『そんなことよりも・・・』から見えてきた政局
文化放送をキーステーションに全国33局で放送中「ニュースパレード」(毎週月曜日~金曜日午後5時00分~5時15分)
その日に起こった最新の話題を中心に、幅広い分野にわたってニュースを紹介しています。昭和34年の放送開始以来、全国のラジオ局の強力なバックアップで、特派記者のレポート、取材現場からの中継など、今日最も重要なニュースを的確に把握し最新情報を伝え続けています。
文化放送報道記者として国会、官邸を担当し、日夜取材活動で活躍する山本香記者が放送でお伝え出来なかった話題を取材後記としてお届けします。

26日の党首討論で高市総理が「そんなことよりも、まず定数削減をやりましょうよ」と発言したことに反発が広がっている。
立憲民主党の野田代表が企業団体献金について質問した際に飛び出した言葉で、野党各党からは「企業団体献金は『そんなこと』なのか」、「話題のすり替え」など批判の声が相次いだ。
なぜ、高市総理が「そんなことよりも」と定数削減を強調したのか。その背景には日本維新の会との連立合意がある。
合意書には、今国会中に衆議院の定数1割を目標に削減する法案の成立を目指すと明記されていて、自民党との協議が整わなければ連立離脱もほのめかしていることが高市総理の前のめり発言につながったのではないだろうか。
自民党と維新の会は、定数1割を目標に削減することを盛り込んだ法案を今国会で成立させ、削減方法は法律の施行後1年以内に結論を出すという内容で合意している。
これに加え、維新の会は1割削減を実現するための担保が必要として、法案に「1年以内に結論が出なければ比例を50削減する」という条文を盛り込むよう強く求めているが、この内容に野党のみならず自民党内からも「拙速に決める問題ではない」と慎重論が出ている。
自民党は野党各党への法案の説明を始めたが、色よい返事は皆無。しかも法案はまだ国会に提出されていない。
今国会は12月17日に会期末を迎える。平日だけで数えるとわずか2週間。
しかも、法案を取り扱う見込みの政治改革特別委員会では、すでに国民民主党と公明党が共同で提出した企業団体献金の法案審議もまだ、始まっていない。企業団体献金の規制法案について自民党は12月5日にも提出する予定で、国民・公明案と一緒に審議するよう求めている。一緒に扱うことになれば審議入りは12月8日の週からということになりそうだ。通常、委員会では先に提出された法案から審議を始めるため、まだ提出されていない定数削減法案の審議は後回しとなり審議時間が会期中に確保できない恐れが出てくる。そのため、国会延長を求める声が維新の会から上がっている。高市総理の「そんなことよりも・・・」発言は、こうした厳しい国会日程も念頭にあるのかもしれない。

そんな中、衆議院で維新から離党した3人(首班指名選挙で高市総理に投票)が28日、自民党に会派入りし、衆議院では与党過半数となった。しかし政治改革特別委員会は与党会派で過半数は確保できず、定数削減法案を提出しても否決される可能性が極めて高い。しかも立憲民主党が委員長ポストを握っている。維新の会の幹部は「玉砕覚悟で法案採決すべき」「否決されればこれを大義に解散ということもあり得る」と鼻息が荒い。
解散について自民党内や野党の一部から賛同の声はあるものの、高市総理が現状、解散に打って出る可能性は低いだろう。念願の総理ポストを得たものの、連立を組む維新の会はもとより野党の顔色を見ながらの政権運営は手足を縛られたようなもの。「解散」そんなことよりも、今は高市カラーの政策を一つでも実現したいという思いの方が強いからだ。
ただ、解散して自民単独過半数を獲得できれば自由度が格段に増してくる。その誘惑に乗る可能性も捨てきれない。

