「秋の山寺、葉が落ちる」。政治とカネ疑惑が浮上している秋葉賢也復興大臣のほか、すでに辞職した山際大志郎前経済再生担当大臣、寺田稔前総務大臣、葉梨康弘前法務大臣の４人の状況について、立憲民主党の大西健介議員が25日の衆議院予算委員会で皮肉った。辞任ドミノは止まらないのか。

終盤国会、選手交代しても状況は一向に改善せず追い込まれていく岸田政権は土壇場を迎えている。

ワールドカップ観戦

 

　サッカー・ワールドカップの真っ最中、ドイツに逆転勝利した翌日の24日、秋葉大臣はツイッターに「よくやった！大金星の逆転勝利！興奮、心底感動しました。この勢いを次に！」などと書き込んでいた。テレビ観戦していたのだろう。テレビ画面を撮った写真もアップしていた。野党関係者は「自身の疑惑でおしりに火がついているのにのんきなものだ」とあきれ顔だった。翌25日からの衆議院予算委員会で、集中砲火を浴びるのはわかっていたはずだ。その秋葉大臣は、27日に予定されていた福島県への視察を取りやめたが、その理由について28日の衆議院予算委員会で「国会でいろいろな質問が集中したので丁寧に説明をさせていただく必要があると考え、日程の変更をお願いした」と述べ、自宅で答弁の準備をするためと説明したが、その日の夜の日本対コスタリカ戦は観戦していたのだろうか。ツイッターは24日以降、更新されていない。

　秋葉大臣は、サッカー観戦をめぐって過去に謝罪する事態に陥ったことがある。

　2015年7月に北方領土のビザなし交流に参加した際のことだ。国後島と択捉島を3泊4日で訪問し、最後の日程を終えて根室港に帰る夜のこと。サッカーの試合を見たいと言って、参加していた元島民らに衛星放送が映るテレビが設置されていた部屋を片付けさせた。訪問を終えて帰るだけで、自由時間とはいえ、あまりにも無神経なふるまいだ。それだけではない。訪問した国後島での歓迎セレモニーで居眠りしていたこともあって「いったい何しに来たんだ」と怒りの声が相次ぎ、秋葉大臣は元島民らに謝罪する事態に追い込まれたのだ。
立場と状況をよく考えて行動していれば避けられたかもしれない。

オウンゴール

 

　1カ月足らずの間に3人の閣僚が辞任。閣僚だけでなく、94枚もの白紙の領収書を選挙の運動費用収支報告書に添付してしていたことが明らかになった岸田総理。自民党内から「オウンゴールの連発だ」という声が上がっている。攻め手に欠く一方で、守りも手薄で、野党議員の失点に期待するしかないという状況だ。
　
　寺田稔前総務大臣や秋葉大臣の親族に対する政治資金の還流という疑惑だが、立憲民主党の石川香織衆議院議員にも浮上した。夫で元衆議院議員の石川智裕氏が所有する事務所を借りて、2018年から21年に計141万円を家賃として支払っていたことが政治資金収支報告書で明らかになった。本人も認めている。親族に対する政治資金の還流疑惑は、法的には問題なくても身内への支払いは道義的に問題があると指摘されている。野党議員にも同様の疑惑が浮上すると、追及する手も甘くなるというわけだ。実際に寺田氏の後任、松本剛明総務大臣が収容人数の倍以上、パーティー券を売っていた疑惑があるが、多めにパーティ券を裁くのは永田町の常識なのか、身に覚えのある野党議員から「よくあることだ」とかばう声もでていた。

 

日本対スペイン戦

 

　現在、永田町の最大の関心事は、秋葉大臣の去就だが、自民党内では「秋葉大臣が辞めても状況は変わらない」とあきらめムードも広がっている。また、秋葉大臣が予算委員会で野党から集中砲火を浴びることで、物価高対策や感染者が急増してきた新型コロナ対応、それに旧統一教会の被害者救済新法など、政府への追及がその分、減るだろうという指摘がある。つまり論点を分散させて痛みを和らげようということだ。秋葉大臣の更迭についても同様。辞表を出す時期について立憲民主党関係者は、12月2日に補正予算が成立したタイミングではないかと予想する。
補正予算の成立に加え、その日は午前4時から行われる日本対スペイン戦が終わったあと、日本代表が予選突破か敗退かが決まる。そうなると報道各社はその日、大きく取り上げることになり、秋葉大臣更迭ニュースの扱いは小さくなると予想されるからだ。日本代表がスペイン戦で勝利し、予選突破となったらなおさらだ。

　ちなみに、岸田総理が白紙領収書問題について、記者団に説明したのはドイツに勝った興奮冷めやらぬ24日の朝だった。

　「これ以上、疑惑がでると政権がもたない」でも、「ポスト岸田はみあたらない」。自民党議員からためいきとともに漏れてくる不安の声。岸田政権は防戦に追われる終盤国会となりそうだ。

 

 

 

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