女性作家が躍進中。選考直前の芥川賞、直木賞の行方を占う

女性作家が躍進中。選考直前の芥川賞、直木賞の行方を占う

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「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」(文化放送)、7月18日の特集テーマは「今年の芥川賞・直木賞」。7月20日に第167回の受賞作の選考を控えた2つの賞を取り上げた。今回は芥川賞の候補者が全員女性、直木賞も5人中4人が女性という点でも話題を集めている。

女性候補が増えた理由や今年の受賞作の行方について、読書家で各メディアに書評も寄稿している、番組プロデューサーの首藤淳哉が解説を務めた。

首藤Pは辛島デイヴィッドさん著『文芸ピープル』を用意。同書には日本の現代文学がなぜ海外で注目されているかが、海外の出版エージェント、編集者、日本文学の翻訳家たちへの取材をもとにまとめられている。

首藤淳哉「これを読むとなぜいま、日本の女性作家が海外で評価されているかわかるんです。少し前までは、海外で知られる日本の作家ってみなさん村上春樹さんを想像したと思います。辛島さんも以前は『“ネクスト村上”はいないのか?』と聞かれることが多かったのが、それがいま、違う名前になっているんです。『“ネクスト村田”はいないのか?』と」

山内マリコ「村田沙耶香さん!」

首藤「『コンビニ人間』で芥川賞をとりましたけど、2018年には『ニューヨーカー』など海外の雑誌でブックオブザイヤーに選ばれていますし、ほかの女性作家もすごくいま注目されているんです。なぜかというと、ひとつはフェミニズムの文脈なんですね。たとえばこの『文芸ピープル』に出てくるデータですけど、2019年のアメリカで出版された純文学の売上の上位100のうち7割を女性作家が占めたと。かつては白人男性作家というのが力を持っていたけれど、2010年代を通じて女性に変わってきたんですって」

かつて日本の女性を描いたものは、エキゾチシズムや東洋の神秘のようにとらえられていたが、現代では「私たちの物語」として、英語圏でも女性作家の作品が読まれているという。

首藤「(女性作家が注目されるようになった英語圏で)『日本に目を向けたら、すごい作家がたくさんいるじゃない』と、そんな感じになっている。“ネクスト村田”といいましたけど、たぶんまた変わっているんですよ。いまは川上未映子さん。『夏物語』という小説が読まれています」

山内「なんでしたら、村上春樹さんよりもノーベル文学賞に近いんじゃないか、と言われていますね」

続いてすべて女性作家の作品が候補だという、今回の芥川賞の話題へ。首藤Pによる、候補作の解説を抜粋する。

首藤「まず鈴木涼美さん『ギフテッド』。経歴も相まって非常に注目されている。私小説ではないんですが、鈴木さんの経歴が色濃く反映されていて。主人公は夜の街で働く女性なんですけど、重い病を抱えて余命いくばくもない母親の看病を始めるんですね。母親との間に確執があって。要は和解が描かれるんですが、合間には自殺した夜の街の女友達のエピソードなんかが挟まれて。全編にわたって死のにおいみたいなものが漂っている」

首藤Pは芥川賞からもう1作、年森瑛さんの『N/A』も紹介する。型にはめられそうになるマイノリティの女子高校生が描かれているという。

首藤「安易にカテゴライズしたり、過度にやさしくしたり(マイノリティと接するときに)我々もそういうこと、あるじゃないですか。そういうものを超えたところに触れようとしているのがあって。ものすごく現代の最先端のテーマを扱っている。しかも年森さんは原稿100枚ぐらい書いたのが初めてらしくて。彗星のごとく現れた才能です」

続いて直木賞について、首藤Pは河﨑秋子さん『絞め殺しの樹』、深緑野分さん『スタッフロール』の一騎打ちではないかと予想する。

首藤「河崎さんは北海道を舞台によく作品を書くんですけど、『絞め殺しの樹』は簡単にいうと昭和初期からのひとりの女性の一代記ですね。つらい育ち方をして、悲劇に遭うんですけど、後半でその息子が、女性の人生をもう一度たどり直すような構成で。“絞め殺しの樹”って、菩提樹の木なんですよ。ほかの植物に巻きついて中の木が死んじゃうという……。主人公のミサエは、巻きつかれる側なんですね。かわいそうだと思うんだけど、この作品の中で、お釈迦さまが菩提樹の前で悟りを開いたのはなぜか、みたいな話が出てくるんですね。だから人生について考えさせられるような。

『スタッフロール』は(ハリウッドの)映画界を舞台にした女性2人の物語で、粘土をこねていろんなクリーチャーをつくる特殊造形師と、CGを使って映画をつくる女性が世代を超えてつながるという話で。女性同士の連帯、ものをつくる人同士の連帯みたいなものを描いたムネアツな物語です」

放送ではさらに詳しく解説がされているので、ぜひradikoのタイムフリー機能で聴いてみてほしい。

「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」は毎週月曜~金曜の午後3時30分~5時45分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。

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