるじゃないですか。この間宮城県知事選でも、あれ地元メディアがちゃんとよくやってましたが、でもまあ『そんなもんもそもそも見ないよ』っていう人もいるし、気に入らなければもうキリトリ、偏向と言われる。高市さんの鹿報道について日テレが取材したら『そんな証言する奴は仕込みだヤラセだ』みたいに言う。そういう方向になってくるから『じゃあ一次資料に自分であたった方が偉い』みたいなことになるんですけど、ちょっと危ないなと思うんですよね。やっぱり膨大な時間も必要だし、あたったとは言えクロスチェックも必要だし、素人の解釈では間違える可能性の方が大きいじゃないですか。だからなんていうかメディアとの付き合い方っていうのが不審にまみれてるから『一次資料にあたるエビデンスは自分で調べろ』っていう話になるのかなと思ってます」

プチ鹿島さんによる「一次資料」についての考察、提言はこの後もまだまだ続きました。
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