働いて働いて…はホントに流行語? ドイツ「粗悪語大賞」ワードに武田砂鉄がうなる

働いて働いて…はホントに流行語? ドイツ「粗悪語大賞」ワードに武田砂鉄がうなる

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フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝のラジオ番組、『武田砂鉄ラジオマガジン』。12月8日は、月曜レギュラーでドイツ出身の翻訳家・エッセイストのマライ・メントライン氏と、流行した言葉についてトークを繰り広げた。

マライ「今日は、流行語大賞を凌ぐドイツの粗悪語大賞の効用というテーマです。まずは日本の流行語について、ちょっと振り返ってみようと思います。年末の風物詩といえば、流行語大賞ですよね。今年の流行語大賞に輝いたのは「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」でしたね。まあ、いろんな意味でちょっと微妙だったんじゃないかって個人的に思ったんですね。

――中略――

さて、ドイツには粗悪語大賞もあるんですね。発表はまだしてなくて、1年の最後、12月31日まで一般人のみんなが送って、次の年の初めに決まるんですね。粗悪語とは、悪いワードっていう意味で、結果的に社会に拡散してしまった、あるいは意図的に拡散させられたネガティブな流行語が対象です。政治的な意図を持ったものとか、新しく作られた嫌な表現とか、特に人権侵害とか差別系のワードが多いわけですね。過去にどんなものがあったかっていうと、2014年は「Lügenpresse(嘘つきメディア)」イコール、マスコミですね」

武田「うーん」

マライ「2016年は「Volksverräter(売国奴)」、2017年「Alternative Fakten(オルタナティブファクト)」、22年「Klimaterroristen(気候変動テロリスト)」、マッシュポテトとかスープを絵画に投げつける人たちですね。去年は「biodeutsch(純血ドイツ人)」でした。国籍さえ持っていればみんなドイツ人なんだけど、そうじゃなくて純血な人だけがドイツ人という意味ですね。そういう話をこの間、Xに投稿したんですけど、そしたら日本の流行語大賞の今年のやつこそ粗悪語大賞にふさわしいんじゃないかっていう意見をいただきました」

武田「たしかに」

マライ「なるほどって思ったんですね。「働いて働いて…」っていうのが微妙な感じの正体はこれかって思いました。もしかしたら日本にも粗悪語大賞があった方がバランス取れるんじゃないかと思ったんですけど、どう思います?」

武田「粗悪語大賞があったら、そのノミネートはたくさんありそうですけどね(笑) まあでも、この「働いて働いて…」が流行語大賞になってから、本人もそうだし周りもそうだし「いや、あれはああいう意味なんですよ、こういう意味なんですよ」ってドタバタしているところからすると、やはり粗悪性が含まれていたんじゃないですかね」

マライ「そこらへんは曖昧になってる感じですね。ドイツ人としては、はっきりさせたいっていう気持ちがあったりするので、表があるんだったら裏も欲しいよねみたいな感じがしなくもないんですけど難しいですよね。流行語と粗悪語の区別は意外と難しいかもしれないという話で、例えば先週、リスナー投稿のお題になった「こっからっす」。すごく考えさせるインパクトのあるワードだと思うんですけど、世間の声を見てみるとポジティブ解釈とネガティブ解釈の両方あるんですね。ポジティブに解釈すれば、敗北感に簡単に負けない、気合いを示すempower語。ネガティブに解釈すれば、確実に迫る敗北・失敗をあくまで認めない姿勢。自虐語なんじゃないの?っていうね。「こっからっす」「無理でしょう」みたいな、なんかそんな感じだと思うんですよね」

武田「働いて働いて…も本当にそうですよね。「これは自分が働きたいだけ」って言う人もいれば、っていうか本人はそう言ってるわけですけど、でもそれを全体に強いたら過労死の問題とか、いろいろ問われるべきところがありますよっていうのが、ぶつかり合うわけです」

マライ「だから「こっからっす」は、先週のリスナーの投稿の感じをみてみると、みんないい感じに解釈してて、ある意味「こっからっす」の毒の部分を抜いてくれたんじゃないかと思って盛り上がった記憶があります。だから、そういうちょっと粗悪語チックなものを、逆に上げていくみたいなことも可能かなって思ったんです。」

武田「流行った言葉って、そこから粗悪の方に引っ張ることもできるし、ポジティブな方に跳ねさせることもできますね。だから流行ってる言葉って、監視・観察していかないと、あんな方向に流れちゃったっていうことになりかねないですからね。だからこそ、この働いて働いて…ってのは警戒する必要があるんだろうと思います」

マライ「すごく同感です」

放送ではこの他、日本とドイツの流行語大賞も徹底掘り下げ!トークの続きはradikoのタイムフリー機能でお聞きください。

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